半導体市場調査会社である米IC Insightsが発行した「グローバルウェハキャパシティ2020-2024レポート」によると、10nm未満の先端プロセスを用いた半導体ICの生産能力の、世界の総IC生産能力に占める割合は、2019年12月は4.4%であったが、2020年12月には10.0%、2022年には20%を超え、2024年には30%となり、以降は業界全体の生産能力のうちで最大シェアを占める見込みだという。

  • IC Insights

    月間半導体生産能力のプロセス別シェアの推移予測 (2019年12月度のみ実績、最下段に表示されているウェハ枚数は200mm換算) (出所:IC Insights)

プロセスの微細化は、高速化、低消費電力化、低コスト化などのメリットを受けられるが、その製造コストに見合う価値を見出せる先端デバイスは限られている。先端プロセス用半導体製造装置の価格は非常に高くなっており、EUV露光装置は1台200億円近くもするので購入できる半導体メーカーは限られている。世界中で、10nm未満のプロセス技術を使用してファブを運用できているのは、TSMC、Samsung Electronics、Intelのみである。

一方、プロセスが微細化するにつれ、その実現にはさまざまな課題が噴出し、それに伴い、設計上の課題もでてくることもあり、IC Insightsは複雑なロジックチップの微細化の移行ペースは、減速し続けると見ている。なぜなら、チップ設計者は高騰する製造コストを正当化することがますます困難になっていると感じているからである。しかし、高速化や低消費電力化などのメリットを享受できるアプリケーション(例えば、5Gスマートフォン、AI、HPCなど)では、最先端のFinFETプロセスあるいはそれ以降の新プロセスに対する需要が引き続き高く、微細化のさらなる継続が求められることとなっている。

同レポートにて述べられている、このほかの注目事項を以下に要約して記述する。

  • 2020年12月段階の全ウェハ生産能力の48%が20nm未満のデバイス向けであると予想。10nm未満が10.0%、10~20nmが38.4%としている。これらのデバイスには、10nmクラスのDRAMおよび3D NAND、マイクロプロセッサ、低電力アプリケーションプロセッサ、および先端SoC/ASSP/FPGAが含まれる。
  • 韓国は、全生産能力の66%が20nm未満のプロセス技術となっており、他の地域や国よりも先端プロセスに焦点を当てている。SamsungとSK Hynixは、高密度DRAM、NAND、加えてSamsungはアプリケーションプロセッサに重点を置いていることを考えると、同国が先端プロセスによるウェハ生産能力向上に注力していることは当然の成り行きであろう。
  • Apple、Huawei、Qualcommは、TSMCの先端ロジックファウンドリサービスを利用している。その結果、台湾における20nm未満の生産能力は全体の35%以上となっている。しかし、28nm、45/40nm、および65nmプロセスも、TSMCやUMCなどのファウンドリにとって大きな収入源となっている。
  • 中国の20nm未満の生産能力のほとんどは、Samsung、SK Hynix、Intel、TSMCなどの外国企業の中国内工場によるものである。20nm未満のプロセス技術を提供できる中国資本の企業はNAND専業のYMTCとファウンドリのSMICだけである。