陸海空、それぞれのプロフェッショナルが求める極限の機能と性能、そしてタフネスを想定したG-SHOCK「MASTER OF G」シリーズ。「陸」で卓越した性能を発揮する「MUDMASTER」(マッドマスター)の最新作「GG-B100」について、その企画、デザイン、設計を担当された開発スタッフにお話を伺う第四夜。最終回となる今回は、バックやバンドに施された工夫、そして時計の使い勝手を大きく向上させる画期的な機能について、詳しく伺う。

■G-SHOCK MUDMASTER「GG-B100」開発秘話
第1回 第2回 第3回 最終回
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    G-SHOCK MUDMASTER「GG-B100」

バックカバーという新発想がもたらす新しい価値

安田氏「橋本は、表だけじゃなく裏側にもこだわるんですよ。フェイス面はともかく、GG-B100では裏面だけのスケッチまでありました。これも異例なことです」

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    普通はあまり起こされないという時計裏のスケッチ

橋本氏「従来、裏面はステンレスの裏ぶただけだったのですが、今回はここも少しこだわってみようと思ったんです。そこで、裏ぶたを覆う樹脂製のバックカバーをデザインしました。

これによって、装着時の肌触りが良く、端がラウンド形状なので角張った部分が腕に当たらない。ステンレスバックの剛性と樹脂ならではの形状の自由さ、良いとこ取りができたと思っています。

それに、裏ぶたが樹脂製ということで、金属アレルギーの方の選択肢の一つにもなれるかと思います」

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    GG-B100の裏面とパーツ状態のバックカバー

しかし、このバックカバーも、案の定すんなりと実現できたわけではないのだった。

安田氏「樹脂カバーの肉厚が薄い上に凹凸がなさ過ぎて、成形して金型から取り外すとき、うまくはがれないんです。そこで、裏側にヒケ逃げを兼ねたリブを作って、金型を食いつかせて取り出しやすくしました。あと、文字やマークの細かな彫刻が多くて、これらが成形不良を起こさないよう工夫しています。

決してスペースに余裕があるわけじゃないのに、カーボンコアガードや、Bluetoothのマーク、製品名、型番、製造番号など、裏ぶたに入れるべき情報がとにかく多い。文字やマークを小さくすれば入りますが、彫刻が繊細すぎると潰れが出やすくなってしまう。もう、金型成形でやるレベルの情報量じゃないんですよ。

そこで、製造番号は組み立て後にレーザー彫刻で入れるようにしました。ただ、レーザー彫刻はどうしても焼き色が付いてしまうので、金型成形の文字と並んでも違和感が出ないよう、レーザー出力を調整しました。それまでレーザーの出力なんて考えたことがなかったので、一時はどうなることかと思いましたが」

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    バックカバーの情報の多さに注目。なお、これはレーザー彫刻を施す前の状態

牛山「このバックカバーの効果もあって、装着感については新製品発表会でも多くの方に褒めていただいたんですよ。見た目に反して着けやすいね、と」

橋本氏「そのギャップを感じていただけたら成功です。表はゴツゴツ、裏はツルッ。そんな相反する印象を両立できたら、というのが狙いでもありましたから。時計は身に付けるプロダクトなので、見える部分、操作する部分、肌に触れる部分、それらがすべてリンクします。そこは人一倍意識していますし、安田にもずいぶん助けられていると思います。

まず見た目で驚いて、使っていく中でまた違った第二の驚きがあるといいですよね。この時計、どうしてこんなに着けやすいんだろう……。あ、ここがこうなっているからなのか! というような。使っていく中でのストーリーが生まれてこそ、商品の体験価値につながっていくと思うんですよ」

GG-B100はバンドも特徴的だ。中でも目を引くのが、バンドの接合部を覆う先かんカバーだろう。

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    バンドの接合部を覆う先かんカバー

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    このおかげで、時計の裏からバンドにかけてなだらかな曲線ができ、着け心地がより快適になる

橋本氏「これは、GWR-B1000に近いフォルムと装着感を継承することを目的としてデザインしました。ケースからバンドへのつながりが自然になり、時計が心地よく腕に沿うようになるんです。もちろん、バンドの接続部に泥や砂が入リ込むのも防ぎます」

  • GWR-B1000

    GWR-B1000の先かんカバー。GG-B100もこの意匠を受け継いでいる(バックは開発中のもの)

安田氏「先かんカバーはウレタン製なんですが、どこをどう分割するか悩んで、色々と試しました。複雑に組み合わせた複数のパーツをネジで留めているのですが、試作メーカーの方からも『このパーツはどこまでが1パーツなんですか?』『どう分かれているんですか?』と、何度も聞かれました。『言葉で説明されてもわからないので、図を色分けしてくれませんか』とか(笑)」

牛山氏「私もこの先かんカバーのパーツを渡されて、組み立てようとしたんです。でも、どう組み付けるのかわからなくて、ついにバンドを組み立てられなかった。こんなことは初めてですね。パーツの組み合わせがパズルみたいで、結局、安田に聞きに行きましたよ」

安田氏「この複雑に入り組んだ構造がまた、G-SHOCKらしいかなと思いまして(笑)」

アプリで時計をカスタマイズ!?

GG-B100は、スマートフォン用アプリ「G-SHOCK Connected」を介したモバイルリンク機能で自動時刻修正ができること、位置を記録して現在地からの方向と距離を計測できる「ロケーションインジケーター」という新機能を搭載したことはすでに述べた。実はもうひとつ、取材陣がそろって感心した新機能がある。これについて、牛山氏からご説明願おう。

牛山氏「この手の高機能時計って、モードボタンを押すと、ずらーっとモードが並んで、逆に不便に感じることさえありますよね。いくらボタンを押しても求めているモードが出てこないとか、何番目がどのモードなのかわからないとか、押している間に通り過ぎてしまったとか。これ、結構なストレスだと思うんです。

そこで、GG-B100では『モードカスタマイズ機能』を新搭載しました。高度計測と気圧計測は使うけど温度計測は不要、日の出・日の入りは必要、アラームセットはよく使うので一番前に持ってこようとか、こういったことがアプリ(G-SHOCK Connected)で簡単にできます」

  • G-SHOCK Connected

    「G-SHOCK Connected」上で、機能の使用・不使用を切り替えて送信するだけ。順番の入れ替えは、モード名の右端の三本線を長押し&ドラッグだ

順番まで入れ替えられるんですか!? これ、めっっっっちゃくちゃ便利じゃないですか!(取材時のリアクションママ)

牛山氏「そうなんですよ。カスタマイズの内容を指定したら、この設定を時計に送ります。すると、これが時計に反映されて……、ほら、モードボタンを1回押すだけでアラーム画面になったでしょ。

(取材陣から「おおっ!」と驚きの声)

さらにもうひとつ。モードカスタマイズで『表示』を選ぶと、時計状態で表示する要素を選べるようになります。たとえば歩数と、気圧のグラフと、時分を表示したいなとか、歩数と時分秒が表示されていれば十分だな、とか」

  • G-SHOCK Connected

    時計表示時の要素カスタマイズ。ついに「自分にとって本当に便利な時計」を(文字通り)手にすることができるのだ!

海外なんてめったに行かないから、普段はワールドタイムをオフにしておきたい、などの需要は確実にありそうだ。機能のオンオフをカスタマイズすることで、時計を自分のライフスタイルに近付ける、いや、むしろ時計が近付いてくるようにさえ感じる。牛山氏によれば、現時点でこの機能を搭載しているG-SHOCKはGG-B100だけだが、ほかのG-SHOCKにも順次搭載していきたいとのこと。

牛山氏「この機能は、レスキュー隊員から聞いた話がヒントになったんです。彼らは本番でも訓練でもストップウォッチをよく使いますが、時計モードからストップウォッチモードまでたどり着くために、ボタンを何回も押さなければならない。これをなんとかできないか、と」

Bluetoothによるモバイルリンク機能をいち早く時計に採用したカシオ。それから6年の月日を経て、得意のセンサー技術も連携させながら、ユニークかつ実用的なモバイルリンクの利用ノウハウが蓄積されているようだ。

牛山氏「このほかにも、気圧グラフ表示が『2時間の間隔で1hPa単位』か『2分間の間隔で0.1hPa単位』かを選択することができたりと、細かな部分も進化しています」

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以上、かつてない機能と構造をふんだんに採り入れたGG-B100のバックストーリーを、これまたかつてないボリュームでお送りしてきたが、いかがだったろうか。

ユーザーの満足度向上のため、G-SHOCKの進化のために次々と壁を超える姿は、単なるインタビューの枠を超え、我々自身の仕事や生き方のヒントにも通じる内容だったと思う。

真にタフな男たちの、知恵と技術と挑戦の結晶ともいえるGG-B100。どんなに過酷な環境でも時を刻み続ける絶対の信頼をぜひ、あなたの腕にも。