バトルシーンが鮮明じゃない!? 今後の修正&4K BD化に期待

ただし、今回の4Kヱヴァ放送を手放しで歓迎できるか?というと、そうとも言えない。理由は主にふたつある。

ひとつは、「ビットレートの低さとブロックノイズ」。筆者の録画・再生環境ではそこまでひどくはなかったが、『:序』の山間部において大量の砲撃を浴びせられる第5の使徒(イカのようなカタチの彼)のシーンで、盛大なブロックノイズが目立ったところが何カ所かあった。ネット上の書き込みを見ているとこの他にも、ゼーレのモノリスたちと碇ゲンドウらが話し合っている暗めのシーンなどでブロックノイズが目立った……という声をいくつか見かけた。

筆者のREGZAでは録画データのビットレートをきっちり確認できたわけではないのだが、今回の4Kヱヴァのビットレートは4K放送のレート(最大33Mbps)よりもかなり低かったのでは?という見方もあるようだ。

もうひとつは、「一部のバトルシーンが鮮明ではない」問題。使徒やエヴァがATフィールドを展開したり、砲爆撃が繰り返されるシーンでは画面上の光の点滅が非常に激しくなるのだが、そういったシーンが今回の放送ではグレーにくすんだ映像になってしまい、本来迫力のあるバトルが非常に“ネムい”、低コントラストな映像になっていたのだ。

他にも、初号機が第三新東京市に落ちてくる使徒に向かってしゃにむに疾走するシーンで、エヴァの足元(地面付近の情景が素早く流れる画面下のあたり)が暗くマスキングされるといった修正もされていた。これらはBD版や公式YouTube版にはない、4K放送版のみの修正ポイントのようだ。

実は今回、NHKでは4Kヱヴァの放送にあたって「光点滅等の映像手法が視聴者の健康に及ぼす影響を防止するためガイドラインが定められており、本作品もそのガイドラインに沿った修正をしている」と事前に案内していた。俗に言う“ポケモンショック”対策のことと思われるが、NHKと民放各社が定めた「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」に則った編集であるのでこれは致し方ない。

筆者は最初、これに気付いていなかったので『:破』序盤の第7の使徒(水飲み鳥みたいなアイツ)対アスカ戦で、映像の鮮やかさが一気に失われたのを見て「あれ? うちのREGZA壊れたかな?」と焦り、電源オン/オフや画質調整を試みながら数時間を費やしてしまったが……。

どちらも、高画質な4Kヱヴァに期待したいちファンとしてはガッカリなポイントではあるが、「映画館で何気なく見ていたあのバトルシーン、実はこんなに光の明滅が激しかったのか」という新しい気付きを得られ、放送局側としても人気コンテンツの4K化・放送にあたってさまざまな知見を得られたのではないか……とポジティブにとらえることにした。

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    カラー公式YouTubeチャンネルに上がっているヱヴァ本編を55X920で再生しつつ、信号情報を確認。Webサイト上でチェックしたところビットレートは15〜20Mbpsで、地デジ並みかそれ以上の画質といった印象。4K画質には及ばないものの十分楽しめる画質で、スマホでヱヴァ本編をサクッと見られる時代になったことに改めて驚いた

シン・エヴァンゲリオン劇場版の公開がいつになるか、新型肺炎の影響が収まらない現状では想像もつかない。だが、年単位でエヴァンゲリオンの新作を待ち続けてきた(若干逃げていたが)筆者にとっては、劇場公開できる状態までこぎ着けたことが分かっているだけでも安心できるというもの。「作ったけど公開はやめます」とか「この現状を終息させた勇者にのみ完結編の鑑賞券を与える」などと無情な宣告を言い渡されているわけではない。皆でStayHomeしつつ、各々できることをこなせばいずれ終息させられるはずなのだ。

未曾有の大災害の先にシンジが、彼らを取り巻くキャラクターたちがいったいなにを見出すのか。筆者はそれが明らかになるであろう『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の新たな公開日発表を引き続き待っている。そして劇場公開まで、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 4K Remastered (true) 2』だとか『The End of ヱヴァンゲリヲン新劇場版 ∞(Infinity)』といったような、“高画質ヱヴァ”の実現に向けた追求が続けられることにひっそり期待している。

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    真希波・マリ・イラストリアス(右)は、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でも重要な立ち位置のキャラクターとなりそうだ。漫画版エヴァの設定が映画とどうリンクするのか、興味は尽きない
    (C)カラー