リリース時点では、Windows Subsystem for Androidは、公式ブログの説明にあるとおり日本では利用できないが、Windows 11 Insider Preview(ベータチャネル)環境では、Amazon Appstore Previewを通じてAndroidアプリの実行が可能になる。
正直なところ予想が外れっぱなしだ。Microsoftは日本時間2021年11月3日からグローバルカンファレンス「Ignite 2021」のオンライン開催を予定しており、ここで「Windowsの生産性を高めるため~」などの文言でWSLg(Windows Subsystem for Linux GUI)やWindows Subsystem for Androidを披露すると思っていた。だが、WSLgは米国時間2021年10月11日、Windows Subsystem for Androidは米国時間2021年10月20日に発表した。
いまのところWindows Subsystem for Androidは、公式ブログの説明にあるとおり日本では利用できないが、まずは概要をお伝えしたい。Windows 11 Insider Preview(ベータチャネル)環境では、Amazon Appstore Previewを通じてAndroidアプリの実行が可能になる。
Microsoftの説明によれば、「Windows Insider向けに50のアプリを選別した。今後数カ月以内に多くのアプリをリリースする」という。「なぜWindows 11でARMベースのAndroidアプリが動くのか」という疑問があるかもしれない。Microsoftは、AOSP(Android Open Source Project) バージョン11をベースにしたLinuxカーネルとAndroid OSをサブシステムとしてWindows 11に組み込み、Hyper-V仮想マシンとして実行している。アプローチ自体はWSL(Windows Subsystem for Linux)に近い。Microsoftは一連の仕組みを「Windows Subsystem for Android」(以下、WSA)と称している。
スマートフォンがあれば利用できるアプリを、わざわざWindows 11で使う利点はあるのだろうか。まず1つは視認性。現在の主要なスマホは画面が大きくても6インチ程度だが、モバイルノートPCなら12~14インチ程度、据え置きタイプなら15インチ以上、デスクトップPC向けの液晶ディスプレイならもっと大画面だろう。スマホより大きな画面でAndroidアプリを使えるのは便利だ。
利便性も高まる。PC利用中にアプリを起動するためスマホを手にする場面は多い。上記の視認性にも通じるが、マルチディスプレイ環境やWindows 11の仮想デスクトップで表示領域を確保してスマホアプリを起動すれば、自身が目にする方向はひとつで済む。
ただ、Microsoft製AndroidエミュレーターであるWSAは、メインのスマホとは別デバイスとして認識されると思われる。たとえばIDの類いを用意せず、デバイスが異なるとデータを共有できないアプリでは問題が発生するかもしれない。
WASの利便性を突き詰めると「WindowsとAndroidアプリの連携」がカギを握りそうだ。Microsoftのサポートページからたどれる各種公式ドキュメントに目を通すと、WSAからはWindows 11のファイルアクセスも可能で、幅広い利用方法が想定できる。
筆者はAndroidアプリに明るくないが、コンテンツファイルをクラウドストレージで共有せずとも、WASで起動したアプリが直接PCのファイルを参照できるだろう。前述のとおり、現時点のWASは米国のWindows Insider Program参加者に公開されたもので、我々日本のユーザーは利用できない。近い将来と期待しつつ、デバイスやOSを気にせずにアプリを使える日は素直に楽しみだ。