半導体市場動向調査会社である仏Yole Développementが、2019年および2025年のパワー半導体(ディスクリートおよびモジュール)市場に関する調査報告書を発行した。

それによると、2019年のパワー半導体市場は175億ドルで、今後、年平均成長率4.3%で成長し、2025年には225億ドル規模に成長すると予測している。また2019年のパワー半導体市場を分野別に見ると、その内訳は、車載向け(EV/HEV含む、シリコンMOSFET)が15億ドル、モータードライブ(IGBTモジュール)が14億ドル、携帯およびワイヤレス(シリコンMOSFET)が13億ドル、コンピューティングおよびストレージ(シリコンMOSFET)が12億ドル、産業向け(シリコンMOSFET)が11億ドル、EV/HEV向け(IGBTモジュール)が6億ドル、その他が104億ドルとなっている。

パワー半導体市場におけるデバイス別シェア(金額ベース)では、シリコンMOSFETが45%を占めている。もう1つの主要デバイスとしては、IGBTモジュールが挙げられ、その市場規模は2019年で37億ドル。最近は主要アプリケーションとして、従来の産業用、再生可能エネルギーコンバータなどに加え、EV/HEVでの注目度が高まってきている。

そのため、パワーIGBTモジュール全体では2019年から2025年にかけて年平均18%の成長が見込まれ、2025年までに54億米ドル(パワー半導体全体の24%)に達すると予想される。

また、SiCベースのモジュールは米Teslaや中BYDなどのいくつかの自動車メーカーでの採用が拡大、メインインバーターのIGBTモジュールの代替が進むため、SiC MOSFET市場もEV/HEVの成長に合わせて拡大することが予想されるほか、SiCディスクリートトランジスタも、高効率な車載充電器(OBC)システムとしてシリコンMOSFETと競合することが予想されている。

パワー半導体業界は全体として、今後、年平均成長率4.3%で成長し、2025年には225憶ドルレベルに成長するとYoleは予測している。

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    2019年および2025年のパワーエレクトロニクスデバイス市場の主要セグメント別売上高内訳 (出所:Yole Développement)

2019年のパワー半導体メーカー売上高ランキング

Yoleの調査による2019年のパワー半導体(ディスクリートおよびモジュール)市場におけるメーカー別売上高ランキングとしては、ダントツのトップは独Infineon Technologiesで、2位はON Semicondsuctor、3位はSTMicroelectronicsとなっており、いずれも今後生産増強を計画しているか、もしくは行ったばかりの企業たちである。

日本企業は、5位に三菱電機、6位にローム、7位に東芝、8位にルネサス エレクトロニクス、9位に富士電機と5位~9位に入っており、これら5社の売上高合計額は、トップのInfineonとほぼ同等となる。ある業界関係者は、これら日本のパワー半導体各社の特徴は、ランク外の中小企業を含めて各社独自の経営方針を掲げており、M&Aの兆候もないことだと、語っており、このような状態が続けば、いずれは成長著しい中国のパワー半導体業界にシェアを奪われかねないと危機感を口にしている。

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    パワー半導体(ディスクリートおよびモジュール)サプライヤ売上高ランキングトップ15 (出所:Yole Développement)

パワー半導体の自給自足を目指す中国

中国のパワー半導体サプライヤは、現在のパワーエレクトロニクスのエコシステムで重要な役割を担うところまで成長してきている。

YoleのPower&Wireless部門のテクノロジー&マーケットアナリストAnna Villamorsh氏は「中国は、いくつかのパワー半導体アプリケーションのリーダーとなっている。BYD、Huawei、CRRC、Sungrowなどの中国企業は、世界をリードするパワー半導体の顧客企業である。パワーエレクトロニクス機器の製造において、中国は依然としてInfineon、富士電機、三菱電機などの海外サプライヤーに強く依存している。確かに、中国は電気自動車とハイブリッド電気自動車の最大の市場であるが、外国のサプライヤは依然として中国のシステムに搭載されたパワーモジュールの大部分を提供している」とデバイスレベルではまだだが海外勢への依存度が高いと述べている。

中国のパワー半導体企業と中国政府は、パワーエレクトロニクスデバイスの国内生産を強化してこの状況を変えようと懸命に努力している。中国のパワーモジュールと半導体メーカーのシェアは増加しており、併せてデバイスの品質とパフォーマンスも向上していることから、米中貿易戦争による米国の対中輸出規制の動きは、中国内の製造業を発展させるのに寄与しているとYoleでは見ている。中国国外の一部の主要なパワーエレクトロニクスプレーヤーは、パワーエレクトロニクスデバイス技術を開発する中国の能力に懐疑的であるが、中国はこれまでも困難な課題を克服してきたことがあることを決して忘れずに、侮ってはいけないとYoleは結論付けている。

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    中国のパワー半導体サプライチェーン (出所:Yole Développement)