LiDARスキャナがアップルならではのARコンテンツを生み出す可能性

新しいiPad Proには、iPadシリーズとして初めてダブルレンズカメラが搭載されています。12メガピクセル/F値1.8の広角レンズは2018年発売のiPad Proと同じですが、新たに10メガピクセル/F値2.4の超広角レンズを追加したダブルレンズ構成になっています。

  • iPad Pro背面のダブルレンズカメラ。その隣の列の中央に配置されている円形のデバイスがLiDARスキャナです

昨年秋に発売されたiPhone 11のダブルレンズカメラと何が違うのでしょうか。結論からいえば、iPad Proのダブルレンズカメラは本機のため専用に設計されている“別物”でした。

iPhone 11のダブルレンズは、どちらもセンサーの解像度が12メガピクセルです。超広角側の視野角はiPad Proが5度ほど広いのですが、iPhone 11 Proによる試写と比べてみるとiPhoneのほうが少し広いエリアを撮影できているようにも見えます。

  • 新しいiPad ProとiPhone 11 Proの広角・超広角レンズによる写真の撮り比べをしてみました。こちらは新しいiPad Proで撮影したサンプルです

  • こちらはiPhone 11 Proで撮影したサンプル。iPhone 11 Proのほうが超広角撮影時の視野が若干広いように見えます

  • iPad Proの超広角レンズで撮影した写真をペイントアプリに読み込めば、写真をトレースしながら独創的な風景のスケッチが楽しめます

何より大きな違いは、新しいiPad Proにはアップルのデバイスに初めて採用された「LiDARスキャナ」が載っていることです。

LiDARスキャナとは、カメラを向けた被写体に目に見えない光の粒子を当て、反射して戻るまでの時間をもとに被写体までの距離を測定するセンサーです。近ごろは、自動運転車の安全走行をサポートする新世代のセンサー技術としても注目されています。

自動車に搭載されるLiDARは、サイズやシステム規模がより大きなユニットになりますが、同じ仕組みの測距センサーを薄型のタブレットに載るサイズにまで小さくできた背景には、アップル独自の設計ノウハウが活かせたこともあるようです。

iPad Proに内蔵されているLiDARスキャナは、カメラを向けた方向にある5メートル先までの物体や壁面などを素速く正確に検知できます。LiDARスキャナは、通常の写真撮影や動画撮影に使われることはないため、カメラによる暗所撮影性能はあくまでダブルレンズの実力によります。LiDARスキャナが本領を発揮するのは、ARアプリやARゲームなどを利用する場面です。

  • ARアプリがきびきびと動くiPad Pro。新たにデベロッパに向けて公開されるARKitのAPIから、LiDARスキャナを活かしたアプリの開発が可能になります

アップルは、独自のARコンテンツの開発フレームワーク「ARKit」を提供しています。LiDARスキャナを活用するARコンテンツについては、iPadOS 13.4のローンチと同時に提供される最新のAPIをもとに開発できるようになります。今後、新たな工夫を凝らしたARエンターテインメントアプリがApp Storeに続々と追加されるのではないでしょうか。LiDARスキャナを搭載する新iPad Proなどのデバイスのほうがより快適に楽しめるAR対応のアプリやゲームも増えてくるかもしれません。

なお、iPad ProがARオブジェクトと現実風景との位置関係を認識しながらディスプレイに描画する際には、LiDARスキャナに加えてダブルレンズカメラが捉えた画像情報をもとに、パワフルなA12Z Bionicチップが解析処理を担うとのこと。2018年のiPad Proと同じARアプリで描画精度を比べてみたところ、人物の前後にARコンテンツを表示する際の認識精度は、新しいiPad Proのほうが優れていると感じました。

一段と成熟度を増したiPad Pro

Liquid Retinaディスプレイによる高精細な映像や、Dolby Atmos対応の迫力あふれるサウンドは、2018年のiPad Proの魅力がそのまま継承されています。もし、新しいiPad Proを購入したら、1年間無料視聴が楽しめるアップルの動画配信サービス「Apple TV+」を視聴することをおすすめします。

  • Apple TV+のコンテンツにも、Dolby Visionの高画質やDolby Atmosの迫力あふれるサウンドが楽しめるタイトルが数多くあります

  • 本体側面の両側に合わせて4基のスピーカーを搭載し、力強いサウンドが単体で再生できるのがiPad Proの大きな魅力です

画面の四隅をラウンドさせたフルスクリーンデザインや、アルミニウム製の上質なボディも、新旧iPad Proで受け継がれました。SoCやカメラが強化されているのに、厚さ5.9mmのスリムボディも維持しています。iPad Proのプロダクトデザインは、手を加えるところが見当たらないほどの完成度に到達しているのかもしれません。

デジタルガジェットが好きな筆者は、Smart Connectorに対応する新しいiPad Pro専用アクセサリーにMagic Keyboardが増えたことで、今後iPad Proがさまざまなアクセサリーや外部のデジタル機器と連携しながら新しい価値や体験を創り出すイメージが浮かんできました。例えば、Smart Connectorを介してiPad Proをカチャッと装着し、自動運転などの付加価値をもたらす次世代モビリティが実現したらワクワクすると思いませんか?

これから未来に誕生するスマートガジェットの原点を振り返ったら、「2020年に発売されたiPad Proがすべての始まりだったのかもしれない」と思い返す時が来るかもしれません。新しいiPad Proはいま、一番の成熟期と買いどきを迎えているといえるでしょう。