新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2月10日、「アフターコロナ社会変革のカギ ヒト×AIとリモート技術の融合」をテーマにWebセミナーを開催し、ここ1年間に新型コロナ感染対策として利用が増えているリモート技術を高度に深める技術戦略や、その応用分野などを具体的に解説した。

このWebセミナーは、NEDOの技術戦略研究センター(TSC)が近未来への技術戦略などを解説する情報誌「TSC Foresight」にて「スマートテレオートノミー分野の技術戦略策定に向けて」と題した資料を公開したことに併せて開催された。

この資料は、少子高齢化が進み、生産年齢人口が次第に減る時代を迎えている日本に対して、高度なリモート技術を活用し、生産性を向上するために必要な手段などを「スマートテレオートノミー分野の技術戦略」として策定し、公表したもの。

策定の背景には、遠隔地にいる人間やモノなどがあたかも目の前にあるように認識できるような革新的なリモート技術を実現する技術開発プロジェクト「人工知能活用による革新的リモート技術開発事業」の公募開始(ロボット・AI部が担当)が近づいているという理由がある。公募を始めるにあたり、技術戦略を公表する目的でWebセミナーが開催された。

WebセミナーでNEDOは、従来のリモート技術では人間が、実際に稼働する機械などを操作して、多種多様な作業をこなすため、突発的に起こる状況・現象に対応できているものの、作業効率はあまり高くないという課題に直面していると現状を説明した。この課題を解決する技術が多様な働き方を実現するリモート技術と、生産性向上に寄与する自律化技術を高度に組み合わせたスマートテレオートノミーであり、多様な用途が期待されているという。

スマートテレオートノミーはまず技術的に対応可能な作業から自動で作業ができる自律化を現実的に始め、自律化できない作業をリモート技術で対応する“部分自律化”を進め、次第に高度化していくというやり方で推進していくことを提唱している。

  • 部分自律化を進め、自律化を段階的に高めていく開発工程

    部分自律化を進め、自律化を段階的に高めていくスマートテレオートノミーの工程 (出所:NEDO)

また、その実現にはリモート技術の対象となる遠隔地の状況を適切に把握するXR(仮想現実、拡張現実、複合現実などの現実と仮想世界を融合する技術)技術開発と、AIを利用して遠隔地にいる人の状況や行動を推定する技術を併せ、高度化していくことが必要だとしており、NEDOでは、「その利用対象の1つが遠隔治療である」と強調する。

  • スマートテレオートノミーの有望な開発対象となる遠隔診療応用

    スマートテレオートノミーの有望な開発対象となる遠隔診療応用 (出所:NEDO)

近々、公募が始まる予定の技術開発プロジェクト「人工知能活用による革新的リモート技術開発事業」では、「状態推定AIシステムの基盤技術開発」と「高度なXRによる状態を提示するAIシステムの基盤技術開発」を目指すという。この技術開発によって「空間と時間の制約から解放された社会活動と経済活動の実現を目指す構え」としている。