梅雨空が続く東京・秋葉原ですが、今年も「夏のポタフェス」がやってきました! 7月13日から7月14日にかけて開催されています。発表間もないオーディオ新製品を自分の耳で聴けることもあり、大勢のポータブルオーディオファンで、会場は大賑わい。ここでは、完全ワイヤレスイヤホンの新製品をいくつかピックアップしてお届けします。
ソニー「WF-1000XM3」
ソニーが2017年に発売した同社初の完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」は、ノイズキャンセリング機能を持つことで一躍人気となりましたが、その後継・強化版といえる完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」がついに発売されました。市場想定価格は26,000円前後(税別)です。
新開発のノイズキャンセリングプロセッサ「QN1e」を搭載。片側に2基ずつ備える小型マイクを活用した「デュアルノイズセンサーテクノロジー」によって、強力なノイズ低減を実現しました。
新採用のBluetoothチップは、音楽プレーヤーから届くL/Rの信号をイヤホンの左右両方で同時に受信します(セパレート方式)。従来の完全ワイヤレスイヤホンは、スマートフォンなどからL/R両方の信号を親機が受信し、親機から子機へL/Rどちらかの信号を送信することでステレオ再生を実現していましたが(リレー方式)、WF-1000XM3の新チップはリレーを行いません。このため、バッテリーの減少ペースに左右で差があったり、片側だけ音が途切れたりする問題が発生しにくくなりました。
スマートフォンや音楽プレーヤー側は、専用のSoCやアプリを必要としないため、Bluetoothオーディオ対応であれば、iPhoneでもAndroidでもセパレート方式を利用可能。同じセパレート方式で知られるQualcommの「True Wireless Streo Plus」※は、スマートフォンや音楽プレーヤー側にSnapDragon 855など対応SoCを必要としますから、この点はWF-1000XM3の大きなアドバンテージといえそうです。
※デバイス側が右のイヤホンと左のイヤホンにそれぞれ信号を送信する機能。Qualcommのチップセット「Snapdragon 845」「SnapDragon 855」などを搭載したスマートフォンと組み合わせて利用する。
ブースでWF-1000XM3を試聴したところ、ノイズ低減効果は一目(一聴?)瞭然。ノイズキャンセリングをオンにするやいなや、音楽越しに聞こえてくる周囲の雑音がスッと消えます。ノイズキャンセリングをオフにすると、一瞬で周囲の喧噪が耳に飛び込んできますから、効果のほどは明らかでしょう。飛行機のジェット音がどれほど軽減されるか試したいところですが、ポタフェスの会場内でこれほど効くのであれば、かなり期待できそうです。
音質はフラット寄りで、やや高域を強調した傾向。少し淡泊な味付けですが、どのジャンルもほどよく鳴らします。ソニー独自の高音質化技術「DSEE HX」もサポートしていますから、音源が不可逆圧縮されているストリーミングサービスの音質向上効果もあるでしょう。左側ユニットに触れ続けると、音楽の音量がグッと下がり周囲の音を聴ける「ヒアスルー」も便利に使えましたよ。
オーディオテクニカ「ATH-CKS5TW」
オーディオテクニカから、重低音が売りのSOLID BASSシリーズに連なる完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKS5TW」がこのほど発表されました。オーディオテクニカ初の完全ワイヤレスイヤホン「ATH-CKR7TW」は、BluetoothチップからDACとヘッドホンアンプを独立させるなど、音質にこだわった仕様でしたが、このCKS5TWは機能性や装着性など、”スマートフォンのよき相棒”としての魅力に磨きをかけたところが特長です。
最大の特長は、イヤホン単体で最長15時間という連続再生時間。通勤や通学にかかる時間を片道1時間から1時間半として、3日や4日、うまく使えばウイークデイの5日間すべてを無充電でやり繰りできる計算になります。イヤホンを使い終えたら、カバンのポケットに入れる習慣がある人でも安心です。充電ケースを利用すると、最大で45時間使えます。
デイリーユースとなると装着性も気になりますが、CKS5TWには完全ワイヤレスイヤホン専用にデザインされたイヤーチップと、専用設計の3Dループサポートが付属しています。実際に装着し、耳の凹凸に3Dループサポートを引っかけると、フィット感が増す印象です。3Dループサポートは異物感を覚えるほどの硬さではなく、かといって柔らかすぎず、落下防止の適度な摩擦を生み出す仕掛けといえばいいでしょうか。
試聴では、iOSデバイス(iPad)を中心に利用しましたが、SOLID BASSシリーズだけに低域の量感は多め。硬度の異なる素材を組み合わせた10mm径の2層振動板を搭載しているそうで、5mmから6mm径の振動板が一般的な完全ワイヤレスイヤホンにしては、迫力ある低域を楽しめます。中高域はフラット寄りの自然なチューンで、いわゆるドンシャリとも異なる仕上がりでした。
音の印象は、Android端末を使うと一変します。コーデックにaptXをサポートしているAndroid端末とペアリングすると、解像感が向上し、音場の見通しがよくなるのです。aptXの効果、おそるべし。オーディオテクニカのBluetoothイヤホン/ヘッドホン用アプリ「Connect」を利用すると、任意のBluetoothコーデックを選択できるので、コーデックによる音質の違いを確認すると楽しいかも?