2019年もIFAに出展したソニーのブースには、ペアで7,000ユーロ(約83万円)という超高級デスクトップスピーカー「SA-Z1」や、フツーのスマホとヘッドホンで臨場感たっぷりの立体サウンドが楽しめる新音楽サービス「360 Reality Audio」、8K対応テレビ「BRAVIA」など、ワクワクする展示があふれていました。それぞれをまとめて振り返ってみましょう。
「ウォークマン40周年」のアニバーサリーに登場したAndroid搭載の新ウォークマンや、小ぶりになったハイエンドスマホ「Xperia 5」、高性能ノイキャン搭載イヤホン「WI-1000XM2」など注目の展示内容についても、別記事をぜひ合わせてご覧ください。
デスクトップがコンサートホールになる! 圧巻のスピーカー「SA-Z1」
「SA-Z1」はソニーのオーディオ製品のフラグシップである「Signature Series(シグネチャーシリーズ)」に加わる6番目の新製品。ニアフィールドリスニング(コンパクトサイズのスピーカーをデスクトップなど耳から近い距離に置いて音楽を聴くスタイル)を主眼に置いた、アンプとDAコンバーターを内蔵する一体型スピーカーシステムです。
欧州での発売時期は2020年4月ごろの予定。価格はペアで7,000ユーロ(約83万円)と発表されました。そして時期は未定ですが日本での発売も計画されているようです。
スピーカー1本あたりのサイズは縦・横約20cm、奥行き約32cm。質量は10.5kg。エンクロージャー(ボックス)の素材はアルミニウム。仕上げはブラックとしています。中高域を受け持つメイントゥイーターと、低域再生用のメインスピーカーを中軸として、それぞれを支えるアシストスピーカーを3基、全部で5基のスピーカーユニットを内蔵する2ウェイ構成。51Hzから100kHzまでの広帯域をサポートするハイレゾスピーカーです。
DAコンバーターには汎用品を使わずに、ソニーがSA-Z1向けに設計を合わせたカスタム仕様のICチップを搭載しています。ハイレゾはDSD 22.4MHz、リニアPCM 768kHz/32bitのファイルまで、現在出回っている音源を幅広く再生できます。
入力インタフェースも多彩。同じソニーのシグネチャーシリーズのメディアプレーヤーである「DMP-Z1」や、ノートPCなどをつなぐためのUSB-B端子に加えて、ウォークマンなどポータブルオーディオプレーヤー、そしてスマホの接続用に設けたmicroUSB端子、ハイレゾポータブルオーディプレーヤーなどに対応する光デジタル端子、アナログのXLR・RCA、ステレオミニ端子をそろえています。なお、左右スピーカーの間は、特殊なコネクタと音質重視のOFC(無酸素銅)線材を用いた極太ケーブルでつなぎます。
つまり、SA-Z1とオーディオプレーヤー、ノートPCなどがあれば、デスクトップでピュアでHi-Fiなスピーカーによる音楽再生を楽しむ環境ができあがるというわけです。そう考えると83万円は安い!?
オーディオコンポーネントとしてのハンドリングは、とてもシンプルです。PCソフトやスマホアプリによるセットアップは不要。置き場所に合わせた音場調整などを行う必要もありません。音に影響を及ぼす不要な振動をキャンセルできるように本体を設計しているため、デスクトップの置き場所を決めたらすぐに音楽再生をスタートできます。
セットアップ後の音の微調整にもアプリは不要。本体天面に搭載するディスプレイの表示を見ながら、スイッチを操作。内部に搭載する5基のスピーカーユニットの連携モードを物理的に切り替えて、好みの音に調整する仕様としています。
ソニーのブースでは、特別に設けられたSA-Z1の専用リスニングルームでその音を体験できました。そのサウンドはまさしく圧巻!
吐息が触れそうになる距離感で、ミュージシャンが演奏している音がスピーカーから鳴った途端に縦横無尽に伸び伸びと広がり、低音も身体の芯を心地よく突いてきます。声の抑揚感の繊細なニュアンスが余すところなく引き立ち、この超弩級のスピーカーが小さく感じられるほど。壮大なスケールの音場がデスクトップを超えて、部屋中に満ちていくような感動体験を味わいました。
最近は何十万円から100万円に迫るヘッドホン、ハイレゾ対応オーディオプレーヤーなど、ポータブルオーディオには目玉が飛び出るような高級コンポーネントが数多くありますが、「いい音」を全身に浴びながら聴くスピーカーリスニングは、やはりとても良いものです。19年の年末のお買い物は、高級ポータブルオーディオを買うか、またはこのSA-Z1に当てるか? 悩み始めるころに、日本発売のアナウンスがあることを期待しましょう。