AMDは10月13日、Radeon RX 6000シリーズのローエンドに相当する「Radeon RX 6600」を発表した。その構成をご紹介すると共に、性能評価をお届けしたいと思う。

  • Radeon RX 6600を試す

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Navi 23利用のエントリーモデル

Radeon RX 6600は、7月に詳細がアナウンスされ、8月に製品投入されたRadeon RX 6600 XTの下位モデルになる(Photo01)。搭載されているのはNavi 23コアのままであるが、Radeon RX 6600XTと比べると

RX 6600 RX 6600 XT
CU数 28 32
SP数 1792 2048
Base Clock 2044MHz 2359MHz
Boost Clock 2491MHz 2589MHz

といった感じであり、性能がSP数×動作周波数にほぼ比例する事を考えると、Radeon RX 6600 XTに比べてBase Clockベースで29%、Boost Clockベースで21%の性能ダウンとなる。まぁ概ね25%前後の性能ダウンが見込まれると考えれば良い。もっともその分、TBD(Total Board Power)は160Wから132Wにダウンしているのは、特に省スペース向けにはありがたいとはいえる。メモリ容量は8GBであるが、GDDR6 16Gbpsから15Gbpsにこちらもややグレードダウンしており、なのでメモリ帯域も若干減ってはいる(3%減)が、CU数や動作周波数のダウンに比べると僅かであり、逆に言えばRadeon RX 6600 XTよりも相対的にメモリ帯域が充実した、と言えなくもない。これはInfinityCacheも同じで、容量こそ32MBで変わらないままだが、CU数が減った分相対的に利用できるキャッシュ容量が増えた事になる訳で、むしろバランスが良くなった感もある。このあたりが性能にどう響いてくるか、は興味ある部分だ。

  • Photo01: ちなみに今回もこのリファレンスカードは販売対象になっていない。このリファレンスカード、結構魅力的なのだが。

さてAMDはこのRadeon RX 6600を、Radeon RX 5600とかGeForce RTX 2060からの乗り換えに最適とアピールしている(Photo02)。Radeon RX 6600 XTの時には"A New Standard for 1080P"となかなか刺激的な文言で性能をアピールしていたが、Radeon RX 6600はそこまで極端な表現は無いものの、最新ゲームでも1080Pでフルに遊べる(Photo03,04)とし、むしろ絶対性能よりも性能/消費電力比がGeForce RTX 3060より高い、という方がアピールポイントとなっている(Photo05)。

  • Photo02: あるいはRT Coreを持たないGeForce GTX 1600シリーズなどからの乗り換えにも適切かもしれない。

  • Photo03: まぁ最新ゲームが必ずしも負荷が高いとは言えない(Far Cry 6はこちらで紹介したように、そこそこの負荷でしかない)という話ではあるのだが。

  • Photo04: GeForce RTX 3060と比較するとやや劣るタイトルもいくつか散見されるなど、1080P最高速という訳ではないが、そこそこの性能は確保しているとする。

  • Photo05: 以前比較した様に、Radeon RX 6600 XTですらGeForce RTX 3060より消費電力が低いので、この結果はある意味当然とは思う。

またFSR対応タイトルも以前に比べてだいぶ増えており(Photo06)、当然Radeon RX 6600でも利用可能である(Photo07,08)。また当然Windows 11への対応も準備されている(Photo09)とされる。ちなみにOEMパートナーとしてまず8社より、オリジナルデザインのRadeon RX 6600は13日に発表されることになっている。

  • Photo06: だいぶFPS系が増えてきたのは喜ばしい限り。

  • Photo07: Far Cry 6での結果。ちなみに今回こちらの追試ということでやってみようと思ったのだが、ドライバの衝突があってまともに動かなかったので見送りさせていただいた。ちゃんとクリーンインストールしないとダメっぽい。

  • Photo09: この原稿執筆時点での試用ドライバも一応Windows 11対応になっていた。

  • Photo10: ASRockのみ1ファンモデルをラインナップしている。

気になる価格はスライドには示されていないが、推奨小売価格は$329と発表されている(日本での価格は不明)。

ベンチマーク環境

ということで今回はGIGABYTEの「Radeon RX 6600 Eagle 8G」を借用して評価を行ってみた(Photo11~19)。比較対象には「GeForce RTX 3060」と「Radeon RX 6600 XT」を用意した。何のことはなくこの記事の構成からGeForce RTX 3060 Tiを抜いてRadeon RX 6600を追加しただけであるが、OSとドライバの両方ともバージョンがだいぶ上がった事もあり、データは新規で取り直している(ので、以前の結果と微妙に異なっている事に注意されたい)。テスト環境は表1に示す通りである。

■表1
CPU Ryzen 7 5800X
M/B ASRock X570 Pro4
BIOS P5.10
Memory Micron 16ATF2G64AZ-3G2E1(DDR4-3200 16GB CL22)×2
Video ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC GIGABYTE Radeon RX 6600 Eagle 8G BIOSTAR Radeon RX 6600 XT
Driver GeForce Driver 472.12 DCH WHQL Radeon RX6600 21.30.17.06 Non WHQL Radeon Software 21.10.1 Sep27 Non WHQL
Storage Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 10 Pro 日本語版 21H1 Build 19043.111

タイミング的にはOSをWindows 11に上げる事も不可能ではなかったが、まだアプリケーションの互換性が完全に取れていない(いくつかのものがWindows 11への対応が完了していない)事と、ベンチマークそのものをWindows 11の公開前からスタートしていた事もあり、今回はWindows 10のままである。余談だが、現時点ではRyzenwをベースとしたシステムの場合、Windows 11で結構性能が落ちる事がAMDから発表されており、なのでRyzen 7 5800Xのままでやったら相当フレームレートが下がったと思う。今月中にパッチが出る予定なので、次からはWindows 11に移行する予定である。

  • Photo11: パッケージは表こそ黒を基調としているが、側面はオレンジのちょっと目立つもの。箱はやや大きめだが、かなり軽い。

  • Photo12: 3ファン構成。ただファンそのものはそれほど大きくない。またヒートシンクは大き目で、そのためファンの騒音はかなり静かであった。高回転でファンを駆動しなくても十分冷えるためだろう。

  • Photo13: 一番端のファンの排気は、そのままカード背面に抜ける構造。バックプレートはアルミ製だが、想像以上に軽い。ちなみに寸法は長さ283mm×高さ100mm×厚さ40mm、重量は655.8g(いずれも実測値)だった。

  • Photo14: 出力はDisplayPort×2、HDMI×2というちょっと珍しい(が、メインストリーム向けにはむしろ適切な)構成。

  • Photo15: 後端はこんな感じ。リテンションは取り付けできないが、この重量なら不要だろう。

  • Photo16: 補助電源は意外にも8pin×1(TBPを考えれば6pin×1でも足りそうなのだが)。基板そのものは全体の2/3程度の長さであるのが判る。

  • Photo17: 底面から。ヒートシンクがカード全体を覆っているのが判る。

  • Photo18: GPU-Zの結果。メモリがGDDR6 15Gbps 128bit構成なのが判る。PCIeは4.0 x8構成なのはRadeon RX 6600 XTと同じ。

  • Photo19: BIOS周り。Power Limitは-6%~+20%となっており、+20%の場合のTBPは158.4Wとギリギリ6pinの150Wレンジを超えるため、補助電源は8pinになっているのかもしれない。

なおグラフ中の表記は

3060 :ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC
RX 6600:GIGABYTE Radeon RX 6600 Eagle 8G
6600 XT:BIOSTAR Radeon RX 6600 XT

としている。また本文中の解像度表記もいつも通り

2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel

とさせていただいた。また今回もFSR/DLSSは一切利用していない。ベンチマークでの設定は先のRadeon RX 6600 XTの場合と同一だが、一応今回も記しておく。

◆3DMark v2.20.7274(グラフ1~4)

3DMark v2.20.7274
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

  • グラフ1

  • グラフ2

  • グラフ3

  • グラフ4

Overall(グラフ1)で見ると、負荷が相対的に低いWildLife~FireStrikeあたりまでは

GeForce RTX 3060 < Radeon RX 6600 < Radeon RX 6600 XT

という傾向(WildLife Extremeだけ例外)という感じだが、TimeSpy以降になると

Radeon RX 6600 < GeForce RTX 3060 < Radeon RX 6600 XT

になり、Ray Tracingを駆使するPort Royalでは

Radeon RX 6600 < Radeon RX 6600 XT < GeForce RTX 3060

となるのはある意味納得できるというか、判りやすいというか。先のPhoto04でも負荷の軽いゲームはRadeon RX 6600がGeForce RTX 3060と互角以上だが、負荷が重いゲームになるとややビハインドになる(Cyberpunk 2077とか)という傾向になっていたが、これが再現した格好だ。

Graphics Test(グラフ2)はほぼグラフ1と同じ傾向であり、一方Physics/CPU Test(グラフ3)は(当たり前だが)ほぼ同じスコアになっているあたりから、グラフ1の傾向は純粋にGPUの描画能力を示しているものと判断してよいだろうし、相対的に負荷が重くなる(CPUとGPUの両方のWorkloadが掛かる)Combined Testが

Radeon RX 6600 < GeForce RTX 3060 < Radeon RX 6600 XT

なのも納得である。

◆SuperPosition v1.1(グラフ5~11)

SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition

同じくSynthesis BenchmarkのSuperPositionを。設定は

Shadow Quality :High
Texture Quality:High
Depth of field :On
Motion Blur :On

とした。

  • グラフ5

  • グラフ6

  • グラフ7

  • グラフ8

  • グラフ9

  • グラフ10

  • グラフ11

平均/最大/最小フレームレート(グラフ5~7)では、傾向がはっきり

Radeon RX 6600 < GeForce RTX 3060 ≦ Radeon RX 6600 XT

となっている。

これはフレームレート変動(グラフ8~11)からも明らかで、一番の主戦場である2K(グラフ8)では明確に3つのグラフが綺麗に分離している。その後解像度が上がると、GeForce RTX 3060とRadeon RX 6600 XTのグラフは重なり始めるが、Radeon RX 6600は完全に別、という感じになっている。

まぁとはいえ、2Kで平均70fps超えで、60fps程度まで落ちるのは165秒前後の一瞬だけ、という事を考えると、2Kでの利用に支障は無いという見方も出来る。少なくとも2Kに関して言えば、性能的には及第点は取れているとして良いかと思う。

さて、平均フレームレート(グラフ5)を見ると分かりやすいが、2Kでは確かにそれなりRadeon RX 6600 XTにアドバンテージがあるが、2.5K~4KではGeForce RTX 3060とほぼ変わらず、という結果になっている。これは最大/最小フレームレート(グラフ6・7)でも同じで、なるほどRadeon RX 6600 XTを"1080P High Refresh Rate Gaming"と称するのも納得である。実際フレームレート変動を見ても、2K(グラフ8)はちゃんとRadeon RX 6600 XTが分離しているが、2.5K~4K(グラフ9~11)ではGeForce RTX 3060とほぼ重なりあう結果になっている。