シャープは、業界最大クラスとなる120V型8K液晶ディスプレイ「8M-B120」を、2020年9月下旬から発売する。

  • 120V型8K液晶ディスプレイ「8M-B120」

    120V型8K液晶ディスプレイ「8M-B120」

2020年1月に開催されたCES 2020のシャープブースで参考展示していたもので、120V型の大画面と、8Kの超高精細表示による表現力を生かして、業務用ディスプレイとして提案。店舗やショールームでのデジタルサイネージのほか、オフィスにおける設計図の表示、デザインレビューなどでの利用、絵画や彫刻などの美術品のデジタル展示や、パブリックビューイング用ディスプレイとしての利用を想定している。

受注生産で対応。市場想定価格は1,450万円(税別)となっている。

  • これまでも世界最大級の大画面をうたい海外の展示会などで参考展示していた

直下型のLEDバックライトを採用。7,680×4,320ドット、約10億7,000万色を表示。コントラスト比は3500:1、輝度は600cd/m2を実現。表示画面サイズは、横2657.2×縦1494.7mm、スピーカーは10Wを4基、15Wを2基搭載している。

シャープ 専務執行役員 ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏は、「120V型の大画面と、8Kの圧倒的な表現力で、ディスプレイの利用シーンを革新できる」とし、「素材の質感や、風景の奥行感までリアルに映し出すことができるため、自動車や住宅、家具などの大型製品の図面や映像も細部まで確認できる」とする。

  • 利用イメージ。120インチ8Kで圧倒的な表現力を発揮するという

HDR規格で収録された広い輝度情報を、画像処理エンジンで復元し、映像本来の素材の質感や、風景の奥行き感までをリアルに再現。フルHD映像や4K解像度の映像は、シャープの超解像度技術によって、被写体が本来持っている精細感を推測して、8K情報量にアップコンバートして高精細化して、表示する。

さらに、HDMI 2.1で規定された8K映像入力に対応。HDMIケーブル1本で、8K 60p/4K 120p映像を出力する機器と接続できる。また、HDMIケーブル4本を使用して、1系統の8K映像を表示することも可能だ。「4画面やフレキシブルなマルチ画面表示もできる」という。

  • 8M-B120の主な特徴

  • 超解像度技術でフルHD映像や4K解像度の映像もアップコンバートできる

8Kと言えばシャープと言われるようになりたい

シャープは、事業ビジョンに「8K+5GとAIoTで世界を変える」を掲げ、事業変革を推進。シャープの戴正呉会長兼CEOは、「8Kと言えばシャープと言われるようになりたい」と発言し、8K事業を、同社の顔に位置づける姿勢を示している。

  • シャープの「8K+5G」エコシステム構想のイメージ

すでに8Kのハードウェアとしては、世界に先駆けて8Kテレビや8Kカムコーダーを発売。8Kカメラ搭載のスマホや、ダイナブックによる8K映像編集PCシステムも製品化しており、「8K映像の撮影や配信が、誰もが気軽にできるようになり、8K+5Gを身近な世界にすることを目指している」(シャープの戴会長兼CEO)としている。

また、BtoB領域においては、8KインタラクティブミュージアムやCADシステムへの応用などのソリューション提案を進めているほか、企画やプロデュース、機器調達、運用、保守メンテナンスまでをワンストップでサポートする体制も構築している。

「撮影、編集、伝送、表示までの一貫したバリューチェーンの実現に向けて、様々な取り組みを行っている」(シャープの中山専務執行役員)とする。

また、シャープでは、2005年から、デジタルサイネージのビジネスに参入。複数のディスプレイを組み合わせて大画面を構築する「マルチディスプレイ」や「柱巻きディスプレイ」など、業界に先駆けた新たな提案を進め、商業空間や駅、空港などのパブリック空間におけるデジタルサイネージ活用の提案をリードしてきた。

さらに、デジタルサイネージのコンテンツ制作から、配信や表示、運用、管理までを直感的な操作で行えるソフトウェア「e-Signage」を開発。スタンドアロン型のオフライン運用から、クラウドサービスを使用した大規模配信にも対応。今後は、8K対応も図っていくという。

2019年度からは、8Kソリューションを展開する基盤を構築。これをベースに、5Gとのシナジーを強化。8Kエコシステムのバリューチェーンを拡大してきた経緯もある。

今回の120V型8Kディスプレイ「8M-B120」は、こうした8Kやデジタルサイネージでの経験を生かしながら、新たな提案を行っていくことになる。

BtoB領域で8K映像ソリューション展開へ

なお、シャープでは、ディスプレイデバイス事業を10月1日付で分社化して、シャープディスプレイテクノロジー株式会社(SDTC)を設立する予定だ。

その一方で、シャープの中山専務執行役員は、BtoB領域における8K映像ソリューションへの取り組みとして、「8Kインタクラティブミュージアムソリューション」、「CADソリューション」、「放送ソリューション」、「医療向け8Kソリューション」の4つの提案を行っていることを示す。

8Kインタクラティブミュージアムソリューションでは、間近で見たり、直接手で触れたりすることが難しい国宝や重要文化財などの美術品や工芸品を、8Kの高精細で表示し、直感的なタッチ操作で拡大したり、回転させたりする、新たな体験をもとに鑑賞できるシステムを提案する。

「これまで肉眼で捉えられなかった細部までを鑑賞することができ、新たな発見につながる。美術館や博物館、観光施設などに向けて、本格的に展開していく」とする。

  • 美術館での利用イメージ

2020年7月29日~8月2日までの期間限定で、東京・上野の東京国立博物館において、重要美術品である「大井戸茶碗 有楽井戸」の8K画像コンテンツを、茶碗型コントローラーで操作するといった展示も行っている。

  • 8Kインタクラティブミュージアムソリューションの概要

CADソリューションでは、8Kの高精細表示の特徴を生かして、デザイン画や設計図、CAD図面などを、細部までリアルに表示。「試作機の確認が、図面上でも行え、開発スピードの短縮や業務の効率化にも貢献する」と述べた。

放送ソリューションでは、入力装置である8KカメラからIP伝送し、5Gを活用したシステム実証を行っていることを紹介。リアルタイム8K再生の実現に向けた開発を進めていることを示す。「放送向けソリューションでは、表示デバイスとして様々なサイズの8Kディスプレイを用意しており、さらにラインアップを拡充していく」としている。

  • 8Kカメラから5G伝送技術、8Kディスプレイによる再生までバリューチェーンを組む放送向けソリューション

医療向け8Kソリューションにおいては、内視鏡、遠隔医療、医療教育、病理検査など、様々な分野で8Kテクノロジーを活用したソリューションを提案していく考えを示す。「遠隔医療においては、5Gとの組み合わせによって、新たな映像ソリューションの実現に取り組みたい」と意欲をみせた。

  • 8Kは医療分野にも貢献できる

シャープでは、8Kの普及においては、コンシューマ領域よりも、まずはBtoB領域における提案が重要であると位置づけている。4つのソリューションによって、具体的な事業領域を示しながら、今後も、BtoB向け8K映像ソリューションを強化していく姿勢をみせている。