定番の国産スマホ「AQUOS sense」シリーズから新モデル「AQUOS sense4」が登場し、2020年秋に発表されたAQUOS senseシリーズは“三兄弟”になりました。この記事ではAQUOS sense4のSIMフリー版「SH-M15」の使い勝手をレビューしていきます。

  • AQUOS Sense4 SH-M15。店頭実売価格は36,000円前後

AQUOS senseの“三兄弟”をおさらい

2020年冬から2021年春にかけて発売されたAQUOS senseシリーズは“三兄弟”でした。というのも、この時期に登場したAQUOS senseシリーズには定番モデルの「AQUOS sense4」、5G対応の「AQUOS sense5G」、「AQUOS sense4 plus」という、大きく3つのバリエーションが存在するのです。

このうち「AQUOS sense4」と「AQUOS sense5G」は外観も性能面もほとんど同等のモデル。5G通信に対応するかどうかが一番大きな違いです。携帯キャリア各社とSIMフリースマホ向けの両方で展開しています。

一方、「AQUOS sense4 plus」は大画面で映画やゲームを楽しむ人に適したモデルです。これまでのAQUOS senseシリーズで手薄だったエンタメ特化モデルといえます。

  • 左がAQUOS Sense5Gで右がAQUOS Sense4。よく見るとSense5Gはアンテナ用の樹脂素材が側面まで入りこんでいます

AQUOS sense4は「普段使い」をきっちりカバー

AQUOS sense4はどんなスマホなのか。ひと言で表すなら「必要十分を詰め込んだ日本向けスマホ」となります。

日本でよく使われている防水やおサイフケータイ、指紋認証などにしっかり対応しつつ、実売価格で36,000円前後(記事執筆時点)とお手頃な価格がその魅力です。

ちなみに、5GにつながるAQUOS sense5Gは46,000円前後と、1万円ほどの価格差をつけて販売されています。

  • AQUOS Sense4の背面はサラサラとした手触り。左上に小型のカメラエリアを備えており、全体的にシンプルです

「必要十分」の精神は、価格や性能だけでなく、その外観からも見て取れます。5.8インチと大きめなディスプレイを搭載しつつ、大きさは148×71×8.9mm。その横幅は日本で人気が高いiPhone 12(幅71.5㎜)とほとんど同じです。握るように持つにはちょっと大きめですが、SNSやWebブラウザーで見るときにはちょうど良いサイズ感でしょう。

ボディはアルミニウムの一体成型ですが、金属でイメージする冷たさはなく、手に取ってみると温かみすら感じます。これは、表面処理でサラサラとした手触りに仕上げているから。さらにボディの左右端は、とがった部分をなくすように丸められていて、これが不思議と手になじみます。

  • Webブラウザーを開いたところ

耐久性能では防水・防塵はもちろんのこと、MILスペック相当の落下試験でその丈夫さが確かめられています。

高級スマホのようなガラス素材ではありませんが、見た目に安っぽさはなく、手になじむ形状と質感に仕上げています。さらにタフネス性能もしっかり確保しているという、まさに「質実剛健」な作りです。

このアルミニウム製のボディによって、多彩なカラーバリエーションが選べるのもAQUOS sense 4シリーズのユニークなところ。SIMフリー版はライトカッパー、ブラック、オリーブシルバーの3色をラインナップしています。

さらにNTTドコモ版は「ドコモオンラインショップ限定カラー」として、AQUOS sense4ではビビッドなレッド、イエロー、ブルーの3色が登場。AQUOS sense5Gにもスカイブルー、コーラルレッド、イエローゴールドという限定カラーが用意されています。

  • ドコモオンラインショップ限定カラーは、ドコモ版のみの特徴。光沢感のある鮮やかなカラーが魅力です

「これまでのAQUOS sense」もそつなく踏襲

これまでのAQUOS senseシリーズの特徴は、AQUOS sense4/sense5Gにももちろん受け継がれています。たとえば、シャープ製のIGZO液晶ディスプレイと大容量バッテリー、指紋認証付きのホームボタンはこれまで通り搭載しています。

  • 画面下部、親指で触りやすい位置に指紋センサーを搭載

シャープのIGZOディスプレイは、同じ画面を表示している間は電池をほとんど消費しないという、省エネな液晶ディスプレイです。AQUOS sense4/sense5Gでは、このIGZOと4,570mAhの大容量バッテリーの組み合わせで、「一度の満充電で1週間の電池もち」をうたっています。

ホームボタンの位置に指紋センサーがある構造も、これまでのAQUOSシリーズを踏襲するもの。ポケットの中に入れていても上下が分かりやすく、目で見なくても取り出してロック解除までスムーズにできるのが便利です。

ハードウェア以外にも「AQUOSらしさ」はあります。長く使う上でうれしいのは「発売から2年間、最大2回のOSバージョンアップ」が保証されていること。AQUOS sense 4は発売時はAndroid 10搭載だったため、次世代のAndroid 12のバージョンアップまでは保証されていることになります(なお、2021年2月24日からAndroid 11のOSバージョンアップが提供されています)。

ちなみに、AQUOS sense5Gは発売時からAndroid 11搭載でした。「最大2回」を言葉通り受け取ると、Android 13(仮)までのOSバージョンアップが保証されていることになります。設計に共通点が多いAQUOS sense 4にも、Android 13のバージョンアップが届く可能性はありそうです。

3つのボタンに好きなアプリを割り当てられる

AQUOS sense4/sense5Gでは、細かい使い勝手の面で改善されている箇所もあります。たとえば、お気に入りのアプリをすぐ起動するための機能が豊富なところです。

  • 写真左から音量ボタン、Google アシスタントキー、電源ボタン。「Google アシスタントキー」には、Google アシスタント以外のアプリも割り当てられます

正面の指紋センサーと右側面の電源ボタンには、長押しで好きなアプリを設定できるという機能があります。また、音量上下ボタンの下にある「Google アシスタントキー」には、Google アシスタント以外のアプリも割り当て可能です。

つまり、3つの物理ボタンに好きなアプリの起動を割り当てられるようになっています。たとえばPayPayのようなQRコード決済や、TwitterやInstagramなど良く使うSNSを割り当てておくと、ストレスなく使えるでしょう。

3眼カメラで機能は充実も、画質はあと一歩

ディスプレイと並んで、スマホの重要な機能となっているのが「カメラ」。AQUOS sense4の背面カメラはトリプルカメラで、その構成は標準画角1,200万画素、超広角1,200万画素、望遠800万画素となっています(なお、Y!mobile版の「AQUOS sense4 basic」と楽天モバイル版の「AQUOS sense4 lite」は超広角カメラを省いたデュアルカメラとなっています)。

  • AQUOS sense4の背面カメラ。カメラエリア中央にモバイル非接触IC通信マークが入っています

カメラ機能はシンプルで分かりやすく、基本の操作は「シャッターボタンを押すだけ」。AIが被写体を判断して見栄えよく仕上げてくれます。撮ったものからオススメの構図を提案してくれる機能も便利です。

  • デジタルズームは最大16倍

また、動画撮影時では「AIライブシャッター」機能が便利。動画を撮るだけで、イチオシのシーンを選んで写真として残してくれるというものです。これ以外にもAQUOS sense4では、気楽に使えるカメラ機能が備わっています。

写真の仕上がりは、AI補正をオフにすると、自然な色味を忠実に再現する傾向で、薄暗い室内を含めてオールマイティに対応できます。AI機能では特に食事を撮る時に美味しそうな色味へと強調する傾向にありますが、シーンによっては強調しすぎかなと思える仕上がりもありました。

同じシャープの最上位モデル、AQUOS R5Gで撮った写真と比べると、やはり忠実な色味の再現においては一歩譲る印象です。暗所撮影では、特にイルミネーションなど明暗がくっきりした被写体について、ブレやすいが生じやすいのが気になりました。また、使い込んでいくとカメラアプリの起動に多少時間がかかる印象もあります。

GalaxyやOPPOなどカメラに力を入れる競合があるなかで、AQUOS sense4のカメラは相対的に弱い印象も受けます。とはいえ、普段使いで撮るには充分な画質で、数世代前のスマホからの機種変更なら不満を感じることは少ないでしょう。AI機能も肩の力を落として気楽に使えるものが揃っていて、「誰でも使えるカメラ」としては最適な仕上がりという印象です。

それでは、AQUOS sense4で撮影した写真の作例を見ていきましょう。記事では1,200ドットにリサイズ済みですが、画像クリックで4,000ドットの原寸大画像も表示できます。

  • 広角レンズで撮影

  • 超広角で撮影

  • 小物の撮影例

  • 光が少ない夕暮れ時でも明るく撮影できます

  • 2倍ズームで撮影。ほぼ日が落ちた夕暮れどきですが、夕焼け空が鮮やかに描写され、照明の白飛びも押さえられています

  • 食事の撮影例

5Gの格安スマホ、「今」必要なのか

AQUOS sense5GとAQUOS sense4は、5G対応を除くとほとんどの機能が共通しています。外観はアンテナ部の造形が多少違う程度で、サイズや重さもほとんど変わりません。CPUなどを含むチップセットは異なりますが、ほぼ同等の性能を有しています。両機種は1万円ほどの価格差があり、つまるところ「5Gが今必要かどうか」で選択肢が用意されている状況です。

  • AQUOS sense4の右側面、左側面

5GはMVNO(格安スマホ)でもIIJmioやmineoなどがサービスを開始しています。ただし、現状では5Gと4G LTEとのネットワーク品質の差は、特にMVNOでは気にするほど大きくはありません。

まず、5Gのエリアは2021年上旬時点では都市部のごく一部の地域に限られています。加えて、MVNOの回線ではその仕組み上、5G対応であったとしても高速になるとは限りません。なぜなら、5Gではスマホと基地局側のアンテナをつなぐ無線通信が高速になりますが、MVNOでよくある「昼間に遅くなる現象」は、その先のネットワーク設備の混雑に原因があるからです。

もちろん、将来的には5Gのネットワークのほうが高速で便利になっていきます。そうだとしても、AQUOS sense4を2年~3年ぐらい使って買い替えれば、5Gへの乗り換えは十分に間に合うでしょう。

なお、SIMフリー版の「AQUOS sense4」(SH-M15)と「AQUOS sense5G」(SH-M17)には大手キャリア向けのAQUOS sense4/sense5Gシリーズにはない特徴があります。それが「DSDV」で、2つの4G LTE回線での通話待ち受けに対応します。AQUOS sense5Gの場合、DSDV利用時も片方の回線では5Gデータ通信が可能です。

  • AQUOS sense4のSIMフリー版はデュアルSIM対応

2つのSIMカードを使う場合、microSDスロットは使えない排他仕様となっており、ストレージ容量が64GBと比較的少ない点が悩ましいところですが、DSDVは通信回線を組み合わせて、賢く節約するには便利な機能です。

歴代の集大成! 使い勝手を練り込んだ定番モデル

AQUOS senseシリーズは、誰でも使える「スタンダードモデル」を作るというコンセプトで世代を重ねてきましたが、AQUOS sense4は4G LTEにおける集大成といえるモデルです。

折りたたみスマホのような派手なギミックはないですが、カメラは堅実なつくりで、防水や落下衝撃への強さ、おサイフケータイ、手頃なサイズ感などをそつなくまとめています。メーカーによるカスタマイズは少なめですが、好きなアプリの割り当てや構図を提案するカメラなど、日々の使い勝手をよくする機能をきっちり作り込んできた印象です。

5Gへの移行が進む中で、あえて4G LTE専用で多少安価なAQUOS sense4を投入したのも、「必要十分」を意識した上でのことでしょう。数年先に5Gへの切り替えが進んでいるのは確実ですが、今すぐに切り替えるメリットは多くありません。今使うスマホを賢く選んで節約できるという意味では、5G非対応もAQUOS sense4のユーザーフレンドリーな一面といえるかもしれません。