10月20日~23日にかけてオンライン開催されているCPS/IoTの総合展「CEATEC 2020 ONLINE」において、村田製作所ブースでは、2019年12月に子会社化したミライセンスが手掛ける次世代触覚技術(ハプティクス技術) 「3D触力覚技術(3DHaptics)」の紹介などを行っている。
近年、エンターテイメント業界ではVRの採用など、五感を刺激することで、これまで以上にリアルな体験を再現する技術が盛り上がりを見せている。その中の1つ、触覚を再現する技術であるハプティクスの活用に向けた模索が各所で進められている。従来のハプティクス技術には、超音波を利用する方式や、体全体に着込んで動かすロボット型やボディスーツ型などがあったが、それらは重量やサイズ、コスト高という観点で、一般への普及には問題があったという。 3DHapticsはミライセンスのCTOであり、産業技術総合研究所(産総研)の主任研究員でもある中村則雄氏が開発した技術で、皮膚に振動刺激を与えて、脳を錯覚させる事で触感や感触などの知覚錯覚を発生させるもの。2020年10月時点で関連技術を含めて約40件の特許を出願しており、そのうち20件がすでに登録済みだという。皮膚刺激を利用するため、従来のような大型の装置は不要となり、小型化、軽量化、低価格を実現できるとしている。また、皮膚に与える振動刺激の波形を変えることで、引っ張るや押すなどの力覚感、固い・柔らかいなどの圧力感、ザラザラや凹凸感などの表面材質感などの触覚・感触を表現可能だとしている。
3DHapticsはあくまでハードウェア技術であり、これを実際にゲーム機などで活用するためには、再現したい触覚・感触を再現する刺激波形をデザインする編集ツールであったり、ゲーム開発環境に組み入れて利用できるようにするアドオンなどのソフトウェアと、デザインした刺激波形を操作する人に伝えるために必要なファームウェア、そして必要とする刺激を再現する広帯域アクチュエーターなどを組み合わせる必要がある。
ミライセンスが村田製作所の子会社となったことで、ハードウェア部分のソリューションを村田製作所が、ソフトウェアの部分をミライセンスが担う体制構築が可能となり、その結果、ハプティクスに関わるすべての開発ステージをサポートすることが可能になったという。こうした取り組みを端的に表すソリューションとして、ミライセンスは10月15日、リアルな挙動感を直感的にデザインできるハプティクス生成ミドルウェア「PulsarSDK V1.0」を開発したことを発表している。
同ミドルウェアでは、各種の波形編集ツールや楽曲・効果音のストリーム再生機能といったもののほかに、独自機能としては、力強さやうごめいている感を作り出す「手ごたえ感(力覚)提示機能」、楽曲・効果音から自動的に感触を生成する「自動Haptics生成機能(ドンシャリ)」、AIを応用し直感的な触感生成が可能な「リアルTactile(ざらざら感)生成機能」といったものが提供される。これらを活用することで、広帯域アクチュエーターにより煩雑化・複雑化するハプティクスの制御を簡略化し、ゲーム開発者へコンテンツ開発に集中できる環境を提供できるようになるという。
「PulsarSDK」は2021年3月末までに家庭用ゲームコンソール向け、同年中にPC向けの製品化を予定しており、PC版の開発後には、AR(拡張現実:Augmented Reality)/VRや車載、メディカル領域など、市場ニーズに対応した各種バージョンの開発を進めていく予定としている。また、ミライセンスでは将来的にはハプティクス技術を医療や福祉に応用していきたいとしており、市場に普及させる第一歩としてゲーム業界での活用を目指したという。
「CEATEC 2020 ONLINE」ではミライセンスのパネルの他、人の動きを再利用して電気を帯びる繊維「PIECLEX」などヘルスケア、非接触コミュニケーション、Society5.0など様々なテーマで展示を行っている。