コロナ禍前から指紋認証を検討

攻めの3つめは、セキュリティ機能の強化である。

新たなUH-Xでは、電源ボタンに指紋センサーを搭載。一体型のモジュールとすることで、電源ボタンを押すだけで、指紋認証が可能だ。

「従来モデルでは顔認証による起動としていたが、指紋センサーとしたことで、マスクをしたままでも認証ができる。コロナ禍前からも、日本ではマスクを着用する人が多く、マスクをした状態でも認証できるようにして欲しいという要望があった。また、屋外のモバイル環境で利用した際に、太陽光の影響で、顔認証がしにくいという指摘もあった。指紋認証は、コロナ禍以前から採用を検討していた」(河野氏)という。

  • 電源ボタン一体型の指紋センサーを採用

その一方で、ディスプレイ上部のカメラには物理的なシャッターを新たに搭載している。

シャッターを搭載することは、軽量化においてはマイナス要素だが、これは最後まで搭載することにこだわった。

河野氏は「テレワークの増加によって、カメラを使用する機会が増えているが、使わない際にはカバーをしていたいという要望があった。また、コンピュータウイルスに感染した場合に、カメラをハッキングされることが気になるという声もあった。軽量化とともに、狭額縁化するなかで苦労をした点であるが、スライド式のカメラカバーを搭載することで、こうした不安を払拭できる」と述べた。

これらは、ニューノーマル時代のニーズに対応した新たに要素への挑戦といえるだろう。

  • Webカメラに物理的なシャッターを搭載。狭額縁化のなかで苦労した点といい、たしかに極細サイズのつまみになっている

有線LAN、SDカードスロットなど多彩なポート

一方、「守る」という点でも、3つの取り組みがある。

ひとつめが、ビジネスユースに耐えられるようにするための各種コネクタの実装である。

従来モデル同様に、USB Type-CおよびUSB Type-Aをそれぞれ2ポートずつ搭載したほか、HDMI、有線LAN、SDカード、ヘッドホン用の各ポートを搭載。「インターフェースは一切犠牲にしていない。各種コネクタを搭載することで、変換アダプタの携帯が不要になり、余計なものを持ち運ばなくて済むというメリットも生まれる。また、単にコネクタ類を実装するのではなく、アクセシビリティを追求し、コネクタを奥側に配置した。コネクタを接続したときに操作の邪魔にならないように、手前側に作業スペースをしっかりと確保した」(河野氏)。

学生などの利用者からは、マウスを右手で操作する際に、ヘッドホンのケーブルが同じ右側から出ていると使いにくいという声があり、ヘッドホン端子は、初代のUHシリーズから左側に配置している。こうした細かいこだわりもFCCLならではの部分だ。

  • 左側面のインタフェース。ヘッドホンのポートが用意されている

  • 右側面のインタフェース。有線LANポートや、通常サイズのSDカードスロットが並ぶ

電源ポートを無くしUSB Type-C充電へ

昨今のノートPCのトレンドは、薄型化とともに、コネクタを排除していく傾向がある。だが、UH-Xでは、ビジネスシーンで必要とされるコネクタは、すべて搭載するという姿勢を崩していない。同社では、これを「体験をデザインに落とし込む」と表現する。豊富なコネクタの搭載と、その配置は、モビリティとユーザビリティの両立を目指した結果といっていい。

注目したいのは、今回のUH-Xでは、DC INの電源ポートを無くし、充電をUSB Type-Cで行う形に変更した点だ。

  • UH-X/E3(上)と従来モデル・UH-X/C3(下)。丸型の電源ポートが省かれ、USB Type-Cに統一された

USB Type-Cへの移行により、本体のコンパクト化に貢献したほか、スマホ用のACアダプタを利用できたり、7.5W以上のモバイルバッテリーによる充電も可能にした。スマホを併用しているユーザーにとっては、充電機器を使いまわすこともでき、モバイル環境で利用する際の持ち物を減らすことができる。

「DC INの電源ポートを無くすことは、コンパクト化に大きく寄与した。もともとUSB Type-Cは2ポートを用意していたが、これはモニターやストレージの接続を想定したもの。このうちのひとつのポートを充電中は埋められてしまうが、物理的に3ポートを搭載することは難しい。拡張が必要な場合には、USB Type-Cに接続可能なポートリプリケータによって、様々な周辺機器を接続できるといった環境が提案できる。そうした使い勝手も検討しながら、今回は、USB Type-Cによる充電へと変更した」(河野氏)。

なお、標準で添付しているACアダプタもType-C端子になり、スマホの充電器としても利用するといった使い方が可能だ。出力はこれまで40Wであったものを、45Wに変更している。

有線LANは独自の「フラップ式」で小型に

もうひとつ、有線LANポートの形状も見直した。従来モデルは引き出し式の形状としていたが、新製品では、フラップ式の形状を新たに採用した。このコネクタは、今回のUH-Xのために独自に開発されたものだ。

  • 有線LANポートは、口の上に設けられたツメを引っ張り差込口を開くフラップ式へ変更された

「有線LANのケーブルを接続するのに、ワンアクションで済むといった効果だけでなく、コネクタの小型化にもつながっている」という。

ただしコネクタの高さは、従来の引き出し式に比べると1.5倍になっており、これまでのモデルのようにキーボードの下に配置することができなかった。このため高さを稼ぐことができる奥側に配置し、厚みを出さないように配慮した。

実際、本体の厚みは従来モデルと同じ15.5mmを実現している。その一方で、コネクタの奥行きは小型化されているため、狭額縁化やコンパクト化に大きく貢献したそうだ。

ちなみに、日本のユーザーの利用環境を想定して、有線LANポートを取るという考えは、開発チームには、まったくなかったという。