2021年5月以降、電動キックボードに乗る人の姿を街で目にする機会が増えそうです。

Luupは4月23日より、電動キックボードのシェアリングサービス(実証実験)を都内6区で開始しました。政府の特例措置を受けてスタートした「車道を走ることができる」「ヘルメットの着用が必須ではない」国内初のサービスとあり、注目を集めています。

  • 電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP」

どのようなサービス?

Luupは昨年(2020年)5月から、小型電動アシスト自転車を用いたシェアアプリ「LUUP」を提供してきました。同社が第2弾として仕掛けたのが、今回の電動キックボードです。

それではLUUPのサービス概要について、簡単に紹介しましょう。走行できるエリアは渋谷区、新宿区、品川区、世田谷区、港区、目黒区の全域。利用料金は110円(初乗り10分、それ以降は16.5円/分)で、決済方法はクレジットカード払いとなります。

都内に約300カ所あるLUUPのポートのうち、現在は約200ポートで電動キックボードの乗り降りが可能(ポート数は順次拡大予定)。利用するには、アプリに運転免許証を登録し、かつ走行ルールの確認テストに満点合格でパスする必要があります。

今回の実証実験では、電動キックボードを道路交通法上の「小型特殊自動車」として扱います。よって、小型特殊自動車を運転できる運転免許証が必要です。一般的な普通自動車免許や普通二輪免許ならOKですが、原付免許はNGです。

  • LUUPのポート。駅前のほか、住宅街や飲食店などにも多く設置されている

次に、乗り方について。はじめに地面を蹴って初速をつけてから、ゆっくりとアクセルをふかすと電動で加速します。ハンドル周りにはバックミラー、ウィンカースイッチ、クラクションボタンなどを搭載。止まるときは手元のブレーキを使うか、地面に足をついても止まることができます。なお道路交通法との絡みで、電動キックボードの最高速度は15km/hに制限されています。

  • 電動キックボードのハンドル周り。スマホスタンドもついている

自転車のように「またぐ」「こぐ」必要がないため、気ままな服装で利用できるのもポイント。スカート、スーツ、少しヒールのついた靴などでも安全に走行できます。電動キックボードでスイスイ気持ちよさそうに走る様子を、動画にまとめてみました。ご覧ください。

電動キックボードでスイスイ気持ちよさそうに走る様子

ターゲット層は? 運用方法は?

Luupの広報に話を聞くと、ボリュームゾーンは学生、そして若いビジネスパーソンとのこと。主に短距離の移動手段として、“チョイ乗り”を想定しています。ちなみに土日だと、デートで使うカップルもいるんだとか。そんなエンタメ要素も感じられるサービスです。

  • 地面と近いため、危険を感じたら足をついてすぐに止まることが可能。自転車と同じくらいの速さで坂道もしっかり登れる。デートにも使ってみたい?

ところで、ポートに充電設備が見当たらないことが気になりました。これについて聞くと「夜間に巡回チームが街をまわり、バッテリーの交換、メンテナンス、電動キックボードの再配置を行っています」と教えてくれました。

利用者はスマホアプリから機体ごとの充電状況も確認できます。なお、満充電で45kmくらいの距離を走れるとのことでした。

  • 底面に交換式のバッテリーが搭載されている

現在、国内でも電動キックボードを提供する企業が増えつつありますが、実は事業者ごとに認可がおりている状況です。Luupを含む国内4社においては、ヘルメットの着用が義務から任意に緩和され、それでいて自転車レーンの走行も許可されました。

二段階右折は禁止。車線数の多い道路では、恐怖心から二段階右折をしたくなるかもしれませんが、「交通量の多い道路を右折する場合には、Luupでは交差点で電動キックボードを一度降り、横断歩道を押し歩いて渡ることを推奨しています」とのことでした。ほか、運転上の禁止事項として以下が挙げられています。

  • 二段階右折
  • 歩道の走行
  • 2人乗り
  • 子供を背負っての運転
  • 駐車が禁止されている道路での駐車(駐車違反で反則金の対象)
  • 運転中の携帯電話の使用
  • 飲酒運転

ちなみに、交通量が著しく多い道路については安全性の観点から、Luupが自主的に走行禁止道路としています。

「走行禁止道路はアプリで確認可能できるほか、利用者にはアラートを表示して迂回を促す仕組みです。アラートを無視して走り続ける利用者には、紐付いたアカウントを利用停止にするなどの対応を考えています」と説明していました。

自転車とも原付バイクとも異なる「小型特殊車両」に位置付けられているLUUPの電動キックボード。今回のサービス提供で得られた知見やデータを、今後の電動キックボードに関するルールづくりにつなげていきたいとしています。

  • リヤにはナンバープレートも取り付けられている

現在の課題と今後の展開

続いて、Luup代表の岡井大輝氏にも詳しい話を聞きました。マイクロモビリティ(電動・小型・1人乗り)のシェアリング事業による新しいインフラを創造すべく2018年7月に創業した同社。自身が会長を務めるマイクロモビリティ推進協議会を通じて、これまで政府や自治体とともに、国内の30カ所前後にて実証実験を繰り返してきたと説明します。

  • 電動キックボードの乗り降りが可能なポートにて笑顔を見せる、Luup代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏

そのうえで「サービス開始から2日間でアプリをダウンロードしてくださった方は5,000人にのぼりました。国内4社で半年間、実施してきた実証実験で得られたデータが、わずか4日間で取得できています」と説明。市場の期待感の大きさに、あらためて驚いていました。

利用者から寄せられている声には「快適」「疲れない」といったポジティブなものもあれば、「車道を走るのは、ちょっと怖い」というものも。岡井代表は「今回のサービスで『時速15キロは遅くて逆に危ない』という声が集まれば、今後、政府と議論する材料になります。適切なスピードを見つけていきたい」との見方を示します。

現在、街中に展開するLUUPの電動キックボードは100台規模。今後はこれを増やしていき「(年内には)交差点で当然のように1~2台を見かけるまでにしたい」(岡井氏)と話します。

さらに「街中を駅前化するインフラをつくる、という目標を掲げています。駅徒歩10分の物件と、LUUPの電動キックボードが設置されている駅徒歩20分の物件が同じ不動産価値を持つくらいにできれば」と岡井氏。今後の展望としては、2023年あたりを目処に第3弾のモビリティを提供したい考えです。

「若者が立ち乗りすれば20km/hくらい、高齢者が乗れば6km/hくらいのスピードが出せる機体を提供して、世代や地域を問わずに展開していければ」と話していました。

  • 年内には、街中の交差点で必ず見かける存在になる?(画像提供:Luup)

  • ユーザーの年齢に応じて最高速度が変化、椅子が起き上がるような第3弾のモビリティも構想している