dynabook G8/P(P1G8PPBL)は、CPUにインテルのTiger Lakeを搭載した13.3型フルHD液晶のモバイルノートPC。前モデルからスペックアップが図られたほか、キーボードやWebカメラなどにも改良が加わっています。2021年2月中旬の実勢価格(税込)は200,000円弱です。ここではモバイル要素を重点的に見ていきます。

  • 13.3型モバイルノートPC「dynabook G8/P」

    13.3型モバイルノートPC「dynabook G8/P」、本体カラーはオニキスブルーとパールホワイトの2色。今回の試用機はオニキスブルー

最初に基本的なスペックをまとめると、CPUは開発コードネーム「Tiger Lake」の第11世代Intel Core i7-1165G7(2.90GHz・最大4.70GHz・4コア8スレッド)、メモリはDDR4-3200 16GB(8GB×2)、ストレージは512GB SSD(M.2・PCIe Gen3 x4・NVMe)、グラフィックスはIntel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)、OSはWindows 10 Home 64bit版です。Microsoft Office Home & Business 2019が付属します。

13.3型の液晶ディスプレイには、シャープのIGZO液晶を採用。解像度は1,920×1,080ドットのフルHD、画面はノングレア(非光沢)、タッチ操作には対応しません。バッテリー駆動時間の公称値は約24時間と長く、実際にどれくらい持つのか試してみます。本体サイズは約W306×D210×H17.9mm、重さは約888gと軽量です。この約888gは本体カラーがオニキスブルーのモデルで、もう1色のパールホワイトモデルは約908gとなります。

dynabookサイトの直販モデルでは、スペックのカスタマイズも可能。選択肢は、CPUがCore i7-1165G7・Core i5-1135G7・Core i3-1115G4、メモリが8GB・16GB、SSDが256GB・512GB・1TB、OSがWindows 10 Home 64bit版・Windows 10 Pro 64bit版です。Microsoft Officeの有無も選べます。最小構成は税込158,400円(会員登録でさらに割引あり)となるので、店頭モデルと合わせて検討してみてください。

  • シャープのIGZO液晶を採用し、1,920×1,080ドット(フルHD)の非光沢画面

  • 液晶は180°開きます

モバイルノートPCに求められるもの

モバイルノートPCに求める要素はユーザーによって優先度が変わるところですが、だいたい以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 大きさと重さ
  • バッテリー駆動時間
  • インタフェース類
  • スペック(性能)
  • ディスプレイ(解像度、タッチ対応かどうか、光沢か非光沢など)
  • デザイン
  • キーボード
  • LTE通信や5G通信の有無

使い方と好みしだいで、多少は大きく重くてもバッテリー駆動時間を最重視、気に入ったデザインは譲れない、とにかく軽いのが一番、インタフェースはUSB Type-Cがあれば十分……といったように、いろいろな見方が出てくるはず。最近はテレワーク需要もあるので、場所を選ばず仕事に使うことを考えるとある程度の性能は欲しいですし、外部ディスプレイ出力が必須という人も多いでしょう。

  • 天面と背面は飾り気のないオーソドックスなデザイン

大きさと重さ

スペック値は約W306×D210×H17.9mm・約888gで、フットプリントはほぼA4サイズ。重さの実測値は863gと、スペック値よりも軽く計測されました。付属のACアダプタ(USB Type-C)と電源ケーブルを合わせると実測で1.11kgです。

ACアダプタもかなり小型なので、持ち運びに有利なのはポイント。ACアダプタはUSB PD(Power Delivery)に対応し、出力の仕様は5V3A・9V3A・15V3A・20V3.25Aです。

  • 実測の重さは863g。13.3型ノートPCではもっと軽い製品もありますが、dynabook G8/Pは長いバッテリー駆動時間がポイント

  • ACアダプタと電源ケーブルを合わせると1.11kg。小型のACアダプタはUSB PD対応で電圧と電流の出力仕様を4通り備えているので、ほかのUSB PD対応製品も充電できます

バッテリー駆動時間

PCMark10のバッテリーベンチマークを実行。テストのプロファイルは「Modern Office」を選んでいます。これはデイリーワークを想定した設定で、オフィスアプリケーションやビデオ会議などを繰り返すテストです。

dynabook G8/P本体側の電源プロファイルは「dynabook標準」、電源モードは「より良いバッテリー」、画面の輝度は50%で実行しました。100%充電からベンチマークを実行し、残り2%で終了です。

結果は「10時間39分」でした。公称値が約24時間なので短く感じますが、PCMark10のバッテリーベンチマークは全体的に負荷が高く、さらに10時間ぶっ続けでモバイルワークというケースはそうそうないでしょう。丸一日はバッテリーだけで使えると思います。移動時はこまめにスリープ、画面の輝度を下げるといった使い方をすれば、1泊2日の出張をバッテリー駆動だけで乗り切ることもできそうです。

  • PCMark10のバッテリーベンチマーク「Modern Office」を実行。このテストで「10時間39分」という結果なら、使い方しだいで丸二日はバッテリーだけでモバイルワークできそうです

画面の輝度は50%でも十分に明るく、今回、屋内や照明がやや暗いカフェなどでは10~30%の輝度で使っていました。むしろ輝度を低くしないと、まぶしくて目に辛いと感じる人も多いのではないでしょうか。

また、電源を取れないモバイルワークが多いなら、USB PD対応のモバイルバッテリーを携帯するのもおすすめ。今回、USB PDの45W出力に対応したモバイルバッテリーとして「Lenovo USB Type-C ノートブックパワーバンク」を試してみたところ、dynabook G8/Pをきちんと充電できました。モバイルバッテリーを使う場合は、USB PD対応のUSB Type-Cケーブルも合わせて用意する必要があります。

インタフェース類

外部インタフェース類は左右側面に並び、13.3型モバイルノートPCとしては充実しています。右側面は、セキュリティロックスロット、Gigabit Ethernet有線LAN、USB 3.1 Gen1 Type-A、microSD/SDHC/SDXCスロット(最大512GB)です。USB 3.1 Gen1 Type-Aは、本体が電源オフや休止状態でも電力を供給するパワーオフアンドチャージ機能を持っています(有効化する設定が必要)。

  • 右側面。右側から、セキュリティロックスロット、Gigabit Ethernet有線LAN、USB 3.1 Gen1 Type-A、microSD/SDHC/SDXCスロット(最大512GB)

左側面は、USB Type-C×2基、HDMI出力、USB 3.1 Gen1 Type-A、ヘッドホン出力・マイク入力コンボ端子です。USB Type-C端子は、USB 4、Thunderbolt 4、USB PD(Power Delivery)に対応しています。

  • 左側面。左側から、USB Type-C×2基、HDMI出力、USB 3.1 Gen1 Type-A、ヘッドホン出力・マイク入力コンボ端子、電源インジケータ

これだけのポート類がそろっていれば不足はありません。個人的にはフルサイズのSD/SDHC/SDXCスロットが欲しかったところですが(メディア関係ではデジタルカメラで撮った写真を転送するために、フルサイズSD/SDHC/SDXCスロットの需要は高いのです)、不要という人は多いと思います。

ワイヤレス通信は、Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)およびIEEE802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LAN、Bluetooth 5.1をサポートしていますが、LTE通信に対応したモデルがないのは残念なところ。Wi-Fiのコントローラは「Intel Wi-Fi 6 AX201」で、2×2のストリーム、2×2のアンテナ、Wi-Fi 6で160MHzのバンド幅に対応しており、Wi-Fi 6の最高速度(規格値)は2.4Gbpsです。なお、有線LANのコントローラもインテルの「イーサネット・コネクション I219-V」でした。

  • 前面(写真上)と背面(写真下)には、インタフェース類はなし。背面には排気口があります

スペック(性能)

続いて性能面。改めて基本スペックをまとめると、CPUは第11世代Intel Core i7-1165G7(2.90GHz・最大4.70GHz・4コア8スレッド)、メモリはDDR4-3200 16GB(8GB×2)、ストレージは512GB SSD(M.2・PCIe Gen3 x4・NVMe)、グラフィックスはIntel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)です。

どんな使い方をするかにもよりますが、13.3型モバイルノートPCとしてはハイエンドクラスのスペック。オフィスアプリ、Webブラウズ、Webアプリといった用途なら、まず不満はないでしょう。画像や動画の編集なども、よりハイエンドなデスクトップPCには及ばないまでも、十分こなせます。筆者は普段、Webブラウザで多くのタブを開く、画像編集アプリを常に起動、必要に応じてオフィスアプリや動画編集アプリを起動といった使い方ですが、メモリが16GBなのはありがたく感じました。8GBだとちょっと足りないんですよね。

  • デスクトップ右下の通知領域で、バッテリーアイコンを左クリックして電源モードを変更

パワーが必要なときは、通知領域のバッテリアイコンから電源モードを「高パフォーマンス」や「最も高いパフォーマンス」に切り替えるのがおすすめです。モバイル使用だとバッテリ駆動時間との兼ね合いになりますが、dynabook G8/Pはもともとバッテリ駆動時間が長いので、一時的に高パフォーマンス設定にするくらいならそれほど影響はないでしょう。

ベンチマークテストは、Cinebench(Release 23)、PCMark 10、CrystalDiskMarkを実行しています。PCMark 10のトータルスコアは「4367」で、PCMark 10の評価軸ではほぼ中間の位置付け。CinebenchはCPUのシングルコアが「1413」、マルチコアが「4441」と、シングルコア性能が優秀な結果。なお、高負荷が続くと、ファンの音がかなり大きくなります。

  • Cinebench(Release 23)の結果

  • PCMark 10の結果

試用機のストレージは、SSDとして「Samsung PM991 512GB(MZVLQ512HALU-00000)」を搭載していました。CrystalDiskMarkの結果は、PCIe Gen3 x4・NVMeのSSDということでもう少し高スコアでもよかったのですが、体感的にはまったく問題ありません。

  • CrystalDiskInfoの情報と、CrystalDiskMarkの結果

参考までに、ゲームベンチとして「STREET FIGHTER V ベンチマーク」と「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」も実行。dynabook G8/Pはゲームを楽しむマシンではないので、やや厳しい結果も仕方のないところ。

STREET FIGHTER V ベンチマークは、画面品質「低」にして「快適」、画面品質「中」では「スペック不足」でした。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークはもっときつくて、ゲームの解像度を1,280×720ドットに下げ(dynabook G8/Pの画面は1,920×1,080ドットのフルHD)、カスタム設定で描画関連の品質をすべて最低にして、やっと「普通」(スコアは3103)という評価になりました。

  • 「STREET FIGHTER V ベンチマーク」の結果。画面品質「低」で「快適」となりましたが、画面品質「中」でも平均フレームレートは「58.01fps」まで出ました

  • 「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」の結果。解像度と描画品質を下げてぎりぎりプレイできるくらい

ディスプレイ

モバイルメインでノートPCを選ぶ場合、ディスプレイの重要度は相対的に下がるかもしれません。dynabook G8/Pのディスプレイは、IGZO液晶、1,920×1,080ドット(フルHD)、非光沢(ノングレア)、タッチ非対応という仕様です。最大輝度は非公開ですがかなり明るく、発色の鮮やかさも視野角も申し分ありません。写真や映像も気持ちよく楽しめます。

  • 画面上部には、Windows Helloの顔認証に対応したカメラ。有効画素数は約92万画素で、物理的にレンズを覆うスライド式のシャッターを設けています

キーボード

キーボードも人によって重要度が変わる部分。dynabook G8/Pのキーボードは、前モデルと比べてキートップが正方形に近くなり(前モデルはやや横長)、タイピングのしやすさは間違いなく上がっています。キーピッチは19mm、ストロークは1.5mmと標準的です。右側の一部キーが縦長(横ピッチが狭い)ですが、すぐに慣れる程度でしょう。

打ち心地は、適度なクリック感と跳ね返りがあって、きちんと入力した感覚が得られます。押した感じが少し固めに感じる人もいるかと思いますが、総じて打ちやすいキーボードです。個人的に残念だったのは、キーボードバックライトがないこと。製品発表会の会場など暗い場所でキーを叩く機会が多いので、調光付きのキーボードバックライトがあると便利なんです(タッチタイプが完璧ならなくてもいいのですが、そこまで達しておらず……)。

  • キーボードの感覚は好みも大きいですが、筆者は不満なく使えました

バッテリーが持つってありがたい

dynabook G8/Pをしばらくモバイル中心で使ってみて、モバイルノートとして大切なところが高いレベルでまとまっている印象。実測で863gという軽い本体、なかなか減らないバッテリー、十分なパフォーマンスといったように、この3点だけでも候補の上位に入ってくるでしょう。

パフォーマンスが高いので、今の時代ならオフィスや自宅のデスクトップ的なメインマシとしても通用します。外部ディスプレイを増設すればかなり快適に使えるはず。USB Type-Cだけで充電と外部ディスプレイ出力ができるとより便利だったのですが(さらには有線LANも)、それほどのマイナス要素ではありません。ときどきモバイルからヘビーモバイルまで、モバイルニーズのあるユーザーにはぜひ注目してほしい1台です。