Microsoftは米国時間2020年3月10日、Windows 10X Emulatorイメージをバージョンアップした。インストール済みの環境では、バージョン10.0.19578に更新される。公式ブログによれば、Win32コンテナを含んでおり、Win32アプリが動作するようだが、筆者が試した限りでは正常に動作しなかった。

  • 少々珍しいWin32 10X EmulatorのBSoD

興味を引くのはベータ版エクスプローラーの存在だ。公式ブログでは言及していないが、「Show all」を押してアプリリストを展開すると、「BETA」と書かれたもう1つのエクスプローラーが現れる。UWP版エクスプローラーのUIを刷新しつつ、OneDrive用に切り替えた形だ。ただ、下図に示したように、日本語ファイル名と思われるファイルは文字化けしてしまう。通常のエクスプローラーは文字化けしていないため、ベータ版エクスプローラーの実装が追いついていないと思われる。

  • スタートメニューを展開すると2つのエクスプローラーが確認できる

  • 通常のエクスプローラー(左)とベータ版のエクスプローラー(右)

不思議なのは、同期完了メッセージは表示されても、クラウドストレージにあるファイルやフォルダーは列挙されない。通常のエクスプローラーや、Microsoft Storeから入手できるUWP版OneDriveも試してみたが、同様の結果だ。現時点では、Windows 10X Emulator側の問題なのだろう。

  • ベータ版のエクスプローラー(左)とUWP版OneDrive(右)

Microsoftがベータ版エクスプローラーに着手した理由を考えてみると、Win32版エクスプローラーの限界がありそうだ。Windows 95時代に誕生したエクスプローラーは改良を重ねながら、Windows 10でも現役アプリとして使われている。だが、エクスプローラーのUIはキーボード&マウスを前提とし、タッチUIをメインに置いたWindows 8では実用的とはいえなかった。その流れをくむWindows 10では、UWP版エクスプローラーを秘密裏に含んでいたのは記憶に新しい。

  • UWP版エクスプローラーは現在のWindows 10でも起動可能

Windows 10 バージョン1703から加わったUWP版エクスプローラーはその後も改良を重ねているが、バージョン1909でも公式なアプリとして扱われなかった。これからWin32版エクスプローラーに手を加えるよりも、UWP版エクスプローラーの品質を向上させるほうが、One Windows戦略を踏まえても正しい選択だろう。一部では、各アプリにタブ化する「Sets」を復活させるという噂も聞こえてくる。Microsoftは重い腰を再び上げたようだ。

阿久津良和(Cactus)