先日、Microsoftが発表したSurface Neoは、9インチ画面を2つ備えたデバイス。デュアルスクリーンPCとして、新たなモバイル体験の開拓を目指して開発を進めているデバイスだが、搭載するOSはWindows 10ではなく、「Windows 10X」だという。以前から「軽量型Windows 10」を目指して開発していたWindows Liteの正式名称である。

  • Surface NeoとSurface Duo

    開発中のSurface NeoとSurface Duo(画像は公式ブログより抜粋)

Microsoftの公式ブログによれば、Windows 10Xは「One Core」構想に基づいて開発し、PC、Xbox、Microsoft HoloLens上で動作するWindows 10ファミリーに含まれる存在だ。つまり、特定用途に合わせたWindows 10である。Microsoftは消費電力が増加するデュアルスクリーンデバイスと、バッテリー駆動時間のバランスを取るためにWindows 10の採用を見送り、OSの再設計を図った。

UWPアプリはWindows 10Xで動作するはずだが、問題となるのはWin32アプリの動作環境である。Microsoftはコンテナを利用すれば動作可能としているが、Windows 10 Pro(およびEnterprise)でWindowsコンテナを操作するには、Docker for Windowsをインストールしなければならない。

この点についてMicrosoftは、「さらなるコンポーネント化と追加投資」でアプリとバッテリー駆動時間を管理すると述べている。筆者の推測だが、Windows Server 2019はWindows PowerShellのモジュールであるPackageManagement(OneGet)でWindowsコンテナを操作しているため、同種のコンポーネントをWindows 10Xに実装する可能性がある。

  • Surface Neoで動作するOneNote

    Surface Neoで動作するOneNote。UIを見る限りはUWP版

Windows 10Xは、2020年秋~ホリデーシーズン(クリスマスから年末年始)ごろのリリースを予定しており、Microsoftに限らず、ASUS、Dell、HP、Lenovoといったパートナー経由でもWindows 10X搭載デバイスが登場するという。さらにMicrosoftは、数カ月内に開発者向けへWindows 10Xに関する情報提供を行うとしている。Windows Neoが新たな市場を開拓する野心的な存在であることに疑いはない。だが、その上で動作するアプリこそがユーザー体験を左右する。

  • Surface Neo

    デュアルスクリーンの一片を無効にして物理キーボードを使用できる

その基盤となるWindows 10XについてMicrosoftは、「Windows 10のアップグレード(パス)として設計していない」「Windows 10XはWindows 10 PCを補完し、共存する」と位置付け、「Windows 10体験の向上にも継続的に投資する」と明言している。これらを踏まえると、Surface NeoはSurface Goを代替するデバイスではなく、我々に新たなモバイル体験を提供する存在になり得るだろう。ただ、最大の問題は携行するデバイスの増加。仕事柄、PCやデジタルカメラは手放せず、ここにSurface Neoが加わると……贅沢な反面、切実な悩みだ。

阿久津良和(Cactus)