プラススタイルが、公道を走行できる電動スクーター「Free Mile Plus」の販売を6月15日に開始しました。近ごろ流行っている電動キックボードよりも安全性能や快適性能、走行性能をワンランク高めたのが特徴で、長い距離もストレスなく走れる実用的な電動スクーターに仕上がっていると感じました。

  • 公道を走行できる電動スクーター「Free Mile Plus」。一見すると普通の電動キックボードのように見えるが、さまざまな安全&快適の工夫が盛り込まれている。販売価格は、バッテリー10Ahタイプのモデルが139,000円、13Ahタイプが149,000円(いずれも販売記念キャンペーン価格)。右は開発を手がけたクリエイティブジャパンの三本茜さん

長距離乗っても疲れにくい工夫、高い安全性も確保

Free Mile Plusは、日本の公道を走行することを前提にオリジナルで開発した電動スクーター。販売価格は139,000円から(バッテリー10Ahタイプ、販売記念キャンペーン価格)と安くはないものの、その分だけ安価な電動キックボードにはない工夫が多く盛り込まれています。

  • Free Mile Plusはブラックとホワイトの2色を用意。ホワイトモデルは真っ白というわけではなく、一部のアクセントカラーがホワイトになる

まず挙げられるのが、公道を走行するために必要な装備がしっかり備わっている点です。LEDを用いたメーターパネル、ウインカースイッチ、前後ウインカー、テールランプ&ブレーキランプ、ヘッドライト、電子フォン、バックミラーなどを標準で搭載しています。いずれも“後付け感”がないだけでなく、ウインカーは人気の流れるLEDウインカーを採用するなど、満足度は高いといえます。

  • フロントにはバー状のウインカーを搭載。ブレーキハンドルは一般的な自転車と同様の構造で、前輪と後輪を独立して制動できる

  • 鍵はオーソドックスなタイプを採用。バッテリーボックスの鍵が別に付属する。スマホとの連携機能は持たない

  • メーターパネルはカラーLEDで表示する。明るい屋外でも見やすい

  • アクセルは右手のハンドル部に搭載。原付スクーターと同じ感覚で操れる。赤いボタンは最高速度を3段階で切り替えるボタンだ

  • リアにはテールランプや反射板、ナンバープレートを装備。ドロよけもしっかり備えている

長距離でも疲れずに走行するための装備を充実させたのも特徴です。1つが、本体の左右に足を乗せるペダルを搭載したこと。開発を担当したクリエイティブジャパンの三本茜さんは「両足を前後にずらして乗るスタイルの電動キックボードは疲れやすく、長距離を走るのには適していません。いざ買っても、通勤や通学など自分の用途では厳しかった、と後悔するケースが少なくないんです」と語ります。

  • ボディの左右側面に足を乗せるペダルを搭載。耐荷重は約120kgと、かなり大柄な人でも大丈夫

さらに、着脱式のサドル(座面)が標準で付属し、立った状態のスタンディングポジションだけでなく、サドルを取り付けてゆったり座っての運転もできるようにしました。サドルは工具不要で脱着できるので、その日の気分や用途に応じてサッと切り替えられます。

  • サドルなしの状態(左)とサドルを装着した状態(右)

  • サドルなしの状態。軽快さは優れるが、重心が高めになるので、慣れないうちは結構疲れる

  • サドルを取り付けて座った状態。一般的なスクーター感覚でゆったりと乗れる

三本さんが注力したのが高い安全性の確保で、このジャンルの製品では珍しく「前後ディスクブレーキ」「前後サスペンション」「10インチの大口径タイヤ」を採用しています。

特にこだわったのが、安全性に直結するブレーキです。「多くの電動キックボードは電気ブレーキや電磁ブレーキを採用していますが、これらはモーターの電気を止める役割しかなく、坂道や電源オフ時は止まらない欠点があります。あらゆる場面で十分な制動性能を確保するには、機械式のブレーキが必須だと考えます」(三本さん)とし、制動性能が高く消耗の度合いが外見から確認できるディスクブレーキをおごったそうです。

  • 前後輪ともに太いタイヤとディスクブレーキをおごっている。フロントタイヤにはサスペンションも見える

  • 後輪の近くにもサスペンションをデュアルで搭載。乗り心地のよさを徹底的に追求している

バッテリーの充電は、Free Mile Plusに電源ケーブルを接続して充電するほか、バッテリーを取り外して自宅などでも充電できるように工夫しています。また、本体は安全ロックを外すとハンドルバーが倒せる構造になっており、クルマなどに載せて運びやすくしました。

  • 着脱式のバッテリーは中央部に搭載。バッテリーを格納したままでも充電できる

  • バッテリーを取り外した状態でも充電できるので、複数のバッテリーを持っていれば充電中で乗れない時間が短縮できる。バッテリーの充電時間は約5~6時間

さらに注目したいのが、外装の部品はすべてワンタッチで取り外しや交換ができる構造にしていること。もし、ウインカーなどの部品が破損した場合でも、車体を修理工場などに持ち込む必要がなく、部品を取り寄せるだけで自分で簡単に修理できます。

  • さまざまなパーツはユーザーが取り外しや交換ができるよう工夫している

パワフルでも乗り心地はスマート、サドルの存在がありがたい

実際にFree Mile Plusに乗ってみました。第一種原動機付自転車の保安基準に適合するため、走行するには原動機付自転車のナンバープレートを取得し、自賠責保険に加入する必要があります。さらに、乗車時にはヘルメットの着用や免許証の携帯も必須。確かに手軽さには欠けますが、その欠点を補ってあまりあるほどの快適さが味わえました。

右手のアクセルをひねると十分な加速とともに走り出し、周囲のクルマの流れに乗って快適に走行できました。上り坂の走りもパワフルで、後続のクルマに迷惑をかける心配もなさそう。サスペンションと大口径タイヤのおかげかガタガタとした不快な振動は抑えられ、タイヤが大きいことから路面の凹凸にタイヤを取られることもありませんでした。ちなみに、本体右手のスイッチで最高速度を「15km/h」「30km/h」「45km/h」の3段階で切り替えられます(原動機付自転車の制限速度は30km/h)。

  • 海外で乗った電動キックボードと比べて、圧倒的にスムーズな乗り心地だった。パワー不足も感じなかった

個人的には、スタンディングスタイルは微妙に中腰になるので足が疲れるうえ、重心が高くなってやや不安定になるため、サドルを取り付けて座った状態でリラックスして乗れるのが頼もしいと感じました。座った状態ならば、30~40分の長い移動もできそうです。最大航続距離は、10Ahバッテリーが約30km、13Ahバッテリーが約40kmとなります。

気になったのは、ウインカーを消す際はウインカーレバーをわざわざ中央に戻す必要があること。多くのスクーターのように、レバーを押し込めばニュートラルに戻る機構がほしいと感じました。また、目線が高くなるスタンディング時はバックミラーがほぼ用をなさなくなる点も気になりました。

安全性や快適性が高く、1回のフル充電でかかる電気代は約11円とランニングコストも最小限に抑えられているFree Mile Plus。スマート家電を手がけるプラススタイルが取り扱うだけに、物理的な鍵ではなくスマートフォンを用いたロック解除機能や、万が一の盗難時に現在地をスマートフォンで参照できる機能など、イマドキの機能が欲しかったかな…とも感じますが、幅広い層の人が安心して乗れる電動スクーターだと感じました。

  • ハンドル部分が折りたためる構造なので、クルマへの積載もらくらく。ただ、重量が約30kgほどあるので、2人がかりで持ち上げる必要がある