日本マイクロソフトは2021年5月27日、米国時間2022年6月15日をもってサポート終了を迎えるInternet Explorer 11(以下、IE11)に関する説明会を開催した。Microsoftは米国時間5月19日にIE11のサポート終了を公式ブログで発表しているが、「大きな問題報告や苦情は日本を含めグローバルで届いていない」(日本マイクロソフト Microsoft 365ビジネス本部 製品マーケティング部 プロダクト マーケティング マネージャー 春日井良隆氏)とのことだ。
EoS(End of Support)の前に、2021年8月が最初の山
すでにChromiumベースのMicrosoft Edgeが標準WebブラウザーとなったWindows 10にとって、IE11は不要な存在に見える。だが、社内のイントラネットがIE11を前提にしている場合や、IE11以外では動作しない基幹システム用アプリを使っているの場合、IE11のサポート終了はIT部門の負担増になりかねない。2021年8月17日にはMicrosoft 365およびMSHTML(Trident)コンポーネントを使用するアプリでのサポートを終了。そして2022年6月15日にはIE11の提供を終える(日付はすべて米国時間)。
ここで注目したいのが、IE11サポート終了の対象となるOSと、サポート終了対象外となるOS&機能。基本的にWindows 10バージョン20H2以降では、そのOS上で動くIE11はサポート終了となる。
少なくとも2029年までサポートを継続するとしているのは、Microsoft EdgeのIEモード。IEプラットフォーム(MSHTMLコンポーネント使用)を含めて、各OSのライフサイクル終了までサポートされる。対象OSは、Windows 7 ESU(拡張セキュリティアップデート)、Windows 8.1、Windows LTSC、Windows Server、Windows 10 Insider Preview(バージョン21H2)だ。日本マイクロソフトは、「IEモードは(OSのライフサイクルに伴い)少なくとも2029年までサポート対象のOSで利用可能。終了時期は1年前に告知する」(日本マイクロソフト Microsoft 365ビジネス本部 製品マーケティング部 部長 岡寛美氏)と説明する。
Windows 10 Home・Pro・Enterprise・EducationといったSAC(Semi-Annual Channel:半期チャネル)の各エディションは2025年10月14日がサポート終了日(参考1、参考2)。OSと機能(IE11)のサポート期間にすれ違いが発生してしまうが、日本マイクロソフトは「今後改めてアナウンスする」(春日井氏)とした。
では、我々はどのような手段を採る必要があるのだろう。日本マイクロソフトは、個人ユーザー、法人ユーザー、コンテンツを提供するサービス事業の3種類に分類し、個人は利用中のWebブラウザー、法人は組織の標準Webブラウザーを、IE11から別のWebブラウザーに切り替える必要があるとする。
IE11を推奨するサービス事業者も、対応Webブラウザーの一覧からIE11を取り除かなければならない。対応しないサービス事業者への働きかけは基本的に行わないが、「影響力が大きいWebサイトやアプリは個別対応する。また、今回の発表会やSNSを通じて積極的に情報提供に取り組む」(春日井氏)。移行済みのWebアプリに関しては公式ドキュメントでまとめている。
日本マイクロソフトは「移行先はMicrosoft Edgeを選択してほしいが、我々(が提供するWebブラウザー)はChromiumベースのMicrosoft Edgeに一本化する」(春日井氏)と、IE11利用者へメッセージを送った。Microsoft Edgeを使用することで「ユーザーの使い勝手やWeb体験が向上し、IE11でしか動作しないWebアプリ(やイントラネット)はIEモードで対応しつつ、(IE11の提供終了前に)HTML5に代表されるWeb標準規格に準拠した仕様変更を」(春日井氏)推奨している。
MSの移行支援施策とIEモードの利用方法
主に法人ユーザー向けだが、日本マイクロソフトはMicrosoft Edge展開支援として「App Assure」「Microsoft FastTrack」「ユニファイドサポート」と3つの施策を用意している。アプリの互換性などに対応するApp Assureは厳密にMicrosoft FastTrackプログラムの一部だが、「IE11やMicrosoft Edge、MicrosoftがサポートするバージョンのGoogle ChromeでWebサイトおよびアプリで、互換性問題が発生した場合は展開準備ガイドを追加料金なしで提供する」(日本マイクロソフト Microsoft 365製品チーム プログラム マネージャー リード 范慧儀氏)。
Microsoft 365を追加料金なしで展開するサブスクリプション特典のMicrosoft FastTrackは、Windows 10 Enterpriseを150シート以上展開している法人ユーザーであれば、本プログラムが自動的に拡大して同じく追加料金なしでサポートを受けられる。また、大企業向けサービス提供型サポートのユニファイドサポートは有償ながらも、契約済み企業は追加料金なしに日本マイクロソフトのサポートを受けられる。同社は「3つの柱でMicrosoft Edgeの展開を支援」(范氏)するとした。
Microsoft Edge内でIEの動作を再現するIEモードは、「レンダリングを担うMSHTMLコンポーネントを内部で実行し、ActiveXコントロールやドキュメントモードなどに対応して、IE11との互換性を維持している」(日本マイクロソフト Microsoft 365製品チーム プログラム マネージャー 草場康司氏)。
具体的には、ドキュメントモードやエンタープライズモード、ActiveXコントロール(JavaやSilverlight)、BHO(ブラウザーヘルパーオブジェクト)、IE11のセキュリティゾーン設定と保護モードに関わる設定およびグループポリシー、デバッグツール「IEChooser」経由で起動するIE用F12開発者ツール、Microsoft Edgeの一部拡張機能をサポート。IEツールバーやナビゲーションメニュー、IE11もしくはMicrosoft EdgeのF12開発者ツールはサポート対象外となる。
IEモードを利用するには、既存の「Enterprise Mode Site List Manager」ツールが必要だったものの、現在はグループポリシーを変更すると、Microsoft Edgeに組み込まれた「エンタープライズサイトリストマネージャー」が使用可能だ。IEモードは、対象となるWebサイトなどの情報をサイト一覧に記述する必要がある。だが、IT部門の負担を軽減するために「その他のツール」に「サイトをInternet Explorerモードで開く」が追加された(要グループポリシー変更。もしくは要起動オプション)。「アプリ開発チームなどテスト担当者が個別に確認できる」(草場氏)。
なお、サイト一覧の編集機能はMicrosoft Edgeの組み込み版が優先され、Enterprise Mode Site List Managerツールの単独更新は今後行われない。日本マイクロソフトは参考資料として、「IEおよびEdgeサポートチームが直接発信するブログなどを参考にしてほしい」(草場氏)と紹介しつつ、IEモードを使うためのガイド参照も合わせて推奨した(個人ユーザー向け、法人ユーザー向け)。