台湾の半導体調査会社TrendForceの半導体メモリ調査部門DRAMeXchangeの発表によると、2019年も下期に入り、電子機器メーカーなどの在庫が比較的健全なレベルに戻り、さらに一部のメーカーが、米トランプ大統領が画策している高額な追加関税による潜在的な悪影響を回避するために製品出荷を前倒しした結果、2019年第3四半期のDRAM市場は前四半期比4%増と、3四半期連続で続いたマイナス成長に終止符が打たれたという。

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    2019年第3四半期の自社ブランドDRAMサプライヤ売上高ランキング (出所:TrendForce)

ビット数量と売り上げは伸びるも利益率は減少

2019年第3四半期のSamsung Electronicsの販売ビット数量は、中国のスマートフォン(スマホ)ベンダが出荷を積極的に前倒ししたほか、サーバ市場の需要が回復傾向にあったことから、販売ビット数量は前四半期比30%増、売上高も同5%増と伸びたにもかかわらず、平均販売価格が同20%減となったことが影響し、営業利益率は前四半期の41%から33%に減少した。

SK Hynixも販売ビット数量は同20%増、売上高も3.5%増となり、サーバDRAMの生産能力の一部をモバイルDRAMに切り替えるなど、比較的積極的なコスト削減を主導したものの、営業利益率は前四半期の28%から24%に減少している。

Micron Technologyは会計年度が異なるため(6~8月)、一様に同じとはいえないが、販売ビット数量は前四半期比ほぼ30%増、売上高も同1.1%増となったものの、営業利益率は前四半期の35%から24%へと減少されている。MicronについてDRAMeXchangeでは、ファブ不足と、それに起因するウェハ投入数量の不足によって、市場シェアの下落を引き起こしていると考えており、この状況は、現在、台湾で建設しているDRAM量産ファブが稼動するまで続く可能性があるとしている。

技術的な観点から見ると、Samsungは華城(ファソン)工場の第13ラインの生産品目をDRAMからCMOSイメージセンサに段階的に変換して行く計画だが、このラインでのDRAMウェハ投入数量の減少については、近い将来の1Z nmプロセスを採用してDRAMの量産を開始する予定の平澤(ピョンテク)工場にある2番目のメモリファブが新たに投入するウェハによってある程度は相殺され、一定のウェハ投入レベルを維持していく見通しである。DRAMeXchangeでは、Samsungは今後の値下げには比較的消極的になるのではないかとの見方を示しており、生産量の増加にも慎重な姿勢を見せるものとしている。

SK Hynixも2020年に、利川本社工場内のM10ファブの生産品目をDRAMからCMOSイメージセンサに変換する予定であるが、その代わりにM14ファブに投入するDRAMウェハの数量を増やす計画である。また、最近、中国無錫に増設したDRAMファブのウェハ投入計画については、米中貿易戦争の影響から比較的保守的になるとしている。

Micronは、Micron Memory Taiwan(旧Rexchip)が現在の1X nmプロセスから、2020年に1Z nmプロセスへと移行する予定としている。一方の量産拠点であるMicron Technology Taiwan(旧Inotera)は、生産量の半分以上が1X nm製品で、30%が1Y nm製品となっている。

なお、3大DRAMメーカー以外の台湾勢に関しては、Nanyaは第3四半期に季節的要因として販売数量が増加する傾向があることから売り上げを拡大したものの、第4四半期は伸びず、企業としての収益性が回復するまでには時間がかかる可能性があるとDRAMeXchangeは見ている。また、Winbondは堅実にビジネスを進めており、僅かだが成長を続けている一方でPowerchipはクライアントの在庫レベルが高く、出荷量の減少から減収となったという(同社自社ブランドDRAM製品のみの話で、ファウンドリとしてのDRAMの収益は除く)。