オンライン展開の可能性

――「D4DJ」は「アルゴナビス」同様"Sound Only Live"を6月に実施されています。

渡邊:ファンの皆さんからもライブを心待ちにする声などをいただいておりましたので、この状況下でも何か届けられないかと考えていました。そんなときに、北岡さんが"Sound Only Live"をやるという噂を耳にし、どうやって進めたのかなどを直接聞きました。

――実際にやってみていかがでしたか?

渡邊:「アルゴナビス」とはお客さんの層が違うので、どのような反応が届くのか不安な部分もありましたが、SNSを通じてリアルタイムの盛り上がりをつくることができたと思います。皆さんのコメントを見ると"Sound Only Live"をきっかけにリアルでのライブに興味を持ってくださった方も多いと感じました。DJイベントならではの空気感を現地で感じたい、と思ってくれた方も多いのかもしれません。

――4thライブは6ユニットが集まる初のイベントであり、新曲の披露もたくさん予定されていたと聞いています。

渡邊:はい。残念ながら観客の動員は叶わなかったのですが、7月26日に開催した無観客配信ライブMixChannel Presents「D4DJ CONNECT LIVE」では、ようやく皆さんに6ユニットそろった姿をお届けすることができました。ライブ初登場だったLyrical Lilyも好評いただけたようで安心しています。今後は、秋からのアニメ・ゲーム本格始動に向けてキャラクターとキャストさんと、のリンクをより深く意識することにも本腰を入れていかなければなりません。

――プロジェクトにより大きく差があるんですね。

渡邊:「アルゴナビス」はすでにアニメが放送されている分、ファンの皆さんに世界観を理解していただいていますが、「D4DJ」にはまだその土台がほとんどない状態です。同じ座組で成功に導くことは難しいので、「D4DJ」ならではの見せ方を考えていかなければいけません。10月に開催を予定しているライブ「グルミク Presents D4DJ D4 FES. ~LOVE!HUG!GROOVY!!~」では、そこをより意識していきたいです。

――「BanG Dream!」は、過去のライブ映像をキャストさんの実況付きで配信するなどのオンライン展開を行っています。

吉村:「BanG Dream!」はこれまでのライブ映像といった過去資産が充実していましたので、それを有効活用できないかと考えました。上映会という形でもよかったのですが、それだとリアルタイムでお客さんと盛り上がっていくライブ性があまりないと思ったんです。そのため、キャストさんが実況するという方向性で話がまとまりました。 キャストさんの起用については、ライブ出演費の補填というのも理由のひとつです。弊社では、ライブというひとつの仕事がなくなった彼女たちに、少しでも別の仕事をしていただき出演費の補填をする、という方針がありました。キャストの皆さんはライブを作るうえでの功労者ですので、彼女たちのために精神面でも経済面でもできることはしたい、という思いがあったんです。

――実況に関しては、各キャストさんがそれぞれの場所から行うリモート形式で実施されていました。

中野:例えば5人のキャストさんがリモートで実況するとなれば、基本的には5カ所それぞれから配信を行うことになります。そのため、配信機材をそれぞれに送り、ある程度配信に堪えられる環境も各々で作らなければなりません。まずは配信する前の準備が大変でしたね。 また、ライブの音とキャストさんの声を同時に流すという実況形式だったので、どちらをどのくらいの音量にするのが適切なのか悩みました。お客さんの中には、キャストさんのコメントを重視したいという方もいれば、ライブをじっくりと見ながら実況を聞きたいという方もいる。どちらの方にも満足していただけるようなバランスに調整するのは、苦労しました。

――実際に配信をやってみて、手ごたえはありましたか?

中野:YouTubeの「バンドリちゃんねる☆」で過去に行った生放送のなかでは最高の視聴数となりました。そこに関しては手ごたえを感じていて、今後も何かしらの形で展開していきたいとも思っています。

今後のオンラインでの展開予定は?

――今後、オンラインでどのようなライブ・イベント展開をする予定か教えてください。

北岡:「アルゴナビス」では、まず9月にリアルでのバンド活動も行っている「GYROAXIA(ジャイロアクシア)」が無観客ライブを実施し、その模様を配信する予定となっています。また、今後もライブを積極的に実施する予定ですが、お客さんを入れて実施するかどうかはまだ検討段階です。しばらくは無観客ライブとお客さんを入れてのライブどちらにするのか、試行錯誤しながら実施していく形になると思いますね。

――無観客ライブは"Sound Only Live"ともリアルでのライブとも意識する点が異なるかと思います。

北岡:そうですね。演奏する側はお客さんからのレスポンスがないので、怖さがあると思います。盛り上がりの実体が見えず、困惑してしまうかもしれません。そういう意味では、先ほどお話した「歓声」が重要になってくると思います。無観客なので生の「歓声」は難しいですが、配信上だけでなく、会場内にも収録した「歓声」を流すことで、キャストさんのモチベーションを上げるような取り組みは行いたいですね。

あと、キーになると感じているのは、カメラワーク。本来のライブなら演奏者を見ながらスクリーンも見られますが、配信だとその形はなかなか難しい。一方で、カメラの設置台数は多くなり、配置などの幅も広がるので、普段とは異なる角度からキャストさんを映せると思っています。7月25日の開催した無観客ライブ ARGONAVIS Special Live -Starry Line-ではステージの中からキャストさん映したのが非常に良い反響を頂きました。配信ならではの演出は積極的に取り入れていきたいです。

――カメラワークは、配信ならではの楽しみ方にもつながる部分かもしれません。「D4DJ」は先ほど課題があるというお話でしたが、どのような展開を予定されていますか?

渡邊:今後行うライブは、基本的に情勢を見てお客さんを入れるかどうかギリギリまで検討します。いずれにせよ、オンラインでのライブ配信は検討していきたいですね。今まではライブ・ビューイングという形でライブを映画館で上映することが多かったですが、オンライン配信であれば、家でもライブが見られるようになります。また、会場のキャパシティに関係なく、誰でもライブが見られるのもメリットだと感じていますので、配信が距離や収容人数の問題を解決する手段のひとつに繋がるかもしれません。アーカイブ配信を行い、現地に行った人がオンラインでも再度ライブを見て違いを楽しむ、という展開もしてみたいですね。

吉村:「BanG Dream!」もお客さんを入れる・入れないに関わらず、配信でのコンテンツ提供をしていきたいと思っています。これまで距離やキャパシティの問題で見に行けないという声もあったので、その需要にも応えていきたいです。極端な話、これまでは現地に行くか・行かないか、1か0かの選択肢しかありませんでした。そこに配信が加わったことで、現地へ行かなくても当日にライブが楽しむことができるという選択肢が増えたんです。今後の音楽のライブビジネスは弊社だけでなく、業界全体として変わっていくんじゃないかな。

中野:「BanG Dream!」としては他プロジェクト同様に、キャラクターに寄り添った形での配信ができないか検討しています。今後の発表を楽しみしていてください。