シャープが9月28日に発表した5Gスマホのスタンダードモデル「AQUOS sense6」。より大きく、より美しく、より軽くと、大きく進化しました。同日開催された製品体験会で、実機を試した第一印象をレポートします。

  • AQUOS sense6

    AQUOS sense6

【お詫びと訂正のお知らせ】初出時、製品の重さを「146g」と誤って記載している箇所がありました。正しい重さは「156g」です。お詫びして訂正させていただきます。(2021年10月5日 15:20)

累計1,000万台突破の人気シリーズ

AQUOS Senseシリーズはシャープのスタンダードモデル。防水やおサイフケータイ、鮮やかなディスプレイや電池持ちの良さなど、スマホとしての基本的な使い勝手はおさえつつも、3万円台からという手に取りやすさが魅力のシリーズです。2017年の発表以来5世代が登場していますが、今回、シリーズ累計の出荷数が1000万台を突破したことが発表されました。

  • 累計1,000万台

    AQUOS senseシリーズは累計1,000万台を出荷するベストセラーになりました

その新作のAQUOS sense6は、シリーズで初めてIGZO有機ELディスプレイを搭載。大画面と軽さを両立し、5G普及期にふさわしい進化を遂げています。

28日の製品発表と同時に、NTTドコモとauでの取扱いが発表されています。NTTドコモ版「AQUOS sense6 SH-54B」は11月中旬以降発売予定au版「AQUOS sense6 SHG05」は11月上旬以降発売予定となっています。

ミドルレンジでも明るいディスプレイ

AQUOS sense6の一番の特徴は画面の鮮やかさ。“IGZOの有機ELディスプレイ”がミドルレンジ帯のスマホとしては初めて採用されました。

10億色表現(10ビットカラー)対応で、HDRもサポートしており、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、Disney+などの映像配信サービスを楽しむにはぴったりなディスプレイと言えるでしょう。

最大輝度は500ニト、ピーク輝度は1600ニトと、この価格帯では最高クラスのディスプレイとなっています。また、AQUOSシリーズとしては初の色相ごとの輝度制御に対応。映像の中で白っぽくなりがちな部分の明るさを抑えて表示できます。

こうしたディスプレイの特徴は、単に謳い文句としてだけでなく、実機を見ても納得の出来映えでした。とくにHDR動画を表示した時の見栄えは、筆者が普段使っている10万円台のハイエンドスマホにも勝るとも劣らないように感じました。

  • HDR映像の表示

    HDR映像の表示では、特に赤系色の白飛びが抑えられていると感じました

AQUOSスマートフォンの上位機種では120Hz駆動のなめらかなディスプレイが売りの1つですが、このAQUOS sense6については最大リフレッシュレートが60Hzとなっており、“倍速駆動”には非対応です。

3眼カメラは上位機種と同じ構成

AQUOS sense6が搭載する背面の3眼カメラは、同時に発表された上位モデルのAQUOS zero6と同じセンサー、レンズの組み合わせを採用。AQUOS sense6向けには唯一、夜景撮影用のレーザーオートフォーカスを載せていない点だけが異なっています。

  • カメラ構成

    AQUOS sense6のトリプルカメラは、AQUOS zero6とほぼ同等の構成です

写真の出来を左右するソフトウェアとしては、新しいイメージエンジン「ProPix3」を搭載します。AQUOS R6はLeicaの監修によりカメラ画質の大幅な改善を実現していますが、その技術開発の過程でシャープが培ったノウハウをつぎ込み、画質の改善を実現したとしています(AQUOS sense6自体はLeicaの監修を受けていません)。

十分な電池持ちと片手持ちで疲れない軽さ

AQUOS sense6と同時に発表された「AQUOS zero6」は5Gスマホで世界最軽量を謳っていますが、AQUOS sense6も重さ156gと、6インチ超のスマホとしては群を抜く軽さとなっています。

  • AQUOS sense5Gとカラーを比較

    AQUOS sense5Gよりも大きな画面で、軽量化も実現

ボディはこれまでのシリーズと同様にアルミニウム合金の一体成型で仕上げられており、カラーはNTTドコモ、au版ともにライトカッパー、シルバー、ブラックの3色を展開。さらにNTTドコモ版ではドコモオンラインショップ限定カラーとしてブルーメタリックも販売されます。

  • ライトカッパー

    カラーは2色展開。ライトカッパー

  • シルバー

    シルバー

  • ブラック

    ブラック

厚みを前世代機のAQUOS R5Gと比べると、約1mm薄くなっています。より四角に近い形状をしているためか、見た目からは薄くなった印象を受けませんが、手に持ってみると程よい厚みで安定して片手持ちできると感じました。端末の上下左右は緩やかにへこんだ形状に成型し、指をひっかけて支えやすいよう工夫されています。

  • 厚みを比較

    厚みはAQUOS sense5G(下)より約1mm減っています

  • 側面のへこみ

    側面のへこみがわかるでしょうか

バッテリー容量は4,570mAhで、前世代機と同じ容量が確保されています。それでいて重さは前モデルより22gも軽い156gとなりました。同じ画面サイズ6.1インチのiPhone 11よりも38g軽量です。指紋センサーは、ディスプレイ内蔵型のものを搭載しています。

  • 指紋センサー

    指紋センサーは今回、光学式のディスプレイ内蔵型指紋センサーになりました

 スマートホームと連携する新機能

今回のAQUOS sense6(およびAQUOS zero6)の発表にあわせて、シャープのスマートホームサービスと連携する新機能「AQUOS Smart Home Hub」が発表されました。今後発売の新製品と、OSアップデートが提供されるAQUOSスマートフォン全機種に標準搭載されます。

  • エアコンを操作

    エアコンをサッと操作できる「AQUOS Smart Home Hub」

AQUOS Smart Home Hubは、シャープのスマートホーム機能COCORO HOMEに対応した家電をスマホの通知エリアからコントロールする機能です。エアコンの電源オン・オフや、冷蔵庫の状態の確認など、簡単な操作を手早く行うための機能となっています。

対応家電はまずはシャープ製のエアコンと空気清浄機の2モデルからスタートし、冷蔵庫やオーブンレンジ「ヘルシオ」、調理器の「ヘルシオ ホットクック」などに順次対応する予定です。

  • AQUOS Smart Home Hubの展開

    対応家電は順次拡大予定。発売済みのAQUOSスマホにもOSバージョンアップにあわせて提供されます

ちなみに、次期OSのAndroid 12では、スマート家電プラットフォーム「Google Home」の操作が、Androidの通知エリアから行えるようになります。この機能はコンセプトや使い方がAQUOS Smart Home Hubとも共通しています。シャープの開発担当者によると、Googleに対して両サービスの連携を提案中とのことです。将来のアップデートで、OS標準の機能にあわせた改善がなされる可能性もあります。

 エモパーは、よりクセのないしゃべり方も追加

AQUOSスマホで長らく搭載されている「エモパー」は、新たに男性と女性の音声が追加されました。

エモパーは「スマホがしゃべる」という機能で、スマホを置いたときなどに、ニュースや天気予報などの情報をユーモラスな語り口で伝えてくれます。

  • エモバーの追加音声

    スマホがしゃべる「エモパー」にアナウンサー風の音声が新登場

これまでのエモパーのキャラクターは、「えもこ」や「さくお」といった名前が与えられていました。いずれも話し方やせりふ回しに独特の味わいがあり、時にはダジャレなどを交えて語り掛けることもあります。エモパーのキャラクターのクセの強さは、人によっては親しみを感じやすいものですが、多くの人に好まれるものとは言い難いものでした。

今回追加される男性と女性の音声は、テレビのアナウンサーのようにクセのないしゃべり方で情報を伝えます。たとえば、エモパーではニュースを知りたいだけでキャラクターの独特なクセは苦手……という人にも受け入れやすい音声と言えるでしょう。

このほかにも、AQUOS sense6ではシャープ独自の機能を多数搭載しており、それらは設定画面の「AQUOS トリック」から有効化できます。例えば、手をふれずに画面を流し読みできる「スクロールオート」や画面の端から指を動かす操作でスクリーンショットが撮れる「Clip Now」など、スマホのちょっとした操作を便利にする機能が揃っています。

  • AQUOS トリック

    小技がいっぱい「AQUOS トリック」

指紋センサーを長押しして決済アプリなどを起動する「Payトリガー」は、事前に登録したアプリへ移動できる小さなランチャーが追加されました。例えば「ポイントカードアプリとスマホ決済アプリを素早く呼び出したい」といったシーンでより便利に使えるようになっています。

  • Payトリガー

    決済画面を一発起動できるPayトリガー。ポイントカードアプリなどを登録するショートカットが追加されました

また、スマホを買い替えたときに便利な、写真や連絡先などを前のスマホから転送する機能も、AQUOSスマホでは標準搭載しています。以前のスマホと直接ケーブルをつなぐためのアダプターも試供品としてですが同梱しており、有線接続で高速にデータを転送できます。

  • 買い替え時のデータ転送

    iPhoneからのデータ転送にも対応します

au版はeSIMにも対応

シャープはAQUOS sense6の発表時、「今後AQUOSスマートフォンでは原則としてeSIMに対応する」という方針を示しています。

eSIMは物理的なSIMカードなしで、電話番号など携帯電話の契約情報を書き込める仕組みです。例えばオンライン限定料金プランを、インターネットで登録してそのまま利用開始できるといった独自の便利さがあります。2021年には大手キャリア各社がeSIMに対応した料金プランを発表しており、より利用しやすい環境になっています。

AQUOS sense6では、au版がeSIMに対応する一方で、NTTドコモ版はeSIM非対応となっています。

ドコモ版とau版以外もありそう

先述のとおり、AQUOS sense6は発表時時点ではNTTドコモとauでの取扱いのみが発表されており、その他の販路での販売は未定となっています。ただし、これまでのAQUOS senseシリーズは両キャリア以外でも取り扱われた実績があり、シャープのメーカーブランド版(いわゆるSIMフリー版)として量販店やMVNO各社に展開されています。今回のAQUOS sense6もいずれSIMフリー版がラインナップされると見て間違いないでしょう。

なお、シャープが発表したニュースリリースにより、NTTドコモ版/au版の仕様と同じ「RAM 4GB/ROM(ストレージ) 64GB」モデルのほかに、「RAM 6GB/ROM 128GB」という構成のモデルが存在することが明らかにされています。

5Gで動画を楽しむにはピッタリな1台

シャープのAQUOSスマートフォンがAQUOS R、AQUOS zero、AQUOS senseという3つのシリーズ展開になって以来、AQUOS senseは多くの人に届けるためのスマートフォンとして重要な役割をになってきました。今回のAQUOS sense6でも、上位モデルのその開発で培った成果を、より低価格なモデルへ届けようという工夫が見られます。AQUOS zero6に準じる軽さや、AQUOS R6から派生したIGZO有機ELディスプレイやカメラのチューニングなどがその好例と言えるでしょう。

防水やおサイフケータイ、指紋認証にもきっちり対応して、普段の使い勝手にも配慮した設計になっているところも特徴です。Androidスマホで価格重視で選びつつ、大きな弱点がないものを選びたいなら、AQUOS sense6はまず検討するべき1台と言えるでしょう。

そしてAQUOS sense6ならではの際立ったよさもあります。それは価格以上のディスプレイと、大きな画面と軽さや省電力性能の両立です。これが実現できるのは、ディスプレイを自社で開発しているシャープならではの強みと言えるでしょう。

ただし、NTTドコモ版/au版のRAM(メモリ)は2021年秋冬のスマホとしては控えめな容量となっています。ゲームをバリバリ遊ぶようなパワーユーザーには、物足りなく感じるかもしれません。

日常生活で使いつつ、動画サービスもよく使うような人にはピッタリな1台と言えます。5Gで高速になる通信サービスを最大限に使い倒すには、オススメの1台です。

  • AQUOS sense6の特徴

    AQUOS sense6の特徴

主な仕様

  • OS:Android 11
  • CPU:Qualcomm Snapdragon 690 5G mobile platform
  • 内蔵メモリ:RAM 4GB/ROM 64GB、RAM 6GB/ROM 128GB
  • ディスプレイ:約6.1インチ フルHD+ IGZO OLEDディスプレイ(2,432×1,080ドット)
  • アウトカメラ:標準(約4,800万画素 F1.8 焦点距離26mm相当)、広角(約800万画素 F2.4 焦点距離15mm相当)、望遠(約800万画素 F2.4 焦点距離53mm相当)
  • インカメラ:約800万画素 F2.0 焦点距離26mm相当
  • Wi-Fi:IEEE802.11a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:バージョン5.1
  • バッテリ容量:4,570mAh
  • 防水/防塵:IPX5・IPX8/IP6X
  • 生体認証:顔認証、指紋認証
  • その他の機能:おサイフケータイ/NFC
  • サイズ/重さ:約W70×D7.9×H152mm、約156g