KDDI総合研究所(KDDI総研)とジャパンディスプレイ(JDI)は10月7日、電波の反射方向を電気的に任意の方向へと変えられる、「28GHz帯液晶メタサーフェス反射板」の開発に成功したと発表した。
5Gで利用する28GHz帯などの高い周波数は、超高速・大容量な通信サービスを実現できる一方で、電波の直進性が強いため扱いが難しく、基地局のアンテナが見通せないビルや樹木の影などに電波が届きにくい場所(カバレッジホール)が発生しやすいという課題がある。
このような場所へ5Gサービスを提供する方法として注目を集めているのが、基地局からの電波を特定方向に反射させてカバレッジホールへ届ける「メタサーフェス反射板」で、KDDI総研も2021年1月には、日本電業工作と共同で「28GHz/39GHz帯デュアルバンド透明メタサーフェス反射板」を発表してきた。
今回の発表は、電波の反射方向を電気的に変更可能な、方向可変型液晶メタサーフェス反射板を実現したというもので、ディスプレイなどの光制御に使われる液晶を電波の反射制御に応用することで、電圧により電気特性(誘電率)を変更することで、電気的に電波の反射方向制御を実現したという。
実際に試作された方向可変型液晶メタサーフェス反射板の小型サンプルを用いた電波無響室での実証実験では、28GHz帯の電波を、設定した反射方向に変更でき、かつその電波を受信できることが確認されたという。
両者は今回の成果を受けて、電波環境の変化によるカバレッジホールの位置の変化や、時間帯によるユーザーの分布変化に合わせ、柔軟なカバレッジホール対策ができるようになると期待されるとしているほか、実用化を目指して5Gエリアでの実証実験を進めていくとしている。