米中の政治摩擦に端を発した制裁で苦境に立たされるHUAWEIが、スマートフォン以外の新製品を発表しました。近年のHUAWEIは、9月上旬にドイツで開催されるコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA」に合わせてスマートフォン向けの新SoCを発表し、それを搭載したスマートフォンを秋に発表……というのが通例でした。現状、制裁の影響でSoCの新規開発が滞っているせいか、製品発表のコーナーでは新しいスマートフォンに関する情報はありませんでした。
新型コロナウイルスの影響を受けてのオンライン発表会で、ノートPC、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホンの3種6製品が発表されました。「Seamless AI Life Product」と銘打っての発表会で、AIを活用したシームレスな連携をアピールする製品群です。発表会に登壇したのは、今回もConsumer Business GroupのCEOであるRichard Yu氏でした。
HUAWEIはこれまでも、スマートフォンとIoT製品を中心とした「1+8+N」戦略を打ち出してきました。「1」はスマートフォンを意味し、ユーザーに最も近い場所で戦略の入り口となるものです。「8」は同社が手がける8種類の製品。PC、タブレット、スマートTV、スマートウォッチなどのウェアラブル製品、Bluetoothヘッドホンといった製品です。スマートフォンと合わせてこの9種類をHUAWEIは開発していますが、加えてパートナーが開発する多くのIoT製品群が「N」です。
こうした製品群をシームレスに連携させ、ユーザーの生活をより良くしてくというのがHUAWEIの戦略です。今回の新製品はこの「8」に属する製品群の一部となります。
ワイヤレスイヤホン
最初の発表はワイヤレスイヤホン。まずは完全ワイヤレスイヤホンとして「FreeBuds Pro」です。プロというネーミングの通り、最上位モデルに位置づけられます。「Iconic Cubicデザイン」による、曲面と直線を組み合わせた特徴的でコンパクトなデザインです。耳にフィットする自然なカーブを描き、イヤーチップは3種類を同梱するため、多くの人の耳にマッチするとしています。スマホアプリを使うことで、耳へのフィット状態を確認できるようになっているそうです。本体カラーはシルバーフォレスト、カーボンブラック、セラミックホワイトの3種類。
音質も重視しています。11mmのダイナミック型ドライバーを採用し、ダイナミックイコライザーで没入感のあるサウンドを実現しているそうです。ウィンドノイズを減らすデュアルアンチウィンドノイズ機能によって、外出時でも音声通話がクリアに行えるとしています。3つのマイクを内蔵するほか、音声を確実に認識するという骨伝導センサーも搭載しました。
ANC(アクティブノイズキャンセリング)も備えています。2つのマイクで周囲の騒音を削減するANCは、「業界で最高性能のノイズキャンセリングを提供する」とYu氏は強調します。このANCと、環境騒音を検出する機能を組み合わせた「ダイナミックノイズキャンセリング」を実装しました。
それぞれのマイクと赤外線センサー、加速度センサーを使ったハイブリッド音響センシングシステムにAIのアルゴリズムを組み合わせ、リアルタイムに環境ノイズを認識。静かな場所、屋外、飛行機など騒音の大きい場所……といったシナリオに応じて、自動的にモードを切り替えてノイズキャンセリングをしてくれます。
密閉式のイヤホンは圧迫感が大きくなることもありますが、空気の通り道を確保して快適に装着できるモードも搭載。2つのマイクで周囲の音も取り込めるそうです。通常の会話をしているときも、マイクが人の声を増幅してくれるため、騒音下でもクリアに会話できるとしています。
2つのアンテナを内蔵したことで接続性も改善。干渉も抑えて音が途切れにくくなりました。スマホとPCなど2つのデバイスにペアリングできるため、シームレスにデバイスを切り替えられます。Mac、Windows、iOS、Androidをサポートし、例えばタブレットに接続して動画を観ているときにスマホに着信があったら、FreeBuds Proに触れるだけでスマホへと接続を切り替えて着信に応答する……ということができるようです。発売はグローバルで10月。価格は199ユーロになります。
同時に、首かけ式のワイヤレスイヤホン「HUAWEI FreeLace Pro」も発表。「究極のノイズキャンセリング」(Yu氏)を備えたとし、14mmの大型化したダイナミックドライバーなどを搭載して音質を改善。最大40dBの効果があるというANC機能を持っています。
3マイクによるクリアな音声とAIによる音量調整、24時間のバッテリー駆動、5分の充電で5時間駆動する急速充電といった機能を備え、発売はグローバルで9月、価格は119ユーロとなっています。