ASUSTeKからメッシュ対応のWi-Fiルーター「ZenWiFi CT8」が発売された。最初から2台同梱されており、1台が電波を中継するノードとして動作するため、例えば3階建てなどの広い住宅でも電波が届きやすいのが魅力だ。筆者の自宅はマンションだが、それでもWi-Fiルーターが1台だけの環境よりも電波環境は向上した。使い勝手と、実際の速度を合わせて試用レポートをお届けしたい。

  • 2台セットのWi-Fiルーター「ZenWiFi CT8」。実売価格は30,000円前後

筆者の自宅では2014年からASUSTeKのWi-Fiルーター「RT-AC68U」を愛用してきた。高性能なCPUを持ち、高負荷な状況でも安定して動作すること、ルーター側にダイナミックDNSのクライアント機能があるため、ゲームのサーバーが建てやすかったというのが主な理由だが、光ファイバーが角部屋の窓際と自宅では一番の隅っこから引き込まれてるため、ルーターもそこに設置せざるを得ず、そこから離れた位置にある部屋ではどうしても通信が遅くなることがあった。RT-AC68UはASUS独自のメッシュWi-Fi「AiMesh」にも対応しているので、もう1台追加してもよかったが、どうせなら最新のルーターに乗り換えたいと考えていた。このような状況にフィットするのが「ZenWiFi CT8」だ。

ZenWiFi CT8の魅力はシンプルさと使い勝手のよさを両立していることだろう。ASUSTeKはいかついアンテナを備える速度重視のゲーミングルーターも出しているが、本製品はアンテナは本体に内蔵しており見た目はスッキリ。サイズも幅160mm、奥行き70mm、高さ161mmとコンパクトだ。メッシュは複数のノード(Wi-Fiルーターなど)を一つのネットワークにすることで、通信範囲を大きく広げられるのが最大のメリットだが、本製品ならば2台目を例えば廊下のコンセント近くに設置してもジャマにならない。家の中心部など、電波を巡らせるのに最適な場所に置きやすいのは、案外重要なポイントだと思う。

  • 幅160mm、奥行き70mm、高さ161mmとコンパクトなボディ

また、本製品の通信方式はIEEE802.11a/b/g/n/acといわゆるWi-Fi 5まで。Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)には対応していないので、Wi-Fiルーターとして最速クラスではないが5GHz帯×2、2.4GHz帯×1とトライバンド仕様なのがポイント。2つある5GHz帯のうちのひとつ、最大1733Mbpsの5GHz帯をノード間(ZenWiFi CT8同士)の中継専用にすることで、スマホやPCなどWi-Fi子機の接続に影響されず、安定した高速通信を可能にしている。

5GHz帯×1、2.4GHz帯×1のデュアルバンド仕様のメッシュ対応Wi-Fiルーターでは5GHz帯がノードの通信とWi-Fi子機の通信が混在するため、どうしても速度が落ちることあるが、本製品ならノード間に専用の5GHz帯が用意されているので、その心配がいらない。これがトライバンド仕様の強みだ。

インタフェースは背面にWAN×1、LAN×3、USB 3.1 Gen1が用意されている。USBはストレージ機器などを接続すればNASのような使い方が可能だ。メッシュ対応Wi-Fiルーターでは、デザインや小型化を優先して有線LANが1ポートしかない製品もあるが、本製品は3ポートとテレビやゲーム機など有線接続したい機器が複数あっても対応できる。

  • インタフェースとしてWAN×1、LAN×3、USB 3.1 Gen1を搭載

セットアップは専用アプリ「ASUS Router」が便利

セットアップはPCのWebブラウザでも行えるが、スマホの専用アプリ「ASUS Router」(iOSとAndroid向けを用意)を使うと簡単だ。ZenWiFi CT8とスマホがBluetoothで接続され、画面の指示に従うだけでセットアップが完了できる。WANポートにケーブルが接続された側がルーターに、もう1台がノードに自動で割り当てられる。セットアップ時だけでは2台を3m以内に置く必要があるので、2台目を設置場所への移動するのはセットアップ完了後にしよう。

  • スマホの専用アプリ「ASUS Router」でセットアップは簡単に行える

ちなみに、標準では5GHzと2.4GHzは同じネットワーク名(SSID)を使用し、ルーターに接続するWi-Fi子機や通信状況によって接続帯域を自動的に切り替える「スマートコネクト」となっているが、5GHzと2.4GHzを分離し、別々のネットワーク名(SSID)を設定することも可能だ。Wi-Fi子機を高速な5GHz帯へ確実に接続したいといった場合は、分離したほうがいいだろう。

  • 5GHz帯と2.4GHz帯を一つのSSIDで運用することも、分離することもできる

アプリの「ASUS Router」では、セットアップだけではなく接続状況の確認や各種機能の利用もできる。Wi-Fi子機がルーター側、ノード側のどちらに接続されているので、どの5GHz帯、2.4GHz帯のどちらで接続されているかなど一発で確認が可能だ。また、子供のスマホだけ子供にとって不適切なコンテンツへのアクセスをブロックするフィルタリング機能や遊びに来た友人などに対して一定時間だけネットワークアクセスを許可する機能などが便利。さらにPCのWebブラウザを使えば、IPv6やダイナミックDNSなど高度な機能の設定も行える。

  • ルーターとノードの接続状況などの確認も可能

  • 接続されているWi-Fi子機の数や通信状況もわかる

  • 来客用に一時的な接続設定を作ることも可能だ

  • 子供用のスマホなど指定したWi-Fi子機に対してフィルタリング設定もできる

  • Webブラウザでアクセスできるメニューでは高度な機能も設定できる

通信速度を実測、電波が家中の隅々まで届く

ここからは気になる通信速度をチェックしてみよう。筆者の自宅は下記のイラスト通り。光回線の関係で「A」の箇所にルーターとなる1台目を設置、電波の届きやすさを考えて、ノードとなる2台目を廊下の「B」に設置した。速度を測る方法だが、ルーターとなる1台目に、CPUにCore i7-9700Kを搭載する自作PCをギガビットイーサで接続。Linux版の「iPerf3」を使ってサーバー側とした。Wi-Fi子機にはIEEE802.11ac(866Mbps)対応のAndroidスマホ「ROG Phone II」でアプリ「Magic iPerf」をクライアント側として速度を測定している。

  • 筆者宅の簡単な間取り図。A地点にルーター、B地点にノードを設置。1~4の場所で速度を測定している

各場所の速度(ROG Phone IIで測定)
1(和室) 413Mbps
2(LDK) 391Mbps
3(洋室) 388Mbps
4(浴室) 307Mbps

4箇所で測定したが、「1」「2」「3」の地点では約400Mbpsと十分な速度を出した。懸念事項であった風呂場の「4」でも約300Mbpsと高速だ。「4」の地点は「A」の箇所にRT-AC68Uを1台置いただけの状況では、ROG Phone IIを使っても70Mbpsほどしか出ず、お風呂で防水タブレットを使って動画を楽しむときに通信が安定になることも珍しくなかった。それが一気に解消された。家庭内に通信が届きにくい場所がある、という場合にはその解消に本製品は役だってくれるハズだ。

なお、ASUSTeKでは新製品としてWi-Fi 6対応のルーター「RT-AX3000」も発売した。こちらは最大2402Mbpsのワイヤレス通信に対応。速度を求めるならこちらにも注目しておきたい。ASUS独自の「AiMesh」に対応しており、RT-AX3000をルーターとしてメッシュ環境を作ることもできる。ASUSTeKのルーターは多くがAiMeshに対応しているので、どの組み合わせでもメッシュ環境を作れるのが大きな強みと言えるだろう。

  • Wi-Fi 6に対応する「RT-AX3000」も発売。価格は20,000円前後