LGエレクトロニクス・ジャパンは今年の2月、LG gramシリーズの2021年モデルとして、第11世代Intel Coreプロセッサの搭載やデザインの一新でリニューアルした新製品を発売しました。ディスプレイのアスペクト比変更などもあり、2021年モデルでは14型(14Z90Pシリーズ)、16型(16Z90Pシリーズ)、17型(17Z90Pシリーズ)が登場。今回はこの中で最軽量となる14型モデル「LG gram 14」を試用したレビューをお送りします。

  • LG gram 14 オブシディアンブラック 2021年モデルを試用

14型サイズでも16:10ディスプレイ搭載で広くて快適

今年のLG gram 14で何が変わったかといえば、アスペクト比16:10のディスプレイ採用がデザインの変更と合わせて最も大きなトピックです。解像度は縦に長いWUXGA(1,920×1,200ドット)になっており、コンパクトな14型ながらしっかりとした広さの表示領域を確保。DCI-P3を99%カバーする高い色再現性を備え、液晶パネルメーカーらしいクッキリとした画面表示が得られます。

  • 光沢仕様のディスプレイはなかなか狭額縁。下辺のロゴ部が詰まって縦に広くなっています

  • 上からLG gram 14型モデル、16型モデル、17型モデル。14型のフットプリントはかなり小さいです

  • 開いて重ねたところ。

ボディのデザインにも大きく変更が加えられており、これまでの旧モデルで採用されていた丸みを帯びたデザインからエッジを強調したシンプルなものに改修。素材にはマグネシウム合金を用いた他、MIL-STD 810G耐久性基準を7項目クリアする高いタフネスを備え、999gという軽さで"グラム"に収まっているところがポイントです。

  • 重量は公称999gとありましたが、測ってみると975gと一回り軽い数値に

  • 片手でスッと持ち上がる軽量さ。重心が偏っているということもありません

インタフェースには映像出力やデータ転送、給電に対応するThunderbolt 4×2、HDMI 2.0b、USB 3.2 Gen2×2(Type-A)を搭載。最新規格をサポートしつつ、これまで使ってきた周辺機器もアダプター無しで利用できます。

  • 左側面。最新プロセッサで対応するThunderbolt 4をしっかり2つ搭載し、4K/60Hz出力に対応するHDMI端子も用意しています

  • 右側面。奥からセキュリティロック、USB 3.2 Gen2×2、microSDカードスロットを備えます

外観やデザインで気になったことを挙げるとすると、ヒンジ部や天板が妙に柔らかいことが気になりました。ヒンジが柔らかいと片手でディスプレイを開くことができて便利ですが、タイピングで少し揺れてしまうのは少しマイナスポイント。天板はMIL-STD 810Gの圧力試験をクリアしているので耐久性に問題はないと思いますが、指で押すと少しペコペコしています。

一方でキーボードはかなり快適。おそらくパンタグラフ式を採用しており、パタパタと軽快にタイピングを行うことができました。キーピッチは約19mmでゆったりとしていますが、エンターキー周辺は少し詰まっていてやや狭め。BackSpaceキーの上には指紋認証センサーを兼ねる電源ボタンを備えており、Windows Helloでの素早いサインインに対応します。快適に操作できる大きめのタッチパッドは中央寄りにレイアウトされていて、左手が当たる心配もありません。

  • 良好なレイアウトのキーボード。両サイドに空いているスペースがあるので、次のモデルではここにスピーカーを載せてほしいです

  • 上キーの横にアキがある十字キー採用

  • 指紋認証センサーを兼ねる電源ボタンはBackSpaceキーの上ですが、やや固めで誤操作に配慮しています

16GBメモリ搭載モデルもぜひ出してほしい

それでは、各種ベンチマークテストで性能をチェックしていきましょう。試用機はIntel Core i5-1135G7、LPDDR4x 4,266MHz 8GBメモリ、M.2 NVMe 512GB SSDを搭載しており、OSはWindows 10 Homeをインストールしています。第11世代Intel Coreプロセッサの搭載でIntel Evo Platformに準拠しており、高い性能と高速なスリープ復帰、十分なバッテリー性能などが保証されています。

しかし気になるのは、メモリが8GBしかないところ。そもそも14型モデルには16GBメモリ搭載モデルやCore i7モデルがラインナップにないので、よりパフォーマンスが必要な場合は大画面モデルを購入するということになります。重量を999g以下に収めるために厳しい設計を強いられたのかもしれませんが、軽さのためとはいえ性能を妥協せず両立してほしかったところ。次のモデルではぜひ軽量ハイエンドな製品を期待したいです。

  • 14型にはCore i7搭載モデルや16GBメモリ搭載モデルがない

まずはベーシックかつ総合的な指標として、PCMark10、CINEBENCH R23、Passmarkでスコアをチェック。ちょうど同じCPUを搭載しつつ、LG gram 14よりも多い16GBメモリを搭載するパソコン工房のノートPC「LEVEL-14FH057-i5-UXSX(以下、LEVEL-14)」でPCMarkを計測したスコアがあるので、こちらの結果と比較してみましょう。

  • PCMark

  • CINEBENCH R23

  • PassMark

PCMark10の総合スコアは「4,143」という結果に。LEVEL-14のスコアは「4,552」となっているので、だいたい約1割前後差をつけられた格好です。1つのタスクをこなす上で不足のないパフォーマンスではありますが、実際にZoomでビデオ会議に参加しつつブラウザを使い、Officeアプリケーションを使うとなるとやはりメモリは物足りない印象でした。

  • 3DMark「Night Raid」

  • 「ドラゴンクエストX」ベンチマークテスト

続いて3DMark「Night Raid」と「ドラゴンクエストX」を用いてグラフィック性能を確認。本格的なゲームプレイには心もとない数値ですが、第11世代Intel Coreプロセッサが搭載するIntel Iris Xe Graphicsの性能は以前のものとは別格。細かい操作感の快適さは、第10世代Intel Core搭載モデルからの買い替えでもはっきりと体感できるものになっています。

プリインストールアプリにはLG独自のものがいくつか導入されており、デスクトップには「LG Control Center」のショートカットが用意されていました。これには画面の明るさや色温度の調節を行えるほか、電源管理メニューとして満充電を80%までに制限する項目も用意。冷却モードを「低ノイズ」「推奨」「性能」の3つから選択でき、用途に応じたカスタマイズを行えます。

  • 「LG Control Center」

ファンの静かさも嬉しいところで、継続して大きな負荷がかかっていてもあまり排気音は気になりませんでした。静かな部屋では「シュー」という小さな音が聞こえますが、オフィスではほぼ聞こえないレベルです。

バッテリー性能はさすがというべきか、PCMark 10のModern Officeモードで15時間42分という驚異的なスタミナを実現しています。公称の約37時間という数値には届きませんが、JEITA2.0基準のテストではやや長めの結果になりがちです。ちょうど約半分くらいが実際のユースケースに即したものに近くなるという印象なので、どちらにせよ一日中電源のない場所で使っても全然余裕があると言えそうです。

  • 15時間42分というかなり長いスタミナ性能で電源の確保はほぼ気になりませんでした

ビジネス向け軽量14型ノートPCの佳作

LG gramといえば、言わずとしれた軽量ノートPCの代表格。インタフェースにUSB Type-AやHDMIを備えて周辺機器の接続性を確保し、一日中電源のない場所で使用できる十分なバッテリーを搭載。マグネシウム合金ボディを採用してしっかりした堅牢性を備えつつ、持ち運びもつらくない軽量モデルとして、ビジネスユースに最適な1台と言えそうです。

余談ですが、実は現在16型と17型もお借りして使用中。このうち最もハイパワーなIntel Core i7-1165G7、LPDDR4x 4,266MHz 16GBメモリを搭載するLG gram 17(17Z90Pシリーズ)を使い倒しているので、近日中に詳細なレビューと使用感についてお届けしようと思います。

  • リュックに入れても重さを感じない軽快なノートPCでした