パッと見でわかる、4Kリマスターのありがたみ

新型肺炎の影響を受け、カラーは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ3作品をYouTube公式チャンネルで無料公開している。4月29日23時59分までの期間限定だが、スマートフォンさえあればいつでもどこでもヱヴァの世界を楽しめるということで、配信開始から約15時間で100万回再生を突破するほどの人気ぶりだ。

いきなり4Kヱヴァの映像に圧倒されて心の臓を止められるのもちょっと怖いので、まずはYouTubeバージョンで『:序』、『:破』のストーリーをおさらいしよう。

  • NHK BS4K ヱヴァンゲリヲン新劇場版

    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ3作の、YouTubeでの無料公開は4月29日23時59分まで
    (C)カラー

舞台は「セカンド・インパクト」と呼ばれる未曾有の大災害から復興しつつある日本。14歳の少年・碇シンジは、疎遠だった父・碇ゲンドウのいる第3新東京市(箱根)に呼び出され、人型兵器「エヴァンゲリオン初号機」に乗って「使徒」と呼ばれる謎の巨大生命体と戦うことになる。内向的なシンジはエヴァに乗る理由を見いだせず、大人の前から逃げ出すこともあったが、直属の上司であり保護者役も買って出た葛城ミサトや、同じエヴァパイロットの綾波レイと関わりあい、襲い来る使徒を倒していく中で、“戦っているのは自分一人だけではない”ことを知る。ここまでが『:序』だ。

『:破』ではさっそく第7の使徒が襲来するも、真紅のエヴァンゲリオン2号機を操る勝気な少女、式波・アスカ・ラングレーがまたたく間にこれを殲滅。シンジとアスカはミサトの命で彼女の家に同居する事になり、レイを加えた3人で使徒殲滅のミッションを完遂するなど、行動を共にしながら交流を深めていき、それぞれに“これまでに感じたことのない感情”を抱くようになる。

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    真紅のエヴァンゲリオン2号機を操る勝気な少女、式波・アスカ・ラングレー
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    第8の使徒殲滅のため、第三新東京市を疾走するエヴァンゲリオン初号機
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そんな中、シンジの学校にマリと名乗る少女(真希波・マリ・イラストリアス)が登場。マリも北極の施設で第3の使徒を倒したエヴァパイロットだが、シンジたちとは別行動を取るなど、謎多き人物だ。さらに、開発中のエヴァ3号機が米国から日本に持ち込まれ、アスカがテストパイロットとして志願して搭乗する。しかしそこでは、誰も予想しなかった過酷な運命が待ち受けていた……。

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    北極の施設で第3の使徒を倒した、謎多きエヴァパイロット、真希波・マリ・イラストリアス
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  • NHK BS4K ヱヴァンゲリヲン新劇場版

    『:破』ではUCCやローソン、パナソニック(Let’s note)、NTTドコモといったさまざまな企業がコラボし、貴重なヱヴァグッズを多数生み出した。シンジやアスカ、ミサトが劇中で使っていたヱヴァケータイ「SH-06A NERV」もそのひとつ
    (C)カラー

おさらいを済ませたところで、いよいよ4K放送版の『:破』を観てみよう。筆者宅にある、55V型の4K有機ELテレビ「REGZA 55X920」につないだ外付けHDDにDR画質(放送と同じ画質)で番組を録画しており、追加カットなどから考え合わせると内容はBD版「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION 2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.」とほぼ同一だ。

再生にあたって映像メニューは「映画プロ」、画面の明るさは「70」で、倍速モードは「オリジナル」にセット。ピュアダイレクトをオンにし、色温度を10段階のうち中間「5」に調整したほかは、デフォルト設定のままとした。

4Kヱヴァの映像をパッと見て分かるのは、青い空や赤い海、光沢感のあるエヴァ本体の色などがとてもクリアに描写され、ざわざわとしたノイズが目立たないこと。空や海、キャラクターの顔など淡いグラデーション部で出やすい濃淡の縞々(バンディング)もほぼ見当たらない。描線はすっきりとして違和感がなく、アプコンで目立ちやすいギザギザ(ジャギー)も、画面から1m程度離れた視聴距離からでは皆無と言えそうだ。冒頭のエヴァ仮設5号機と第3の使徒の壮絶バトルなど、暗い空間での描写も上々。今までのBD版の映像から1、2枚薄皮が剥がれ、白っぽさが取れたような印象を受けた。

  • NHK BS4K ヱヴァンゲリヲン新劇場版

    55X920に入力された信号情報をチェック

また、考察大好き人間(筆者)としてうれしかったのが、街中の看板から校舎内の備品やキャラの私物、エヴァの状況をモニタリングする各種グラフィックスにいたるまで、劇中のあちこちに現れる文字やテキストが、再生しながらそのまま読めるようになったこと。ものによってはカッチリしたCGで描かれていることもあり、テキストの見え方が劇的に向上した、というわけではないが、一時停止・コマ送りなどをしなくてもさまざまな情報がすっきり見えやすくなった。これも4Kリマスターの恩恵といえるだろう(もちろん、X920が備えるさまざまな映像補正も効いているものと思われる)。

率直に言えば、既に高い完成度をもつ2K BDの映像と比べてそこまで大きな差はないだろう……と思っていたのだが、今回の4Kヱヴァには良い意味で裏切られた形だ。こんなことなら、TVが壊れたら見られなくなるUSB HDDではなく、BDに書き出せる4Kレコーダーを買って録画すればよかったわね、ペンペン。。。

なお、映像がクリアで見通しが良くなったことで、街中や校舎内の引きのシーンにいるモブキャラの3DCGっぽい動きが目立つようになったが、個人的にはそこまで気にはならない。むしろ、セルアニメに本格的な3DCG表現を取り入れてきたカラーによる、映像の進化の過程が垣間見られる!という点で美味しい。

ちなみに、4Kヱヴァの映像は単純に4Kアップコンバートされただけかと思いきや、信号情報を見ると、より幅広い色表示ができるBT.2020規格の広色域表現に対応しているようだ。しかし、元の映像の色域はおそらく従来のBT.709のハズ。HDR信号を受信したときに表示されるHDRマークも出ていないので、4K/SDRの映像ということだろう。

色味に関しては、映像表示の設定をできるかぎり近づけた上で、シャープのBDレコーダー「BD-UT2200」から1080p出力したBD版の映像とも見比べてみた。しかし、明確な差はないようで、研究施設の配管の間や、明かりを落とした夜のシンジの部屋といった、暗部の見通しが若干良くなったように感じる程度だ。

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    シャープのBDレコーダー「BD-UT2200」からアプコンなしで、55X920に入力された2K BDの信号情報をチェック。4K Ultra HD Blu-rayも再生できる設定にしているため、一部の情報は実際の信号情報とは合っていないようだ