フライバイ観測にも期待!

前述のように、小惑星1998 KY26への到着は2031年7月と、かなり先になるものの、その前のイベントとして楽しみにしたいのが、2026年7月に行う小惑星2001 CC21のフライバイ観測だ。この小惑星の素性は、1998 KY26以上に分かっていない。形状は不明。アルベド(反射率)が分からないため直径も不明だが、0.15と仮定すると700m程度と推測される。

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    ミッションの各フェーズにおいて、それぞれ科学観測を実施する計画だ (C)JAXA

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    訪れる2つの小惑星について、これまでに分かっているのはこの程度 (C)JAXA

小惑星のタイプはL型。このタイプは小惑星の中でも数が少ない“変わり者”で、探査機による直接観測の前例はまだ無い。地上からのスペクトル観測では、太陽系の最初期にできたと思われる白色包有物(CAI:Ca-Al-rich inclusion)との類似が見られるそうで、近くから観測して確かめられれば、「サイエンス的な成果は大きい」(渡邊氏)という。

ただ難しいのは、これがフライバイ観測であることだ。秒速5kmという相対速度で通過する、すれ違いざまに観測することになるのだが、はやぶさ2はもともと、ランデブー向けに設計されており、カメラだけを回転させるようなフライバイ観測向けの機能は持っていない。どうやって観測するかについては、今後検討していく。

接近する距離も未定だが、航法誘導制御担当の三桝裕也氏は、「アイデアの1つとして、たとえば100kmとか非常に近いところからの撮影に挑戦することを考えている」とコメント。しかし最接近するタイミングだと、向きが急激に変わって観測が難しいため、撮影はその前後の少し離れた場所から行う可能性が高いようだ。

拡張ミッションにおいて、フライバイ観測までの期間は5年半ほどあるが、この間は、黄道光観測や系外惑星観測にも利用する計画だという。はやぶさ2の冒険は、地球帰還後も、まだまだしばらく楽しめそうだ。

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  • 黄道光観測(左)や系外惑星観測(右)も実施する予定だ (C)JAXA