ジャストシステムは2019年12月4日、「一太郎2020」「一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]」を2020年2月7日に発売し、「ATOK Passport」「ATOK Passport[プレミアム]」の機能強化を2020年2月1日に実施することを発表した。また、一太郎が世に出てから2020年で35周年となることを記念して、さまざまなコラボ製品も発売となる。

  • 「一太郎2020」「一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]」「ATOK Passport」

昨今の多様性を求める社会背景を踏まえてジャストシステムは、「文書作成に幅・広がりを持たせることが必要」(同社ソリューションストラテジー事業部 企画開発グループ 佐々木孝治氏)との観点から、一太郎2020は「広がる文書作成」をコンセプトに開発。その一環として注目したのが「超入力」(佐々木氏)だ。老若男女がスマホを日常的に使う状況を踏まえ、その手軽さと一太郎2020を連携させるスマホアプリ「一太郎Pad」を、App StoreおよびGoogle Playで2020年2月7日にリリースする。

  • 「最高の日本語ワープロとして進化させた」と語るのは、ジャストシステム ライフレゾナンス事業部 事業部長 平居秀朗氏

  • ジャストシステム ソリューションストラテジー事業部 企画開発グループ 佐々木孝治氏

一太郎Padは、フリック入力やスマホが備える音声入力に対応。二次元コードによって、スマホとペアリングしたPC側の一太郎2020にテキストデータを転送することが可能だ。基本的にはシンプルなメモアプリだが、入力支援ボタンを用意し、当日の日時や全角スペース、3点リーダーなどもワンタップで入力できる。また、スマホカメラを使ったOCR機能も備え、PC側の一太郎2020へデータを転送するときは、誤認識した文字をPC側で修正。一太郎を情報基盤としているユーザーには興味深いアプリとなりそうだ。

  • 「一太郎Pad」のOCR機能を使用することで、ハガキや書類の文字を一太郎2020に取り込める

  • 「一太郎Pad」にはタイムスタンプなどを入力する入力支援ボタンを用意。また、PC転送時は半角スペースや文字の全角・半角、誤字脱字の修正をPC側で行う

さて、一太郎2020本体の改良点としては、誤読しやすい・読みづらい単語を自動判別してフリガナを一括入力する機能や、行末の文節を自動判別して改行を一括入力するといった自動化機能が新たに加わった。「行末の折り返しがなくなるため、日本語が不得手なユーザーでも読みやすくなる」(佐々木氏)とのことだ。

文章校正機能では、都道府県名の省略可および不可を判別するほか、「(株)」と「株式会社」といった表記ゆれの検出が可能。そのほか文章作成以外の新機能としては、PDF形式や画像ファイルを文字データとして読み取り、一太郎文書として編集可能になり、編集行を強調するハイライト表示機能なども加わった。

  • 現行バージョンに引き続き、新バージョンでも強化された文章校正機能

  • ハイライト表示機能は編集業以外をグレーアウトすることも可能

前述のとおり、一太郎は2020年で35周年。一太郎2020は、いくつかの記念ソフトウェア・コンテンツを含んでいる。

  • 風景写真などを選んで文字を入力すれば、タイトルロゴを作成できる「フォトモジ」
  • 回顧録や年譜などに便利な「昭和・平成・令和 時をかけるイラスト70」
  • 「モリサワフォント26書体」
  • 13年ぶりに全面改定して26万9,000項目を収録した「大辞林4.0 for ATOK」

モリサワフォントと大辞林4.0は、一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]のみ収録だ。

このほか、音声データの増量で自然なイントネーションを再現した「詠太10」には、日本語の女性話者「RISA(リサ)」を新たに搭載。機能アップしたグラフィックソフト「花子2020」、PDF・画像を一太郎やOffice文書に変換できたりするPDFソフト「JUST PDF 4」、表現力やMicrosoft Officeとの互換性を高めた「JUST Calc 4/R2」「JUST Focus 4/R2」、基本機能は変わらないメールソフト「Shuriken 2018」も収録している。

  • 一太郎2020に含まれる「フォトモジ」

  • 一太郎2020に含まれる「昭和・平成・令和 時をかけるイラスト70」

  • 「モリサワフォント26書体」は一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]のみ

  • 同じく「大辞林4.0 for ATOK」も一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]のみ

  • 一太郎2020および一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]の収録ラインナップ

ATOKはどうなった?

サブスクリプションの「ATOK Passport」で利用権を得る「ATOK for Windows」の新機能は、正直充実とは言えない。「2016年にATOKディープコアエンジンを実装し、その後も基本機能のベースアップに努めてきたが、インストール直後から使い勝手がよいという評価には至らない」(同社ソリューションストラテジー事業部 企画開発グループ 下岡美由紀氏)との理由から、個人の操作性や学習データの活用に着目したという。

  • ジャストシステム ソリューションストラテジー事業部 企画開発グループ 下岡美由紀氏

従来のATOK for Windowsでも、名詞と名詞をまたぐ入力文章を認識し、推測候補に用いてきたが、新バージョンでは句読点をまたぐ2文字以上の複数文章を1つのブロックとして学習対象に追加した。たとえば「ご不明な点は、ご連絡ください。(メールでお願いします)」など、メールの末尾でよく入力するような文章を、推測変換候補に列挙するといった具合だ。

  • 新しい推測変換機能では、句読点を含めた文字列もブロックとして学習

連想変換も強化対象の1つ。変換時に確定せず削除した場合や、確定アンドゥで変換前の状態に戻したアクションをトリガーとして、「言葉選びに迷っているとATOKが判断」(下岡氏)。各アクションで候補に並んだ表現をもとに、別の言い換え表現を提案する。

たとえば「美しかった」「華やかだった」と入力&キャンセルした場合、連想変換として提示する表現は「華麗だった」。ほかにも「きらびやかだった」「豪華絢爛だった」といった候補が並ぶ。どの程度の精度で提案してくれるのかは未確認だが、語彙(ごい)力アップの強い味方になりそうな機能だ。

  • 新たな連想変換は、ユーザーが言葉選びに迷っている状況を判断して自動で提案

残念ながら、日本語IMEとしての機能強化は上記の2点にとどまる。ただ、ATOK Passport[プレミアム]契約ユーザーのみ利用できるATOKクラウド辞典サービスは、一太郎2020と同じく大辞林4.0をラインナップに追加。ウィズダム英和辞典/和英辞典も最新の第4版に更新している。既存の広辞苑 第7版などを含めて、計6冊のクラウド辞典が利用可能になる。なお、電子辞典としての大辞林4.0 for ATOKは、一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]にしか含まれていない。オフラインでも利用したい場合は、一太郎2020 プラチナ[35周年記念版]を購入する必要がある。

  • 「ATOK Passport」「ATOK Passport[プレミアム]」のラインナップ

阿久津良和(Cactus)