世界約30カ国で電動モビリティのシェアサービスを展開するLimeが、4月23日に発表会を開催。代表取締役社長のテリー・サイ氏が登壇し、日本展開の現状と今後の戦略を説明しました。
立ち乗りキックボードを廃止、ポート連携でより一層使いやすく
Limeは約30カ国で展開する大手シェアマイクロモビリティ企業で、2024年8月に日本へ上陸。当初は立ち乗りキックボードと着座式スクーターの2種類で東京都内6区からサービスを開始しました。
今回、車両ラインナップをリニューアル。立ち乗りキックボードを廃止し、着座式モビリティ「Limeラクモ」と、新たに加わる電動アシスト自転車「Lime Bike」の2軸構成へと刷新しました。
現在は東京16区、横浜、那覇、石垣島へとエリアを拡大しています。ポートは現在1,300カ所以上に達していますが、サイ氏は「まだ十分とは言えない」と述べ、国内外の利用者がアクセスしやすい環境を整える意向を示しています。
同日に発表した「HELLO CYCLING」とのポート連携や、三井不動産リアルティが手掛ける複数ブランドのモビリティ乗り入れポート「マルチモビリティポート」への参画など、パートナーと連携したポート拡大を継続していく方針を示しました。今後は年内に1,000台規模の車両増加も目標として掲げています。
個人の体験として、モビリティシェアサービスを使いたくても、目的地付近にポートがなく利用をあきらめる、といった状況に何度か陥ったことがありました。パートナー連携によって、Limeがユーザーにとって使いやすいサービスに育っていくことを期待したいところです。
日本での使いやすさを追求した「Lime Bike」、チャイルドシート対応も視野
今回日本市場に投入するLime Bikeの設計にあたり、サイ氏は3つの原則を掲げました。「Design to Last(長く使い続けられる設計)」「Design for Upgradability(モジュール化による将来的な機能拡張への対応)」「Design to Minimize Unique Parts(独自パーツの最小化)」です。これらの原則のもと、従来は数週間に留まっていた車両寿命を5年以上に伸ばすことに成功したといいます。
具体的な改良点として、コックピット上に適正駐車を示す「OK TO PARK」表示を設けたほか、ワンタッチで使えるスマートフォンホルダー、人間工学的に持ちやすいハンドル形状を採用しました。タイヤは従来機種の26インチから20インチ径へと小径化しつつ、幅2.4インチの太いタイヤを採用することで安定性を確保しています。
サドルはワンタッチで高さ調整ができる機構とし、身長150cm台から190cm台まで対応します。また将来的には後部への追加カゴやチャイルドシートの装着にも対応できる設計となっており、ユーザーの利用パターンに応じたオプション追加も検討中です。
Lime Bikeの車体サイズについては、パートナー企業として今回の本格参入をサポートした、HELLO CYCLINGの古田社長が補足。当初Limeから提案された自転車の車体はより大型・重量のあるものでしたが、日本での運用を踏まえてオペレーション上の課題(運搬の困難さ)を解消するため、現在のサイズへ小型化・軽量化を実現したと説明しました。
月額999円のサブスク「LimePrime」を開始、1回20分までなら90円
新料金プランとして本格展開する「LimePrime」は、月額999円のサブスクサービス。通常発生する基本料金(100円)が無料となり、1回20分まで90円で何度でも利用できます。5分以内の短時間利用なら45円、20分を超えた場合は1分あたり21円が加算されます。
また、車両の事前予約は通常10分前から行えますが、サブスク会員は30分前から行えるようになりました。解約はいつでも手数料なしで行えるほか、申し込みはLimeアプリから完結します。
車両構成についてサイ氏は「Limeラクモが主軸となる。運動したいときや風を感じたいときにLime Bikeを選んでいただく、という使い分けを想定している」と説明。Lime Bikeの初期設置台数はLimeラクモより少ない見込みで、現在のLimeラクモ稼働台数は3,500台以上となっています。
ルール違反の歩道走行に警告も、ふたつの技術で安全性を強化
安全技術については、Lime 日本政府渉外担当 井上祐輔氏が詳細を説明しました。井上氏はGPSを用いたジオフェンシング技術とBluetoothビーコンによる適正駐車システムの現状を紹介した上で、今回新たな技術を2点公開しました。
1つ目は「Lime ロケーションエンジン(LLE)」で、車両の位置情報精度を大幅に向上させる仕組み。これはLime Bikeに適用され、従来のジオフェンシングなどの効果向上を狙います。
2つ目は「Lime ビジョン」と呼ばれる歩道走行検知システムで、Limeラクモに適用されます。車体に搭載したカメラが道路状況を継続的に学習し、AIが歩道走行を検知した際にアラートを作動させます。継続して歩道を走行した場合は繰り返しアラートが発報される仕組みです。
囲み取材でサイ氏は、4月から施行された青切符制度への対応として、アプリ内でのポップアップ警告や乗車前のセーフティクイズなど複数の施策を講じていることも説明しました。
身長150cmでも乗りやすい、Lime Bikeに触れてみた
発表会後、本来であれば試乗会が行われる予定であったものの、あいにくの天気で中止に。とはいえ展示機には触れてOKとのことでしたので、少しまたがってきました。
本体が企業カラーのライムグリーンで非常に鮮やか。スタイリッシュなデザインで、重心が低いため安定感は高いように思います。
観光利用でも生活利用でも、必要なのは荷物の運搬。カゴは大きいほうがよいということで、前かごにライトを組み込んで深さを確保しているのが印象的でした。
これは筆者の体験ですが、シェアモビリティを使うとき、大半のユーザーが自分(154cm)より背が高いため、サドルをその都度下げて使うのが地味に大きなストレス。しかも調節レバーがさびついて回りにくいこともあり、そうなると調整に時間を取られてしまいます。
そうしたユーザーの声に対して、サドル調整をレバーの上げ下げのみで行えるようにしたとのこと。非常に軽い力で上げ下げできるので、自分の身長に合わせた乗車が行えそうです。
フレームの形状がV型なので、足を高く上げなくても乗り降りできるのも低身長ユーザーとしては高評価。実際に走って体験したいところでしたが、またの機会を伺いたいところです。
一度は投入した立ち乗りキックボードを廃止し、グローバルモデルをそのまま導入するのではなく、日本の環境に合わせた電動アシスト自転車を新たに設計したLime。今回のリニューアルからは、日本市場での定着を見据えた姿勢がうかがえます。この判断が今後の利用動向やサービス拡大にどのような影響を与えるのか、引き続き注目していきたいです。


















