128層の3D NANDを中国メーカーが開発
中国清華紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC)は4月13日、128層のQLC(4ビット/セル)3D NAND型フラッシュメモリ(型番:X2-6070)の開発に成功し、複数の中国内の企業によってSSDおよびその他のストレージ製品向けに検証が行われたと発表した。
同製品は、128層に合計3660億個を超すチャージトラップメモリセルが搭載されており、記録容量は1.33Tビット、I/Oパフォーマンスは1.6Gbpsとしている。
また、併せてさまざまなアプリケーションニーズに対応可能な128層TLC(3ビット/セル)3D NANDを採用した512Gビット品(型番:X2-9060)もリリースするとしている。
同社は、今回の128層製品において、独自技術であるメモリセルアレイと周辺回路を別々のウェハで製造し、後で貼り合わせるというXtacking技術がVersion2.0(Xtacking 2.0)にアップグレードされたと説明している。また、同技術により、CMOS回路部分をNAND部分に比べて、より微細なプロセスで製造できるため、Xtacking 2.0ではチップ面積を増やすことなく、3D NANDのスケーラビリティを向上することができるようになったともしている。
128層3D NANDの最初のアプリはコンシューマSSD
YMTCのマーケティングおよびセールス担当上級副社長のGong Yi氏は、「NAND業界の新規参入ながら、YMTCは3年の間に32層から64層、そして96層をスキップして一気に128層にまで層数を増やすことができた。メモリセルアレイと周辺回路を別々に作り、貼り合わせる独自のXtacking2.0の実用化は、今後のNANDの可能性を高めることにつながる。そうした可能性を示す128層QLC製品の最初のアプリケーションはコンシューマSSDが想定されており、その後、エンタープライズSSD向けに提供し、将来の5GおよびAI時代の多様なデータストレージニーズに対応していく予定である」と述べている。
周回遅れから一気にトップグループの仲間入りか?
NANDの開発・製造の後発組で周回遅れとみられていたYMTCだが、以前から、先行する競合各社が手掛ける96層の開発をスキップして128層の実用化を目指すことで、一気にトップグループの仲間入りを果たす作戦を掲げていた。もし、今回の128層QLC品が高い製造歩留まりを確保でき、順調に市場に出荷できるのであれば、トップグループに実際に食い込んでくる可能性もでてくると言えるだろう。
なお同社は、新型コロナウイルス感染症によって多数の犠牲者が発生し、都市封鎖が続けられてきた湖北省武漢市に本社・工場がある。地方人民政府が、個人の外出禁止や工場の操業停止を命令する中にあっても同社は中国政府から特別な許可を得て、都市封鎖中でも操業を継続し、資材搬入や製品搬出も支障なく行われたという。中国政府の「米国製半導体に依存しない半導体国産化」の悲願達成のための特例的措置だったようだが、今回のYMTCの発表も武漢の封鎖解除に続いて中国政府による新型コロナウイルスを封じ込めたことをアピールする狙いがあるようだ。
旧正月(春節)休暇で帰省したYMTCの従業員が都市封鎖中であっても製造現場に復帰できるように、中央政府は便宜を図ったといわれているが、新型コロナウイルスの感染拡大に際し、各国政府の指示でそれぞれの国に帰国した海外の製造装置メーカーの装置立ち上げを支援する技術者たちをどうやって呼び戻すかが、今後、YMTCが同製品の増産体制を敷けるかどうかのカギを握ることになるだろうが、米国は米国からの中国への渡航を1月末より禁止しているほか、自国内での感染者の増大が続いているなど、新型コロナウイルス感染症に起因する問題は簡単に拭い去ることができそうにないようである。