ソニーモバイルコミュニケーションズは2020年8月18日、同社のハイエンドスマートフォン「Xperia 1 II」など3機種を、SIMフリースマートフォンとしてソニーストアなどで販売すると発表しました。SIMフリー版のXperiaは、キャリアから販売されているモデルとどのような点が違っており、どのような人が選ぶべきモデルなのでしょうか。

純正のSIMフリーXperia、満を持しての販売開始

ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」シリーズといえば、国内では長年キャリアからのみ販売されていました。ですがここ最近の販売不振を受け、2019年には複数のMVNOから「Xperia Ace」のSIMフリーモデルが販売されるなど、ようやく国内での販路拡大に柔軟な姿勢を見せつつあるようです。

そんな中、同社は2020年8月18日に新たな取り組みを打ち出しました。それは同社のハイエンドスマートフォン3機種をSIMフリー市場に向けて本格販売するというものです。具体的には2019年に販売された「Xperia 1」「Xperia 5」のほか、2020年に発売されたばかりの5G対応最新モデル「Xperia 1 II」も販売するとのこと。ラインナップを見てもSIMフリー市場に対する本気度を見て取ることができるでしょう。

  • ソニーモバイルコミュニケーションズは2020年8月18日、「Xperia 1 II」「Xperia 1」「Xperia 5」の3機種をSIMフリー市場向けに投入すると発表。発売日はXperia 1/5が8月28日、Xperia 1 IIが10月30日となる

なぜハイエンドモデルをSIMフリー市場に?

なぜ同社がハイエンドモデルをSIMフリー市場で販売するようになったのかというと、それは2019年に販売された「Xperia 1 Professional Edition」の販売が大きく影響しているようです。

これはモニターの色温度を個体毎に調整し、有線LAN接続に対応するなど、クリエイターやゲーマーなどに向けた特別仕様のXperia 1で、キャリア経由ではなくソニーストアでSIMフリー端末として販売され、価格も143,000円と非常に高額でした。

しかしながらソニーモバイルコミュニケーションズによると、高額にもかかわらずこの端末の販売が好調だったとのこと。しかも購入者のアンケート調査では、「SIMロックフリーだから」、つまりキャリアに縛られることなく利用できる、SIMフリー仕様だからというのが購入理由の最上位に挙がっていたのだそうです。

  • 2019年に発売された「Xperia 1 Professional Edition」。モニターの色温度を調整するなどクリエイターなどに向けたこだわりの特別モデルだが、SIMフリーであることが購入理由の上位に挙がったようだ

そうしたことから同社では、高額なハイエンドモデルをSIMフリーとして販売しても市場性があると判断、今回の本格展開に至ったようです。それゆえ今回発表された3モデルはソニーストアだけでなく、一部量販店でも販売されるなど販路も広がっています。

仕様面での違いは3点、価格には要注意

とはいえこれら3モデルは既に携帯3社から販売されているものでもあり、SIMフリーであること以外にどのような点が違うのか? というのは気になるところ。実際に内容を見ると、大きく分けて3つの違いがあるようです。

1つ目はSIMスロットの数です。キャリアモデルはいずれもシングルSIM仕様で、SIMロックを解除しても2枚のSIMを挿して利用することはできませんが、SIMフリーモデルは3機種ともにデュアルSIM仕様で、2枚のSIMを同時に利用することが可能です。ちなみにXperia 1 IIは一方の回線のみ5G対応で、もう一方は4Gのみの通信となるそうです。

2つ目がRAMとストレージで、SIMフリーモデルはいずれもキャリア向けに販売されたモデルより増量されています。Xperia 1とXperia 5はストレージが64GBから128GBに増量されているほか、Xperia 1 IIはRAMが8GBから12GB、ストレージが128GBから256GBへと、それぞれ増量されています。

そして3つ目はフルセグとFeliCaへの対応です。キャリアモデルは3機種ともに双方の機能を搭載していますが、SIMフリーモデルはいずれもフルセグには非対応。またXperia 1はFeliCaにも非対応で、「おサイフケータイ」などが利用できない点にも注意すべきでしょう。

  • SIMフリー版のXperia 1 IIの概要。基本的な機能・性能はそのままに、SIMフリー・デュアルSIM対応となるほか、RAMとストレージの増量がなされている一方、フルセグは省かれている

ちなみにSIMフリー版の市場推定価格は、Xperia 1 IIが124,000円前後、Xperia 1が79,000円前後、Xperia 5が69,000円前後とのこと(いずれも税別)。

キャリアで購入する際は利用可能な、一定期間後に端末を返却することを条件としてスマートフォンを安価に購入できる、端末購入プログラムもないことから価格は高めという設定のようです。

ただ端末保証に関しては、ソニーストアで購入した場合に限られますが、月額500円または年額5,000円で「Xperia ケアプラン」という独自の保証サービスを付加することが可能。キャリアのような保証サービスが欲しいと思っている人でも安心して購入できそうです。

  • ソニーストア限定で提供される「Xperia ケアプラン」。月額500円または年額5,000円を支払うことで、低価格での交換や修理が可能になる

ソニー製機器との連携にも注目

では、今回のSIMフリー版はどういった人が選ぶべきかというと、1つはやはりソニーやXperiaシリーズのファンということになるでしょう。以前より端末にキャリアのロゴが入ることや、キャリア製のアプリがプリインストールされていることを嫌うファンの声は多く存在しただけに、ソニー純正となるSIMフリーモデルの登場を喜ぶ人は少なからずいるのではないでしょうか。

しかもSIMフリーモデルはいずれもキャリアモデルより性能が高く、Xperia 1 IIに至ってはSIMフリー版限定の「フロストブラック」も用意されています。人とは違うXperiaを使いたいなら、SIMフリー版を選ぶべきでしょう。

  • Xperia 1 IIはキャリア向けのブラックに代わり、マット調で指紋が付きにくいオリジナルカラー「フロストブラック」が用意される

  • Xperia 1 II(XQ-AT42)のフロストブラック

またXperiaのハイエンドモデルは、21:9比率のディスプレイや3眼カメラ、高性能のチップセットと通信機能など充実した機能を備えており、デジタル一眼レフカメラやゲーム機など、他のソニー製デバイスとの連携も可能なことから、そうしたデバイスと連携しながらの活用を考えている人にもおすすめできるでしょう。ソニーモバイルコミュニケーションズとしても、店頭などではそうしたソニー製デバイスとの連携をアピールしながらSIMフリー版を販売していくことを考えているようです。

高性能Xperiaを使いたいソフトバンクユーザーにも

そしてもう1つ、Xperia 1 IIはソフトバンクから販売されなかったことから、Xperia 1 IIを利用したいソフトバンクユーザーにもSIMフリー版はお勧めできそうです。

ちなみにSIMフリー版のXperia 1 IIは、国内キャリアが使用している5Gの周波数帯であるn77 / n78 / n79をカバーしていることから(n79はアップデートでの対応を予定)、n78を使っているNTTドコモとKDDIだけでなく、n77を使っているソフトバンク、そして楽天モバイルでも使える可能性がありそうです。

一方で少しでも安くハイエンドモデルを持ちたいというのであれば、やはり端末購入プログラムがあるキャリアから購入すべきでしょう。Xperiaのハイエンドモデルは映像や音楽、ゲームなどにこだわりのある人に向けた端末に仕上がっているだけに、SIMフリー版も自分の“こだわり”を考えた上で選ぶのが良いといえそうです。