では、MF KESSAIは今後どのようなマーケティング戦略でビジネスを推進していくのだろうか。冨山氏は、この点について「ファクタリングについての正しい知識を啓蒙し、中長期的なビジネスパートナーとしてMF KESSAIを選んでくれることを目指している」と説明する。

ここで普通ならば「企業の利用を促進するために、中小企業の経営者にリーチできるマーケティングを展開していく」と答えるところだが、そうではなく冨山氏は「ファクタリングについての正しい理解を促す」ことをマーケティングの命題として掲げている。この言葉の背景には、ファクタリングをめぐる「手数料」の課題があるのだという。

ファクタリングの取引では、売掛金を元手に資金調達をする際、売掛金の一部を手数料としてファクタリング事業者に支払う。MF KESSAIは月あたり1%~4%という低水準で手数料を設定しているのだそうだが、ファクタリング事業者のなかには10%以上という非常に高い手数料を設定しているケースもあるのだそうだ。ファクタリングを利用しようとする企業は、運転資金の確保で急を要しているとも言える。見方次第では、その切迫性に付け込んでいるのではないかとも捉えられる。

こうした状況に対して、冨山氏は「高額な手数料で1回限りのファクタリング取引を行い、“このあと御社のビジネスがどうなるかは知りません”というスタンスでは、ファクタリングというビジネスそのものが成長しない。MF KESSAIは企業の中長期的なパートナーとして、継続的な資金繰り支援ができる形を目指している」と語り、こうしたスタンスを業界全体に浸透させたいともしている。

「MF KESSAIだけがそういうスタンスでも、業界全体は健全に成長しない。他社とも協議しながら業界全体でどのような方法が必要かを考えていきたい」(冨山氏)

加えて、ファクタリングに対する正しい考え方を経営者に啓蒙するという活動も重視しているという。具体的には、経営者にリーチできる経済紙にファクタリングの正しい知識を認知・啓蒙する目的の広告を展開するなど、ファクタリングそのものの理解、ブランディングを目標とした広告展開を行っているのだそうだ。

例えば、ファクタリングを理解する上で重要なのは、“ファクタリングにも限界がある”ということを知っておくことだという。ファクタリングは将来の入金が約束されているもの=売掛金を原資に資金調達をするが、当然それだけでは事業資金が十分ではない場合もある。今後の売上見込み次第では、再び資金繰りは深刻な事態を招いてしまうだろう。加えて、その際に高額な手数料が掛かれば将来の運転資金が大きく目減りしてしまう恐れもある。そうした際には、ファクタリングがベストな選択肢にはならないかもしれないのだ。

この点について、冨山氏は「コロナ禍の状況にあっても、早い段階で中長期的な資金計画を立て、今後の状況に応じて見直していくべきだ」と語る。ファクタリングは手元の債権を早期に資金化できる一方で、目先の資金繰りだけを見ていては中長期的な事業の継続や成長は見通せない。企業経営者にはそれを理解してもらった上で、戦略的にファクタリングを活用してもらうことが重要なのだ。

最後に、冨山氏はコロナ禍が続くなかMF KESSAIの今後のビジネスについて、「金融機関がまだサポートしきれない部分をフィンテックが担っていくことは、コロナ禍以前も、これからも変わらない。金融機関による事業資金の支援やエクイティ・ファイナンス(増資によるVCなどからの資金調達)などと並んで、ファクタリングをはじめとするフィンテックが企業にとって資金繰り支援の選択肢となるように、MF KESSAIではこれからもさまざまなファイナンスニーズをカバーできるようなサービスを生み出していきたい」と締めくくった。