2009年10月に一般販売を開始したWindows 7も、昨日の2020年1月14日をもってサポート終了を迎えた。

  • サポート終了を迎えたWindows 7を起動すると、Windows 10への移行をうながされる

    サポート終了を迎えたWindows 7を起動すると、Windows 10への移行をうながされる

Windows 7が登場した当時を振り返ると、現在のスマートフォン市場を築いたiPhone 3GSが登場(2009年6月)し、コンシューマー市場もメインストレージとしてSSDを最初から選択するユーザーが増え始めた時代だ。筆者も前年の2008年末に、Windows XP Embededd(現Windows 10 IoT Enterprise)のEWF(Enhanced Write Filter)をSSDで活用する記事を某PC雑誌で執筆した記憶がある。長らく市場を席巻したWindows XPの乗り換え先として期待されつつ、結果的に多くのユーザーから見送られてしまったWindows Vistaとは異なり、Windows 7はWindows XPと同様に長期運用されたOSとなった。日本マイクロソフトの調査によれば、2019年9月末時点で国内約890万台がWindows 7 PCだという。その理由は次バージョンに当たるWindows 8.xの不振もさることながら、PC至上時代が末期にあったことが大きいと愚考する。

冒頭でiPhoneの発売に触れたように、当初は子供だましのデバイスながらも技術革新に伴う成長をデバイスに施すことで、可用性は大きく高まった。2020年現在の我々が体感しているように"PCが必要"という場面は減少している。他方で2008年9月には米国でリーマンショックが発生し、日本も長期の不況時代を迎えた。このような社会背景を背負って登場したWindows 7だが、グローバルで見るとMicrosoft製OSとして最速の販売ペースとなる2億4000万本を発売から1年で達成した(当時のプレスリリース)。Microsoftは最終出荷数を公表していないが、2011年第4四半期の説明を読むと、2年間で4億以上のライセンス販売に成功したことになる。

  • 実機を模写したリアルなアイコンを用いることで、アイテムがどの周辺機器を指すのか一目でわかる「デバイスステージ」を採用したのもWindows 7から

スマートフォンの性能向上を待てないPCユーザーの選択肢として選ばれたWindows 7は、ユーザーが求めるパフォーマンスや直感的なインターフェースを搭載し、趣味や業務を遂行するための基盤として受け入れられた。本来であれば性能や利便性が向上した次バージョンへ移行するはずだったものの、前述のとおりWindows 8.x(2012年10月)は、洗練されたとは言い難いタッチUIを前面に打ち出し、コンシューマーや法人ユーザーから不評を買ってしまう。当然ながらPC市場はWindows 8.xプリインストールモデルに切り替わっており、OSをWindows 7に切り替えるダウングレード権に注目が集まる。このようにWindows XPの乗り換え先、Windows 8.xからダウングレードが相まって、Windows 7というOSが長きにわたって使い続けられたのだろう。この現象は"PC冬の時代"を引き起こす遠因となるが、ここでは割愛する。

  • Windows 8発売記念の記者発表会より(2012年10月26日)

読者諸氏もご承知のとおり、現在のWindows 10はシステムを断続的に更新するローリングリリースモデルを採用しており、これまで述べてきた社会環境や市場の影響を受けにくい。本稿執筆時点でWindows 10の販売ライセンス数は9億本を数え、当初の目標値だった"2018年までに10億本"に差し迫る勢いだ。従来のバージョンアップモデルを採用したWindows 7とは異なり、我々は今後もWindows 10を使い続けることになる。Windows 10は、ユーザーに広く、長く使い続けられる"ポストWindows 7"たる存在になったのだ。

  • ユーザーを招待したWindows 10のリリースイベントでハイタッチを決める日本マイクロソフトの平野社長(2015年7月29日当時)

阿久津良和(Cactus)