中国の通信機器メーカーであるZTEは、2018年に米国から制裁を受けて事業が停滞したものの、2020年の国内5Gサービス開始に当たっては、KDDI(au)とソフトバンクに5G対応スマートフォンを提供するなど復調の兆しも見せています。ZTEの最新モデルとなるauの「a1」を中心としたZTEの最新の取り組みについて、ZTEの王旗氏、山内久弥氏、石一覧氏に話を聞きました。
ネットワーク技術とスケールメリットが5G時代の強み
―― 2018年の米国からの制裁で、一時はビジネスの継続が危ぶまれる状況となりましたが、その後の状況を知らない人も多いかと思います。日本におけるZTEの現状について教えてください。
王氏:制裁は米国政府と調整の末、約3カ月という早い段階で収束しています。通信機器の事業に関しては、米国政府が「5G Clean Network」を打ち出すなどしたことでいくつかの国で影響が出ていますが、端末部門にはそれほど大きな影響は起きていません。
日本での端末事業に関しても、2018年以前の状態に戻ったといえるでしょう。すでにKDDIさんとソフトバンクさんから、スマートフォンやWi-Fiルーターなどいくつかの端末を出していますし、販売も順調です。
―― 国内での5Gサービス開始に当たっては、KDDI(au)とソフトバンクがZTEの5Gスマートフォンを採用したことが注目されました。5GにおけるZTEの強みはどこにあるのでしょうか。
王氏:1つは通信技術です。キャリアが採用する通信機器には違いがあり、安定した通信を実現するには端末に採用するチップセットと、ネットワークの技術的な相性の検証が重要なのですが、それは手引き通りに進めてもうまくいくとは限らないものなのです。
ZTEは端末からネットワークまですべてのソリューションを持っており、他社よりも早く検証できる体制を備えています。それによってキャリアに技術的な安心感を持ってもらえるのが強みとなっているのです。
もう1つはスケールメリットです。これからは5Gを普及させるためにも低価格の端末が求められますが、それにはチップセットを中心とした部品を安価に調達する必要があります。ZTEはグローバル規模でのスケールメリットを持ち、日本市場でもそれを十分に生かして低価格での端末供給を実現していることから、よりコストパフォーマンスが求められる今後は一層期待していただければと思います。
―― 日本では電気通信事業法改正の影響もあって低価格端末へのニーズは高まっていますが、一方で現在もなお、ハイエンド端末が売れていることもまた確かです。ZTEとしては低価格モデルだけでなく、ハイエンドモデルまで幅広くラインナップをそろえる考えはないのでしょうか。
王氏:ZTEではミドルからエントリーの市場を集中して狙い、その中にZTEのフラッグシップモデルの技術を導入することで、コストパフォーマンスの高い端末を提供していきたいと考えています。Wi-Fiルーターなど通信に特化した端末や、ローパワーのIoT端末なども継続して取り組んでいく考えです。