モバイル通信サービス「nuroモバイル」を運営するソニーネットワークコミュニケーションズは7月15日、オンライン説明会を開催し、4月1日にスタートした新プラン「バリュープラス」の現況と今後の展望について紹介した。
バリュープラスは、3GB/5GB/8GBの通信容量で、音声通話付き/データ通信+SMS/データ通信専用の3つのSIMタイプがあり、ドコモ/au/ソフトバンクの3キャリアに対応する料金プラン。3カ月ごとに追加のデータ容量を受け取れる「Gigaプラス」、使い切らなかった通信容量をプレゼントする「パケットギフト」などの機能を利用できる。シンプルでわかりやすい価格体系により、利用者が迷うことなく選択できるプランとなっている。月額基本料金は下記のとおり(データ+SMSのSIMタイプはドコモ/auのみ、データ使い放題プランはソフトバンクのみ提供)。
- VSプラン(3GB):627円(データ専用)、792円(データ+SMS/音声付き)
- VMプラン(5GB):825円(データ専用)、990円(データ+SMS/音声付き)
- VSプラン(3GB):1,320円(データ専用)、1,485円(データ+SMS/音声付き)
- お試しプラン(0.2GB):330円(データ専用)、495円(データ+SMS)
- データ使い放題プラン:3,828円(データ専用)
月額基本料金のほか、登録事務手数料などの初期費用、22円/30秒(または11円/30秒、後述)の音声通話料、SMS送信料、SIM関連費用などが必要となる。
オンライン発表会に登壇した同社MVNO事業室 室長の神山明己氏は、バリュープラスの概要を簡単に振り返った後、バリュープラスの好評により第1四半期(4~6月)のnuroモバイル新規契約者数が前年比4.7倍と大幅に伸び、7月以降も好調に推移していることを発表した。
バリュープラスのユーザーの男女比率は男性79%/女性21%で、神山氏は「今後は女性の方にも選んでいただけるよう、使い勝手のよいサービスにしていきたい」と語る。年代別では、40代のユーザーがもっとも多く、30代~50代で全体の約8割を占めるという、MVNOユーザー全体の属性に近い構成比。「コスト重視のお客様に選んでいただいていると考えている」(神山氏)という評価だ。
さらに詳細な利用状況として、バリュープラスの契約者を対象に行ったユーザー調査(5月実施)の結果も紹介された。それによると、nuroモバイルに加入する直前にMVNOを利用していたユーザーが56%、サブブランドを含むMNOを利用していたのは25%。MVNOから移行してきたユーザーについては「価格に敏感で、自分に合った容量のプランを納得できる価格で使いたい方に選ばれている」、MNOからの移行のユーザーについては「オンライン申し込みに抵抗がない方が、通信量が8GBであれば非常におトクである点を評価いただいている」と分析した。
続いて紹介されたのは、「通信会社を選ぶ時に気にするポイントは?」という設問への回答。上位となったのは「納得できる価格」「自分にあった容量」「音声付きプランが安い」「解約金がない」「料金プランがシンプル」といった項目だった。神山氏は「これらはすべてサービス提供当初に目指したポイント。それをお客様にご評価いただいたのは非常にうれしい限り」と、バリュープラスが目指したサービス内容がユーザーに受け入れられたという認識を示した。
総じてユーザーの満足度は高く、93%が満足していると評価。さらにNPS(どれくらい友人や家族に勧められるか)についても、2020年11~12月に実施した旧プランについての調査では18%だった「推奨者」(友人や家族に勧めてよいと考えている人)が44%へと大幅に増加し、「批判者」(友人や家族に勧められないと考えている人)が42%から12%へ減少。「今後も高い満足度を継続していただけるよう、バリューアップに取り組んでいく」「今後もご家族・ご友人に勧めていただけるよう、満足度の高いサービス提供を継続していく」と、今回の結果をよろこびながら、価値向上に取り組んでいく姿勢を見せた。
ユーザーが今後期待していることとしては、「安定的に通信速度が出ること」がもっとも多く、「専用アプリ不要で安く通話できる」「専用アプリで通信量や料金の確認・変更ができる」「eSIMの利用」「5Gサービスの利用」といった要望が寄せられているという。これに関連して、今後のバリューアップに向けて現在行っている3つの取り組みが紹介された。
1点目の取り組みは、ソニーグループのAI技術を応用した帯域の割り当ての動的な変更。
これはAI技術により通信量の変動を予測し、用途ごとに割り当てる帯域を動的に変更することで帯域を効率よく利用しようというもので、ユーザーからの期待がもっとも大きい「安定的な通信速度」の実現に寄与する。その効果について具体的な数字は示せないとしながらも、「使っていただいているお客様が実感できるレベル」(サービス設計課 課長 亀井健男氏)とのことで期待が持てそうだ。「たんに料金を安くするのではなく、最新のAIテクノロジーを活用することで効率のよい帯域運用を行い、お客様に価格還元をしながら価格と品質をバランスさせる」(神山氏)ということはバリュープラスの低価格を実現させるための前提であり、今後も継続して取り組んでいく姿勢だ。
2点目の取り組みは、オートプレフィックス機能の導入だ。
バリュープラスを含むMVNOサービスの多くは発信先の電話番号の前に「00XY」という形式の識別番号(プレフィックス)をつけることで割安な料金が適用される通話サービスを提供している。バリュープラスの場合であれば、プレフィックスなしでは22円/30秒の音声通話料金がプリフィックスをつけることにより11円/30秒となる。ただし、この料金適用を受けるには専用の電話アプリを利用してアプリにプレフィックスを付与させるか、手動でプレフィックスを入力する必要があり、面倒なのは否めない。
それがオートプレフィックス機能の導入により、普通に音声通話を発信すれば自動でプレフィックスが付与されるようになるので、専用アプリや余計な入力の手間は不要になる。導入は、ドコモ回線が2021年内の開始を予定。au/ソフトバンクについては準備ができしだいアナウンスするという。
そして3点目は5Gへの対応。月額基本料金はゼロ円で、2021年秋までには提供開始の予定だ。ネットワーク輻輳時は4Gと同等の速度になるなど「現在、先行して提供しているMVNO他社と同様の仕様」(神山氏)での提供となり、これまで同様3キャリアに対応する。「月額基本料金ゼロ円のメリットをいかして気軽に5Gを体験してほしい」とのことだった。
これらの取り組みをはじめとして、同社はバリュープラスのサービス向上を図っていく。神山氏は今後について「バリュープラスを選んでよかったと思っていただけるよう、設備投資も積極的に行っていくので、安心して加入いただきたい」と語り、さらに価格面での期待についても十分に理解しているとして現在公式サイトで実施している登録事務手数料3,300円を無料にする特典を紹介し、「ぜひこの機会にバリュープラスをたくさんの方にお試しいただき、評価していただいて、今後のバリュープラスのサービス向上に役立てていきたい」とまとめた。
質疑応答では、ユーザーからの期待に挙げられていながら取り組みについて言及のなかった「アプリによる通信量・料金の確認や変更」「eSIM」についての質問があったが、アプリについては「ニーズがあることは把握している」(亀井氏)ものの、現時点でアナウンスできることはないとの回答。現在でもマイページで通信量の確認やプラン変更ができるので、今のところはそちらを利用してほしいとのことだった。eSIMについてもキャリアからのeSIM提供についてのアナウンスを待っての検討となるという。
また本説明会と同じ7月15日に発表のあったLINEMOのミニプランについては、バリュープラスのほうが低料金で、繰り越し可能/通信量プレゼントなどの機能といったアドバンテージを挙げ、「十分闘っていける」(神山氏)という見解を示した。