NECは8月5日、空の移動革命の実現に向けた空飛ぶクルマの実用化を図ることを目的に、必要とされる交通整理や機体間ならびに地上との通信といった管理基盤の構築に向けた取り組み第一弾として、機体管理機能や飛行特性把握のための空飛ぶクルマの試作機を開発、NEC安孫子事業所に新設した実験場での浮上実験に成功したことを明らかにした。

今回開発された空飛ぶクルマの試作機は、全長約3.9m×幅3.7m×高さ1.3mで、重量は約150kg。新たに自社で開発した自律飛行や機体位置情報把握(GPS)を含む飛行制御ソフトウェアおよび推進装置であるモータドライバなどを搭載することで、飛行を実現したという。

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  • NECが開発した空飛ぶクルマの実証試験機の外観

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  • 飛行性能を左右するローターとファンの構造

NEC自身は、空飛ぶクルマを作ることそのものに取り組むのではなく、そこに搭載される制御ソリューションならびに地上局に必要とされる設備に注力するとしている。そのための最初の段階として、飛ぶことを知るために、2020年までの期間限定ながら有人機開発を進めるCARTIVATORへの支援を実施することで、自律飛行ならびにGPSによる機体の特性調査を実施。その後、2023年以降に始まる限定地域かつ少数機体による物資輸送サービス、2020年代半ばからの限定地域かつ複数期待を活用した地方での人の移動サービス、そして2030年代以降の複数地域かつ複数機体による都市での人の移動サービスへとつなげていきたいとしている。

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    空飛ぶクルマの実験場での飛行の様子

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  • ローター制御のためのコンピュータと思われる各種基板がローター直上、機体上部、機体底部と複数設置。試験飛行当日は炎天下ということもあり、ローター直上の基板については、ハンディ扇風機で冷却を行う、といった光景も見られた

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  • 後部ローターの下にはおそらく機体安定性を向上させるための小型翼がつけられていた

NEC取締役 執行役員副社長の石黒憲彦氏は、「空が大衆化される社会がこれから到来する」とし、空飛ぶクルマはNECが掲げる7つの社会価値創造テーマを横串で通す存在であり、はやぶさ2で実証された高精度な管制制御技術やサイバーセキュリティなどの自社の有する要素技術を結集、融合させることで異次元のイノベーションを生み出していきたいと意気込みを述べた。

また、NEC ナショナルセキュリティソリューション事業部 事業部長の岡田浩二氏は、「管理基盤を構築する上で、重要なのは機体に搭載する管理技術を知ること。特に自律飛行のための技術と位置把握の技術を知るためには、実際に機体を作り、飛ばしてデータを取る必要がある。それが今回の実証実験。そして今後は、これで生み出された技術を協力しているCARTIVATORにも提供していく」と、今回の取り組みに至った背景を説明。「NECにとっ、分からない領域を進む必要がある。しかし、これを逆に楽しみに考えて、メンバーと一緒に実施して、空飛ぶクルマ、そしてその管理基盤の実現を目指していく」と、今後に向けた展望を語った。

なお、空飛ぶクルマの実現には複数の都府県が支援などに意欲を示しており、中でも福島県は、福島ロボットテストフィールドでの長距離飛行実験なども可能だが、NECとしては年内に同社の我孫子事業所内で飛行実験を行うことを予定している段階で、自社の敷地外での実験などは今後の検討課題としている。

NECが開発した空飛ぶクルマの試作機による飛行実験の様子