便利でキレイ、3眼になったフリップカメラ

ZenFone 7 Proのカメラは、フリップカメラと呼ばれる回転式のカメラを搭載。前モデルのZenFone 6にも搭載されていましたが、さらにカメラが増えてトリプルカメラとなりました。

  • 背面のカメラは横に並ぶトリプルカメラ

メインカメラの画素数は従来よりも高画素の6400万画素センサーを搭載。1200万画素の超広角カメラ、800万画素の望遠カメラを搭載したトリプルカメラです。メインカメラはセンサーサイズが1/1.7インチと大型で、レンズのF値はF1.8。4つのピクセルを1つのピクセルと見なすクアッドベイヤー配列で、1200万画素相当で記録することによって、画素ピッチを大型化できます。これによってダイナミックレンジの拡大や暗所ノイズの削減が期待できます。

超広角カメラはレンズ前4cmまでのマクロ撮影にも対応。デュアルピクセルAF機能も備えています。望遠カメラは光学3倍、デジタル4倍のズームに対応し、光学式手ブレ補正も内蔵します。

  • カメラのUI。一般的なUIです

基本的なカメラの機能としては一般的ではあります。ただ、特徴的なフリップカメラによっては他にはない体験を実現しています。フリップカメラはカメラ部が回転することでアウトカメラからインカメラに早変わりします。

<動画> フリップカメラの動作。インカメラアイコンを押すとすぐに立ち上がります。インカメラアイコンを上下にスライドしたり、音量ボタン上下だとフリップカメラを任意で動かせます

そのため、ZenFone 7 Proにはインカメラがありません。その分、ノッチやパンチホールがない、文字通りの全画面を実現しているわけです。その結果、カメラが開店する時間が必要なため、インカメラの起動は少し時間がかかります。とはいえ、動きは速く、極端に遅いわけではありません。

  • 正面にはインカメラがありません

  • フリップカメラが回転してインカメラが現れます

それ以上に、高画質なメインカメラをインカメラとして使える点はメリットです。一般的なスマートフォンは、背面のメインカメラに比べてインカメラは性能が劣る場合が多く、より高画質に自撮りをしたい場合には使いづらいものでした。特に動きながら自撮りのVlogを撮影する場合など、手ブレ補正がないのもあって、物足りない面がありました。

ZenFone 7 Proのフリップカメラなら、インカメラも手ブレ補正付きのメインカメラが利用できるため、幅広いシーンで高画質の撮影が可能です。従来よりもカメラを回転させるステッピングモーターが強化され、トルクは2.2倍になったそうです。

背面側に収まっているカメラは、インカメラボタンを押すと自動的に正面を向くように回転。本体の上部にカメラが飛び出して現れるので、そのままメインカメラとして撮影できます。

  • 途中で固定すると、三脚のようにカメラを固定して撮影できます。音量ボタンにシャッターボタンを設定しておけばシャッターが切れますが、フリップカメラの操作と排他になるので、ちょっと撮影が面倒

  • こちらの置き方だと、カメラが固定される上にライブビューを確認しながら撮影できます。ちょっと気を使う置き方ではあります

結果として、メインカメラのカメラ機能は全てインカメラでも使えます。オートモードだけでなく、ポートレートやパノラマ、8K動画、夜景モードなど、多くのカメラ機能がメインカメラと同様にインカメラでも使えるのはメリットです。

さらにフリップカメラは自由な角度で回転を止めることもできます。そのため、下からアオリの写真を撮る場合や低い位置の被写体を撮影するときにも無理な姿勢をすることなく、簡単に撮影ができます。

  • フリップカメラの位置を変えれば、アオリの写真もかなり簡単に撮れます

カメラを少し動かして平面におくと、三脚代わりに固定することができます。カメラの角度を変えられるので、比較的幅広いシーンにも対応できます。カメラの側面やディスプレイを固定するため、少し傷が恐いですが便利な使い方です。

フリップ位置を記憶して1タッチで指定の角度までフリップする機能も搭載。新たに搭載されたアングルセンサーによって角度を把握。指定の位置を3種類まで記憶できるので、よく使う角度があるなら登録しておくと便利です。

  • フリップ位置を3つまで記憶させることもできます

カメラ機能としては、スマートフォンカメラとしては珍しくAFとAEを個別に固定できる機能が便利。背景が明るすぎるシーンで、手前のメイン被写体にタッチしてAFとAEを固定すると背景が飛んでしまうような場合に有効です。タッチしたまま長押しすするとAF/AEロックが分離して2重円になるので、外側の円をドラッグするとAE位置を移動させられます。

  • AFとAEの位置を自由に変更できるのは便利

広角カメラの画質は十分以上で、高い描写を実現。ややシャープネスは強めでHDRも不自然な効きですが、見栄えのする描写になります。料理モードで派手さが足りない点など、物足りないところもありますが、おおむね幅広いシーンでは足んなく撮影できます。

  • HDRは強めで不自然ですが、見栄えはします

  • こちらは超広角で。連写合成によるブレが葉っぱに見られます

  • さらに望遠カメラで。やや画質は落ちますが、倍率としては手頃です

  • こちらも望遠カメラ。細部の表現は少し怪しいものの、平均的な写りでしょう

  • デジタルズームを併用すると12倍までズーム可能。写りは、さすがにやや無理がありますが、SNSならばそれなりに見られるでしょう

フルHDに限定されますが強力な手ブレ補正「HyperSteady」を搭載。光学式手ブレ補正は搭載しているので、8Kや4Kでも静止しての撮影であれば十分に手ブレを補正してくれます。ズームは使えなくなりますが8Kの高画質動画の撮影にも対応しています。

フリップカメラが自動で動くことで撮影してくれるオートパノラマ、指定した被写体をフリップカメラが追尾してくれるモーショントラッキングなど、面白い機能も搭載。フリップカメラ起動時に落下を検知するとカメラが収納される機能も備えて、安全性にも配慮しています。

  • 望遠カメラですが、破綻も少なくうまく描写できています

  • 超広角カメラは狭い室内でも幅広い撮影が可能

  • やはり超広角は風景で威力を発揮します

  • こちらはメインカメラ。思ったより派手になりすぎず、安定しています

  • ポートレートモードは比較的きちんと背景と分離してくれます

  • ややノイズ低減が強すぎる嫌いはありますが、夜景モードも見栄えのする描写をしてくれます

高性能でユニーク、お値段以上の価値がある

いろいろ高機能なカメラですが、とにかくインカメラとアウトカメラが一体化しているのは、撮影においては便利の一言。画面も広く使えますし、決して一般化はしない技術ではあるものの、あって嬉しい機能です。

ハイエンド、SIMフリー、5G、フリップカメラと、キーワードを並べるだけでも遊び心のある端末です。今回試用した価格は99,800円と決して安くはありませんが、ハイエンド端末としては比較的手を出しやすい価格です。ほかバリエーションモデルとして、CPUをSnapdragon 865に落とすなどした「ZenFone 7」(ZS670KS)もあり、こちらは85,800円と少し手ごろ。インカメラを重視する人は、特に考慮して欲しい端末です。