シャープは9月28日、軽量ハイスペックスマホ「AQUOS zero6」とお手頃価格の5Gスマホ「AQUOS sense6」を発表しました。その中からAQUOS zero 6の使用感をレポートします。

  • AQUOS zero6

    AQUOS zero6

「5Gスマホは重い」を覆す146g

  • カラーバリエーション

    カラーバリエーションはブラック/ホワイトとソフトバンク限定のパープルの3色

5Gが日本で開始された当初のスマートフォンは、4Gスマートフォンよりも「重い」というイメージがありました。

軽さを特徴としていたAQUOS zeroシリーズでも、初の5G対応モデルとなった「AQUOS zero 5G basic」では軽さの追求を諦め、“価格と性能を両立したスマホ”という立ち位置に変化していました。

それに対して、今回のAQUOS zero6は軽さの追求に回帰。画面サイズ6.4インチにして146gという、大画面と軽さを両立した仕上げになっています。

146gがどれだけ軽いかというと、例えばアップルの小型スマホiPhone 13 miniは画面サイズが5.4インチで重さは140gです。画面サイズでは二回りは大きいAQUOS zero6ですが、重さの差はわずか6gに抑えています。

  • iPhone 13 Proと重さを比較

    iPhone 13 Pro(左)と重さを比べてみました。49gの重量差です

スペック表を読んでその重さを知っていても、手に取ってみると軽さは想像以上。見た目と実際の重さのギャップに驚いてしまいました。この軽さと大画面なら、長時間手持ちしていても快適に使えそう。例えばベッドに寝ころびながら手持ちで動画を見たり、電子書籍を読んだりする使い方をしても、腕への負担を抑えられそうです。

  • 発表会スライド:軽さ

    発表会でも、他社のスマホと比較してのかけ離れた軽さを強調していました

展示会場では、前世代モデルでは行われなかった「風船でスマホを浮かべる」という展示も復活。軽さに力点をおいて紹介されていました。

  • 風船パフォーマンス

    風船で浮かせるパフォーマンスも復活しました

軽さの追求へ回帰しながらも、“価格と性能を両立したスマホ”という方針も踏襲されています。価格帯は前世代のAQUOS zero5G basicと同等程度になる見込みとのことです。携帯キャリアからはauとソフトバンクの2社が発売予定。シャープが販売するメーカーブランド版を投入するかどうかは、発表時点では未定としています。

ミリ波、おサイフ、イヤホンジャック……贅沢スペック

軽さ追求だけでなく、さまざまな機能を贅沢に盛り込んできたのも、AQUOS zero6の興味深い点です。ひときわ目を引いたのは、5Gのミリ波帯に対応していることでした。

  • 発表会スライド:豊富な機能

    発表会のスライドより。そこまでするのかというほど機能はてんこ盛りです

ミリ波帯は5Gで高速な通信を実現するために重要な周波数帯です。ミリ波帯は電波を安定してキャッチするのが難しいため、新周波数帯の中でも大きめのアンテナを載せる必要があります。5Gのサービス開始当初、ミリ波に対応する機種はかなり限られていました。

  • ミリ波アンテナ

    指でつまんでいるのがミリ波アンテナ。上部に2本入っています

さらに、AQUOS zero6はnanoSIMスロットに加えてeSIMにも対応。2つの回線を同時に利用することが可能です。au版とソフトバンク版のいずれもeSIMをサポートしており、povoやLINEMOといったオンライン専用プランの切り替えもSIM送付なしで行えます。

加えて、防水やおサイフケータイ、120Hz駆動の有機ELディスプレイ、画面内指紋センサー、microSDスロット、3眼カメラにイヤホンジャックまで、おおよそスマホに求められる機能はだいたい盛り込まれているといってもよいでしょう。

内部構造をぎりぎりまで軽量化

シャープらしいアプローチとしては、内部構造のチューニングを1g単位まで徹底して行っていること。骨格となるフレームにはAQUOS sense2以来のマグネシウム合金の採用して重さを大きく低減。外側のパネルやパーツ構成に至るまで徹底した見直しが図られています。

  • 軽量化のための工夫

    徹底的に切り詰めて軽量化を実現

  • フレームの重さを比較

    フレームの重さを前モデルと比較。37gから25gへ、12gの軽量化を達成しています

とりわけ印象的だったのは、ディスプレイガラスの軽量化です。コーニング社の耐久性が高いガラスパネル「Gorilla Glass Victus」を採用しています。このガラスはタフさが特徴となっていますが、AQUOS zero6では、このタフさを「これまでのガラスよりも薄くしても耐久性を保てる」という方向で活用。厚みを0.4㎜と薄く作ってもらうことで、前世代モデルよりもガラス単体での重さを40%軽減したそうです。

  • Gorilla Glass Victus

    0.4mmと薄いガラスですが、耐久試験はきちんとクリアしています

AQUOS R6の技術をトリプルカメラで

2021年発売のフラッグシップ「AQUOS R6」では、カメラに特化したスマホでした。ライカ監修のもと、コンデジクラスのセンサーを搭載するなど斬新な試みを行っています。

今回のAQUOS zero6では、そのAQUOS R6の成果として得られた新しい画質エンジンを導入し、カメラ画質を向上させています。

  • カメラ

    本機のカメラはライカ監修ではありませんが、AQUOS R6の成果を取り入れています

背面カメラは3眼になっており、標準画角の4,800万画素(F1.8、79度、センサーサイズ1/2インチ)、望遠800万画素(F2.4、光学2倍相当、1/4インチ)、広角800万画素(F2.4、120度、1/4インチ)という構成。さらにレーザーAFを搭載し、薄暗い場所でも高速にピントを合わせられるようになっています。

  • 発表会スライド:カメラ

    トリプルカメラ+レーザーAFを搭載

電池持ちもあきらめない

146gという軽さもありながら、AQUOS zero6では電池持ちへの配慮も欠かしていません。バッテリー容量は前世代モデルから40mAh減の4010mAhを搭載。連続待受時間で約610時間(ソフトバンク版、4G LTEエリア)という電池持ちとなっています。急速充電はUSB PD 3.0をサポート。およそ130分で満充電にできるとしています。

なお、ワイヤレス充電は非対応となっています。

AQUOSならではの便利機能も充実

AQUOS Rシリーズの誕生以来、AQUOSスマホでは小技を効かせたような便利機能を着々と搭載してきました。それらは「AQUOSトリック」と名付けられて、設定アプリにまとめられています。

  • AQUOSトリック

    着々と機能を増やしてきたAQUOSトリック。ひねりが利いた小技が揃ってます

例えば、テザリングオート。これはスマホを自宅から持ち出したとき、自動でテザリングをオンにする機能です。外出先でパソコンを使う時に、わざわざテザリングを立ち上げずにするところが便利。シンプルながら、実用的な小技機能と言えるでしょう。

また、画面点灯を自動で制御するBright Keepは、今回ちょっと進化しました。これまでも手に持っている間は画面を点灯させておくといった機能はありましたが、新たに「置いたとき」の機能が追加されました。

  • Bright Keep

    ありそうでなかった「置いたときに画面を消さない」機能

スマホを置いたときに使える機能は「ホーム画面以外では表示をキープ」と「ホーム画面では早めに暗くする」の2つ。前者は例えば、スマホを置いたまま電子書籍を読んでいるときなどに、自動で画面オフになるのを防ぐことができます。後者はホーム画面で放置したときに、画面ロックをかけずに明るさを抑えるという内容。家の中でロック解除するのは面倒だけど、電池消費は抑えたい……そんなものぐさな欲求に答えてくれます。

新機能では、シャープのスマート家電と連携する「AQUOS Smart home HUB」に対応。コントロールパネルから素早くアクセスし、エアコンや空気清浄機のオン・オフや、ホットクックの状況を確認するなど、簡単に操作ができるという機能です。

ハイスペックとお手頃価格の狭間で……

軽量さだけなく、防水防塵やおサイフケータイからeSIM、イヤホンジャックまで多彩な機能を詰め込んだAQUOS zero6ですが、その贅沢仕様を高くなりすぎない範囲で実現するために、折り合いがつけられた部分もいくつかあります。

まず、ディスプレイはハイエンドモデルのAQUOS R6とは異なり、“IGZOではない”有機ELディスプレイを搭載しています。最大輝度は500ニトでピーク輝度は1300ニト。AQUOS R6のPro IGZO OLEDディスプレイと比べると控えめです。省電力性についても、IGZOには及びません。

  • ディスプレイ

    240Hz相当の高フレームレートディスプレイ。ただしIGZOではありません

前世代機と同様に、ディスプレイは120Hzの可変フレームレート対応で、フレーム間に黒画面を挿入し、240Hz相当のハイフレームレートで駆動します。

ただし、ディスプレイについては、あくまで筆者が実機を見ての印象ではありますが、ソフトウェア更新などでの改善の余地があるように思えました。具体的にはTwitterアプリなどで縦スクロールで表示したときの見え方があまり滑らかに思えず、ややぶれつつ遷移しているような表示になっていた印象です。

ボディ表面の素材は軽量化とコストのバランスから、樹脂素材が選択されています。側面部はめっきのような塗装が施されています。また、以前のモデルと違い、カーブガラスではない、いわゆる2Dガラスを採用。箱型に近くなったこの形状は、バッテリー容量を確保するために選択されたそうです。

  • 表面が樹脂素材の外装

    樹脂素材は指紋の付きやすさが気になるかも

  • 側面部

    外周はやや箱形に近い形状に

  • ホワイトモデルの色味

    ホワイトモデルはAQUOS R2世代を彷彿とさせる色味

  • ホワイトモデルの側面部

    ホワイトモデルの側面はシルバーを配色

また、細かい部分ではありますが、側面部が前面の外周に向けてわずかに出っ張っているのが気になりました。落下したときに画面の直撃を避けやすい構造ですが、前面のどこかが凹む可能性が大きいのではないかと心配です。

  • 外周部

    外周部が画面を守っていますが、当たり所が悪いと凹みは避けられそうにありません

強力なスペック

チップセットなどの構成は前世代機と同じく準ハイエンドの構成を採用。CPUはSnapdragon 750G 5Gを搭載。このCPUは前世代モデルが搭載していたSnapdragon 765G 5Gよりもワンランク下のラインですが、処理性能はほぼ同等となっています。メモリ(RAM)は8GB(LPDDR4X)を搭載、ストレージは128GB(UFS 2.2)となっています。また、最大1TBのmicroSDXCカードに対応します。

ディスプレイは6.4インチOLEDで、解像度はフルHD+(1,080×2,340ドット)。ステレオスピーカーを内蔵し、イヤホンジャックも備えています。

OSはAndroid 11を搭載。発売日から2年間のOSバージョンアップへの対応を謳っています。 防水はIPX5/IPX8をサポートし、“お風呂対応”としています。防塵はIP6Xをサポート。バッテリー容量は4010mAhで、急速充電のUSB PD3.0をサポートしています。

カメラは背面が標準画角4800万画素+望遠800万画素+広角800万画素の3眼構成でレーザーAFを搭載。インカメラは画面上部のノッチ(切り欠き)に配置されており、1260万画素で広角78度となっています。

そのほか、おサイフケータイ、ラジスマ(radiko+FM)、画面内指紋認証などに対応。端子はUSB Type-Cと3.5mmイヤホンジャックを備えています。本体サイズは約158mm×73mm×7.9mm、重さは約146g。カラーはau版がブラックとホワイトの2色を展開。ソフトバンク版はブラック、ホワイト、パープルの3色をラインナップします。

  • パープルモデル

    ソフトバンク限定色のパープル

  • イヤホンジャック

    上部にイヤホンジャックを装備

  • USB Type-C端子

    下部にUSB Type-C端子。凹んだ形状は小指にフィットしやすく好印象でした

AQUOS zeroシリーズがもともと強みとしていた「軽くて大画面」を5G対応で実現しつつ、豊富な機能を盛り込んだ意欲的なモデルです。価格を抑えるために相応の妥協がなされた部分はありますが、“軽くて大画面”を求める人にはこれ以上ない選択肢となり得るでしょう。