TrendForceは、2019年第3四半期のNAND型フラッシュメモリ市場動向および主要メーカー各社の生産状況についての調査報告を発表した。

それによると、クリスマス・年末商戦という季節的な需要に加えて、トランプ政権の企てている関税引き上げに備えようとする顧客からの需要増加により、契約価格の下落が止まり、第3四半期のNAND出荷ビット数量は前四半期比で約15%増、売上高も同10.2%増の119億ドルという2桁成長となった。

また、第4四半期も契約価格がキオクシア(旧 東芝メモリ)四日市工場の停電による価格上昇が反映されるとともに、ピークシーズンを迎えて市場の需要が健全な状態にもどることにより、サプライヤ各社ともに業績が改善するものとTrendForceでは予測している。

  • NAND

    NANDメーカー各社の2019年第3四半期(7~9月期)売上高(単位:100万ドル) (出所:TrendForce)

各社ともに出荷ビット数量、売上高ともに成長

業界トップシェアのSamsung Electronicsの2019年第3四半期の出荷ビット数量は、従前の予想を上回る前四半期比10%を超す増加となった。背景には、第2四半期のIntelの新プラットフォームリリースや、複数のスマートフォンメーカーがフラッグシップモデルをリリースしたことがあり、在庫レベルの安定化に加え、平均販売価格の下落も5%以下に押さえ込むことに成功。売上高も同5.9%増の39億8700万ドルを記録した。

また、生産面では計画どおりに3D NANDの生産に注力する一方、第12ラインにおける2D NANDの生産量を減らしている。2020年の生産能力に関しては、中国西安にある2棟目のメモリファブが上半期中に製造を開始する予定のほか、韓国平澤(ピョンテク)工場の2棟目のメモリファブが下半期に稼働を開始する予定である。

Samsungと同じく韓国勢であるSK Hynixの出荷ビット数量は第2四半期に同40%増と急進したこともあり、第3四半期は同1%減となった。ただし、価格の安定化などの要因から平均販売価格は同4%上昇となり、NANDの売上高も同3.5%増の11億4600万ドルとなった。生産能力に関しては、2D NANDを減らしてはいるものの、韓国利川(イチョン)の本社工場M15ファブで生産している3D NANDの増加は僅かのため、減少傾向が続いている。

一方、2019年6月に四日市工場で停電事故が発生したキオクシア(旧 東芝メモリ)は、季節的な需要の増加と、Appleの新しいスマホによる需要の増加が合わさった結果、出荷ビット数量を同20%を超す勢いで伸ばすことに成功。また、売上高も平均販売価格が同5%の下落となったものの、同14.3%増の22億2700万ドルと2桁増を達成した。

生産能力の面では、四日市工場のすべての生産ラインが稼働を再開しているが、一時操業停止の影響から、出荷ビット数量の増加自体は競合他社よりも遅れている。また、岩手県北上市の新工場に関しては、建設中だったK1ファブが10月に竣工。K1は、早ければ2020年上半期に運用を開始する予定で、これによりキオクシアのビット出荷ビット数量が増加し、停電による操業停止前のレベルに戻るとTrendForceでは予測している。

また、そのキオクシアと四日市で協業を続けてきた米Western Digital(WDC)は、季節的な需要増の追い風を受け、出荷ビット数量は同約9%増となったほか、四日市工場の停電と追加需要の発生により、平均販売価格の下落がとまり、売上高も同8.4%増の16億3200万ドルとなった。 生産能力については、最新の情報によると四日市工場の停電トラブルで4EB分の生産損出が発生した模様である。新しい生産ラインに関しては、同社は第3四半期に岩手県のK1プラントに6400万ドルを投資し、2020年にはより最先端プロセスを採用したBiCS4またはその他の製品の生産を開始する予定だとしている。

WDCと並ぶ米国のNANDメーカーであるMicron Technologyは、スマホの出荷増と、クライアントの在庫需要の増加、さらにはキオクシア/WDCの主要顧客が停電の影響から7月ならびに8月と、急遽、注文先を同社に変更したこともあり、出荷ビット数量は同10%以上の伸び、売上高も同4.7%増の15億3000万ドルとなったという。

生産能力に関しては、8月にシンガポールに新しいNANDの量産ファブをオープンしており、NAND製品に新しいアーキテクチャを採用する取り組みをさらにサポートすることを発表している。ちなみに、Micronの会計年度は暦年とはずれており、ここでは2019会計年度第4四半期(6~8月)が一部重複したものとなっている。

そのMicronと元々パートナーであったIntelは、エンタープライズ、クライアント向けSSDが共に出荷数が伸びたこともあり、同四半期の出荷ビット数量は同50%以上の伸長となった。その結果、売上高も同37.2%増の12億9000万ドルと大きく成長を果たした。

生産能力に関しては、中国大連に拠点を置くファブが、年末まで現在の生産能力を維持する予定であるほか、2020年の拡張計画についてはまだ明らかにされておらず、今後の動向に注目が集まる形となっている。