ソニーネットワークコミュニケーションズは2月8日、映像とAIを活用して水泳コーチングをサポートする「スマートスイミングレッスンシステム」を発表しました。開発には日本全国でジュニアスイミングスクールを運営するルネサンスが協力。ルネサンスのスイミングスクールでは、6月から順次このサービスを導入する予定です。発表時点では、料金は調整中となっています。

「映像とAIを活用した水泳コーチング」ってどんなものでしょう。プレス発表会から、サービスの詳細をレポートします。

  • スマートスイミングレッスンシステムを使用した教室での指導イメージ

    スマートスイミングレッスンシステムを使用した教室での指導イメージ

子どもに習わせたいスポーツ第1位「水泳」

ソニーネットワークコミュニケーションズによると、「お子さまに人気の習いごと」はダントツで「水泳」が1位。このため、全国で多くの子どもたちが水泳教室に通っています。水泳はプールがないとできないスポーツだけに、子どもと保護者との関わり方が難しい一面も。プールがない自宅だと、保護者が子どもの予習や復習を手伝うことは困難なうえ、現在のコロナ禍では保護者の観覧を制限している水泳教室も多いのです。

  • 小学生を対象とした調査から、子どもの習いごとの人気を調査したもの。水泳はとくに小学生4年生までの子どもに人気

今回発表された「スマートスイミングレッスンシステム」では、スイミング教室の壁面、さらには水中にまで、教室のプールに複数のカメラを設置。このカメラで撮影した映像をもとにした指導や、専用アプリを利用した生徒のレベルにあわせた教材動画の配信、保護者へのテスト結果の配信などを通じて、より効率的な水泳レッスンができるというサービスです。

  • プールサイドや水中に複数台のカメラを設置。現在利用されているソニー製の4K60p対応小型リモートカメラ「SRG-XP1」(写真左)。水中撮影にも対応し、複数のカメラを使って、子どもの泳ぎをさまざまな角度から確認

  • 泳ぎの撮影や専用アプリを通じた配信などによって、子どもにとってわかりやすい指導を提供。保護者には、子どもの成長を一緒に見守る一体感が生まれます

【動画】ルネサンスに所属する池江璃花子選手と山本茉由佳選手がスマートスイミングレッスンシステムを体験
(音声が流れます。ご注意ください)

動画を活用したレッスンシステムでは、自宅での予習、レッスン前の説明、水泳後の振り返りといったサービスが用意されています。

まず「自宅での予習」では、生徒用の個人別ページにお手本の動画と次のレッスンテーマ(めあて)を配信。手持ちのタブレットやスマートフォンで生徒が視聴して、自宅で予習できるサービスです。自宅で親が一緒に予習することで、子どもとのコミュニケーションにも役立ちます。親と子どもの一体感も生まれ、子どもの習熟具合がわかるという点でも、親にとってはうれしいサービスではないでしょうか。

  • 生徒別に配信される専用アプリのページ。「めあて・お手本」の動画を見ながら、自宅で予習。保護者にとっても、子どもの成長が手に取るようにわかります

  • こちらは子どもが泳いだ後に、プールサイドで見られる映像。自分の泳ぎをすぐにチェックして、課題を持って次の泳ぎに挑めます

「レッスン前の説明」は、コーチがお手本動画を用いて、その日に覚えてもらいたいポイントを説明するサービスです。実際にコーチが泳いでいる動画を使って説明するため、生徒の納得感が増すとしています。

  • スマートスイミングレッスンシステムでは、コーチの指導用インタフェースも用意しています。写真はグループ指導用のUI。こういったシステムが整って指導の質が安定すれば保護者も安心です

「水泳後の振り返り」は、プールサイドにて、コーチが指定した秒数だけさかのぼった映像をチェック。生徒が自分の泳ぎをすぐに映像で確認することで、自分で自分の課題に気付き、自らの力で考えるアクティブラーニングへのきっかけとなるとしています。また、自分の泳ぎを確認すると上達を実感できて、水泳へのモチベーション向上にもつながりますね。

  • 自分の泳ぎを確認しているところ。自分の動きを客観的に見て、自分で考える力が身につきます

加えて、もうひとつの大きな機能が「進級テスト結果配信システム」です。水泳教室には段階ごとに「進級」がありますが、スマートスイミングレッスンシステムではこの進級テストの結果も、動画とともに保護者に届けることが可能です。教室内や水中に設置された複数のカメラから、1本の動画コンテンツへとAIが自動編集。自裁のプールで保護者が見学できない状況でも、子どもの雄姿を見逃すことがありません。テストを受ける子どもが泳いでいるレーン以外にはボカシをかけるなど、プライバシーに配慮した設計も保護者にとって安心のポイントです。

  • 進級テスト結果を専用アプリに配信。テストの状況も動画で配信されるため、親子で一緒に合格を喜ぶといった、コミュニケーションのきっかけになります

ソニーは発表会において「スイミングプールでの撮影は、泳いでいる人数の多さや水面の揺れ、光の反射や屈折の影響などにより、画像認識の難易度が高い」としながらも、独自のAIアルゴリズムを導入して被写体の追従や複数のカメラ映像からの自動編集を実現にしたといいます。実際にサンプル映像を見てみると、被写体をしっかりとらえながら次々とカットが変わり、まるで水泳大会のテレビ番組のような高いレベルの仕上がり。子どもの成長記録としても貴重な映像になりそうです。

【動画】進級テストの動画例。AIが被写体を追従し、複数カメラから最適なアングルを組み合わせて自動編集。メインの被写体以外の人間にはボカシが入っているのもわかります

前述したように、水泳教室は保護者がプールサイドで観覧する以外、子との接点があまり作れない習いごと(保護者スペースがプールから離れている場合も多いですよね)。ですが、スマートスイミングレッスンシステムがある教室なら、保護者が自宅で子どもの予習を手伝ったり、進級テストに向けてがんばる子どもの様子を映像で見て応援したり、合格を一緒に喜んだりできます。コロナ禍で保護者が子どもの習いごとを見守ることが難しい今だけではなく、今後こういったAI技術を活用した習いごとはどんどん増えていくのかもしれませんね。