◆ Intel

Intel Foundryというビジネスが完全に有名無実なものになった2019年。10nmはYieldと性能の両面で問題を抱え、14nmは自社の需要すら満たせない状態となり、鳴り物入りで立ち上げた22FFLも自社で若干利用される程度で、顧客が全くつかないという、なかなか悲惨な状況の1年であった。

  • Photo11: 昨年は記事の主役を張ったこともあるまめっち先生。

Intel - 14nm Update

まず14nmについて。以前こちらで説明した通り、AMDのRyzenに対抗するため、Coffee LakeやSkylake-SP/Cascade Lake-SPといったダイサイズの大きな製品を生産する必要が出てきた。ところがIntelは当初予定ではこうした多コア製品は10nm世代で対応する予定だったため、14nmに据え置かれた結果としてダイサイズが大きくなりすぎ、市場のニーズに応えられるだけの数量出荷が不可能になった。これに対応すべく、2018年9月に急遽、14nmの生産ラインに10億ドルの設備投資の追加を行って出荷量の増大を目指したが、今度はおそらく調整時間が十分に取れていないためにYieldの悪化を誘起。かなりの量の欠陥を抱えたチップが大量に在庫されることになった模様だ。

これを救うため、本来Core iシリーズは全製品GPU統合タイプだったのが、GPUを非統合のFシリーズが急遽投入されることになった。CPU部には欠陥が無いが、GPU部に欠陥があるダイを救うための苦肉の策であろうと想像される。加えて言えば、単にYieldのみならずSpeed Yieldも同時に下がったようで、かくして市場には「CPUの数はそこそこ出回る様になったが、欲しいCPUは相変わらず無い」という皮肉な状況になった。つまり動作周波数が低めのCPUは潤沢なのだが、トップエンドの製品は相変わらず品不足という状況に陥ったわけだ。この状況が多少なりとも緩和されたのは、勿論Intel自身が必死に製造装置の調整を行ってYieldやSpeed Yieldを改善した事も挙げられるが、AMDのRyzen 3000シリーズの投入により、絶対性能のみを問題にする(つまりAMDかIntelかには拘らない)ユーザーがIntelからAMDに鞍替えしたことで、相対的にIntelのハイエンドCPUを求めるユーザーの数が減ったことも多少影響してそうだ。

その14nmであるが、現時点でもまだ需要に応じきれない状況が続いている。ただIntelとしては、さすがにこれ以上14nmに大きな追加投資を行う予定はない模様で、2020年中もこのタイトな状況が続く事になりそうだ。また一時期は噂されていた14nm+++(現行の14nm++のさらなる改良版)であるが、そもそもそんなものは無かったのか、それとも計画としてはあったものの取りやめたのかは不明ながら、とにかく14nm++のさらなる改良は行われないようだ。まぁ14nm→14nm+→14nm++は基本的に「消費電力の増大に目を瞑りつつ、動作周波数の引き上げを図った」という改良である。イメージ的には図1の様な感じで、動作周波数-消費電力曲線そのものは基本的に相似形で、動作周波数が低い時の消費電力は次第に上がりつつあるものの、消費電力が急増する手前の動作周波数は引き上げられる、という形だ。だから、もし14nm+++が存在したとすると、更に消費電力が増える事になる訳で、さすがにこれは色々無理があるだろう。

  • 図1

Intel - 10nm Update

さて、本来であれば14nmはこんな具合に苦労しなくてよかった筈である。この目算が狂ったのは、10nm世代の更なる不調ぶりである。昨年は10nm世代のCannon Lakeの状況をご紹介した訳だが、その後同社は第2世代の10nmである10nm+を立ち上げる。この10nm+について、Intel自身は性能改善としか説明をしていないが、実はいくつかのヒントがある。一つは2019年3月末で引退したMark Bohr氏(Senior Fellowで、プロセス部門を率いてきた)が2019年2月に、OregonLiveのインタビューに答えているが、この中に10nmプロセスについて言及がある。当該部分を抜き出すと

“We kind of overshot, I think, on our 10nm technology,” Bohr admits. He said the company was too aggressive in its goals for packing transistors onto computer chips.

“We bit off a little too much at that step,” he said. “Maybe we should have relaxed a bit in our goals and it would have been a much easier transition.”

ということで、要約すれば「(最初の)10nm世代は我々はちょっとやりすぎで、ちょっと前に進みすぎた。恐らく目標を少し緩める必要があるだろうし、そうすればうまく行くだろう」というあたりだろうか。要するにHyperScalingという名前で色々な技術を前倒しで入れすぎたため、収拾がつかなくなったというあたりだろうか。M0/M1のコバルト配線もそうだが、そもそも以前こちらで説明したHyperScalingを構成する様々な要素が全て「チャレンジャブル」なものだったから、まぁこれらのいくつかの実装を先送りにしても不思議ではないし、Borh氏の発言はそうした先送りを容認したものと考えられる。

さて、そうした変更というか改良を行って登場したのが、Ice Lakeの10nm+である。Ice Lakeは10nmなのか10nm+なのかは当初はっきりしなかったが、Ice Lakeの出荷に伴いIntelの"Resource & Design Center"の中のIce Lakeのページがアクセス可能になった。このページの初っ端に"These processors utilize Intel’s industry-leading 10 nm+ process technology."とあることから、IntelはIce Lakeの製造に10nm+を使った(というか、Ice Lakeの製造プロセスを10nm+と呼んでいる)事が明らかになった。

また調査会社の米Tech Insightは10月31日に"Intel Core i7-1065G7 “Ice Lake” 10 nm 2nd Gen Processor Analysis"というレポートを出している。こちらは無償のダイジェスト版(フルバージョンは有償)によれば、第1世代(10nm)のCannon Lakeと比較して

Process Highlight:
・FinFETの構造が変わっており、より高い性能を発揮する
・製造工程が、よりプロセスのマージンを広くとる様に変更された
・BEOL(Back End of Line:配線工程)が、シンプルかつ性能を改善するように変化している

Design Highlight:
・Contactのレイアウトを、Yieldを高める様に工夫している

といった違いがあるとしており、やはりIce Lakeは10nm+を利用しているという事で間違いないようだ。

さて、その10nm+を利用したIce Lakeの性能は? ということで以前まとめた記事がこちらであるが、要するにIPCは改善しているものの、それを打ち消すほど動作周波数が下がってしまっており、なので性能面でのアップはごく僅かという結論である。実機レビューという観点で言えば、11月にDell New XPS 13 2-in-1のベンチマークが掲載されているが、こちらは搭載CPUがCore i5-8250UCore i7-1065G7というもので、一応どちらもTDP 15Wの製品であるが、CineBench R15 Singleのスコア(160 vs 183)を比較すると14%程の改善でしかない。Intelの以前の主張ではIPCが18%アップという話で、もうこの時点で辻褄がやや合わないのだが、Core i5-8250Uが定格1.6GHz/Boost 3.4GHz、Core i7-1065G7が定格1.3GHz/Boost 3.9GHzといまいちあっておらず、実際の両方のCPUの稼働周波数がどの程度か判断しにくい(まだCore i5-8257Uを使ってくれればBoostが同一周波数なのでまだ比較しようがあるのだが)。ただ定格が1.3GHzと低いあたりからも、やはり動作周波数が上げにくいという10nm+の特性が透けて見える感じだ。その反面ロジック密度を上げられるので、より回路規模の大きいSunnyCoveコアを搭載出来、それによってIPCを引き上げることで辻褄を合わせよう、と言う訳だ。CPU性能そのものはまた後で論じるとして、そんな訳でやはり動作周波数が上がりにくい特徴に変わりはないようだ。

これが10nm++でどう変わるか? というのがこちらのグラフ。これが本当に信用できるのか? という疑問はまぁあるのだが、一応正しいとすると10nm比で15%程度まで動作周波数が引き上げられるらしい。現状のIce LakeがBoostが最大でも3.9GHz程度だったのが、4.5GHz位までは何とか...というところか。ただComet Lakeの例えばCore i7-10510UはBoost 4.9GHzを実現しており、ここまで到達するとはちょっと考えにくい。Comet Lakeの話が出たついでに書いておけば、もうIntelは10nm世代はMobileとFPGA、GPUとごく一部のServer向けにしか利用するつもりはないようで、本命は次の7nmに切り替えており、なので2020年は引き続き14nm++のComet Lakeで頑張り、2021年に7nmに繋ぎたいという意向の模様だ。Mobileに関しては、恐らくIce Lakeの後継となるTiger Lakeが2020年中に10nm++で製造され、またDiscrete GPU(というか、恐らくはDiscrete GPGPU)のPonte Vecchioも10nm++で製造されることになると思われる。

Intel - 7nm Update

その7nmであるが、Intelは2019年10月にIntel Manufacturing Dayを開催。初の7nm FabとなるFab42の建設状況をビデオで紹介したりしている。もっともビデオをご覧いただくと判るが、中身はFab 42がいかに環境にやさしいかといった話がメインで、肝心の7nmに関してはまだ全く情報が聞こえてこない。2019年12月に開催されたIEDM 2019では(筆者が知る限り)Intelの7nmに関する話は一切なく、あとはISSCC 2020にちょっと期待したいところである。

◆ Globalfoundries

7nm世代の開発中止によって、完全にPCビジネスから離脱することになってしまったのがGlobalfoundries。勿論Ryzen 2000/初代EPYCやRyzen 3000Gシリーズに加え、Ryzen 3000シリーズとか第2世代EPYCのI/O Chipletは引き続きGlobalfoundriesの14LPP/12LPで製造されているが、今年はRyzen GもTSMCのN7に移行するので、いよいよI/O Chipletだけの関わり合いになる。

同社はFinFETに関しては12LPとその改良型の12LP+を発表しており、これに加えて22FDX/12FDXというFD-SOIプロセスの提供も行っているが、意外にもこのFD-SOIが非常に好調である。ただこれ、ロジック向けのものではなく、22FDX-RFAと呼ばれるRF/Analog向けが恐ろしく人気である。理由は5Gだ。Mobile向けのSoCではCMOSベースで5GのRFの実装が行われており、Sub 6GHzと呼ばれる5Gの6GHz未満の周波数帯のモデムに関しては、ほぼCMOSで実装可能である。ところが6GHzを超えてミリ波帯になってくるとそろそろCMOSでは特性的に厳しい。勿論60GHz帯のRFをCMOS(それも90/65nm)で製造した例もある(米SiBeam)が、単純にRFだけならばともかく、モデム機能を丸ごととなるとCMOSでは厳しい(周波数特性を上げるためにはあまり微細化できないが、そうするとデジタル処理部の性能が上がらないのでスループットを高く取れない)。こうしたケースでFD-SOIはそこそこのロジック性能と高い高周波アナログ性能を両立できるということで、俄然注目を集める事になった。

更に引き合いが多いのが5Gの基地局である。5Gの場合Massive MIMOなどの機能も入る関係で、一つの基地局に従来よりも多数のアンテナとRFが入る形になる。従来だと高周波といえばGaAsベースのものとか、最近だとGaNベースのものも少なくないが、これらは周波数特性も良く、出力も取れるものの高価である。これをFD-SOIで置き換えるという動きが出ている。というのは、Massive MIMOなどの構成だと、アンテナ全体ではかなりの出力になるが、アンテナ一つ一つの出力はそれほど大きくないため、FD-SOIベースのパワーアンプでも実用になるらしい。

同社のロジック向けFD-SOIはSamsungに比べると大分Design Winの数が少なめであるが、今後は14LPP/12LP/12LP+をIoT(というか、Edge)向けに提供しつつ、ロジック向けのFD-SOIのDesign Winを増やしてこちらで商売してゆくという方向性になっており、ことPCマーケットから見た場合は更にプレセンスが少なくなってゆくと思われる。