すごいスタートアップベンチャーが登場した。その名は、ツインカプセラ。茨城県つくば市を拠点に2021年3月8日に設立されたスタートアップベンチャーだ。彼らの強みはなんといっても“超”断熱保冷技術。

2018年、彼らは宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに、独自に開発した再突入カプセルにより国際宇宙ステーション(ISS)から宇宙実験サンプルを保冷状態で回収することに成功している。すでに大きな実績を有しているベンチャーだが、どのようなベンチャー企業なのか、超断熱保冷技術は、どのような技術で、どのような分野で活躍しているのか、そんな話題について紹介したいと思う。

“超”断熱保冷技術のツインカプセラとは?

2021年3月8日につくば市を拠点として設立されたスタートアップベンチャー、ツインカプセラ。 まずはメンバーを紹介しよう。

CEOは宮崎和宏氏。1999年に宇宙開発事業団(NASDA:現在のJAXA)に入社。実は、宇宙ステーション補給機(HTV)「こうのとり」搭載小型回収カプセルプロジェクトにて、真空二重断熱保冷容器の開発やペイロードインターフェース・サンプル輸送等の開発を担当してきている。宮崎氏は、他にもH-2AロケットのLE-7A/LE-5Bエンジン・推進系システムを開発した経験をもつすごい人物だ。

  • CEOの宮崎和宏氏

    JAXAのHTV搭載小型回収カプセルプロジェクトのメンバーとして活躍していたCEOの宮崎和宏氏(出典:ツインカプセラ)

CTOは、畠中龍太氏。2008年JAXAに入社。HTV搭載小型回収カプセルでは、真空二重断熱保冷容器とカプセル全機熱制御系の開発を担当するなど、一貫して熱関連業務に従事してきているエキスパートだ。

メンバーの実績を拝見すると、かなり“超”断熱保冷技術に強みを持つメンバーで構成されているベンチャーであることがわかっていただけたと思う。

そして、2021年5月17日、JAXA発ベンチャーとして認定されている。JAXA発ベンチャーとして認定される前に彼らは、すでにすごい実績をあげている。次章で紹介したい。

すでに実績がある国際宇宙ステーションの宇宙実験サンプルの保冷回収技術とは?

彼らは、すでに2018年、JAXAとともに、独自に開発した再突入カプセルによりISSから宇宙実験サンプルを保冷状態で回収することに成功している。これにより、ツインカプセラが開発した再突入カプセルの断熱保冷容器が大気圏再突入中も含めた熱環境において保冷技術を有することが証明されたのだ。

もう少し詳しく見てみよう。この再突入カプセルは、こうのとり7号機がISSを分離する前に、こうのとり7号機の与圧部入り口に取り付けられた。こうのとり7号機が、ISSを分離し、大気圏突入前にカプセルを放出させ大気圏へ突入。その後、パラシュートでカプセルを降下させた後、海上で回収したという。このカプセルの使用電力はゼロにもかかわらず、サンプルを保冷するため真空二重断熱容器と保冷剤を搭載し、サンプルの温度変化をわずか0.3℃(5~6日の間)に抑えることができたとある。

  • ISSの宇宙実験サンプルの保冷回収に成功

    ISSの宇宙実験サンプルの保冷回収に成功(出典:ツインカプセラ)

また、他にも実績がある。茨城県「令和2年度次世代技術活用ビジネスイノベーション創出事業」において、「超高性能輸送用保冷・保温コンテナの提供」というビジネスプランにおいて、優秀プランにも選定されている

このビジネスプランは、上記のISSの宇宙実験サンプルの保冷回収技術を応用したバイオメディカル分野での課題解決や、超小型にも対応した個別・小分け対応の冷凍輸送に対応できる点が評価されているようだ。

このように、ツインカプセラは、さまざまな取り組みを実施し、成果を上げている。

バイオメディカル分野での活躍とは?

ツインカプセラでは、従来、保温・保冷を必要とする輸送プロセスにおいて、夏などの季節による外部気温の影響、保冷装置のバッテリー切れ、積み替え時の温度変化、長時間放置による温度変化といった課題により輸送品の品質保証ができなくなり、経済的な損失が出ていることにビジネスチャンスを見出した。

彼らが提供する断熱保冷容器は、温度維持時間が長い、外部の温度変動に強い、容積率が高い、 冷凍・冷蔵・常温・保温など様々な用途に対応可能、電源不要などの特徴がある。

この断熱保冷容器は、容積が1リットルから15リットル、そして重量も1kgから20kgとさまざまなサイズ、重さのサンプル、輸送品に対応できるようだ。

そして、-80℃(ドライアイス)、-20℃、4℃、20℃、36℃、その他とさまざまな温度にも対応することができるのだ。

  • ツインカプセラの断熱容器

    ツインカプセラの断熱容器のイメージ(出典:ツインカプセラ)

そして、彼らが着目している分野としては、メディカルバイオの分野が挙げられるだろう。検体、薬剤の輸送として医療機関、検査機関、製薬会社、バイオバンク、再生医療関連機関などが対象だ。ほかにも検体や薬剤を保冷・保管している医療機関、研究機関での停電時といった非常用設備としてや、ワクチンの小分け輸送や離島、僻地への輸送に使用できると考えている。

いかがだっただろうか。この国際宇宙ステーションの宇宙実験サンプルの保冷回収技術で、宇宙ビジネス分野においてはもちろんのこと、ほかの市場の課題に着目し、貢献する、ツインカプセラの今後に注目したい。