キヤノンの「EOS RP」は、この春登場した小さくて軽いフルサイズミラーレスカメラです。ボディは、フルサイズEOSでは最軽量となる約485g。旅行用にもうってつけの高機動力を誇ります。
前回掲載した「『EOS RP』レビュー【外観編】キスデジより軽いボディに驚く」に続き、今回はEOS RPで撮影した美しい旅のスナップ写真で、その描写性能の実力を見ていくことにしましょう。
利便性が高いのに描写性能も優れる標準ズーム
最初の2枚は、標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」のワイド端で撮影したもの。24~105mmという一般的に使用頻度が高い焦点距離をカバーする便利ズームであり、今回の旅でも最も活躍したレンズです。EOS RPと組み合わせた場合、ボディ側(485g)よりもレンズ側(700g)のほうが重くなり、少々アンバランスに感じたものの、取り回しは悪くありません。左手でレンズを包むようにして構えると、安定したホールディングが得られます。
写りは、被写体のディテールまでを克明に再現する解像感の高さを確認できます。上の2枚では歴史的建造物の重厚な雰囲気を、次の写真では水面や鯉のリアルな質感をそれぞれ適確に表現できています。
味わいのある描写が楽しめる単焦点マクロ
もう1本のお気に入りレンズである単焦点マクロ「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」も紹介しておきましょう。こちらはEOS RPのキットレンズにもなっており、ボディとのマッチングはとても良好です。使用時の総重量は790gと軽く、首にかけて持ち運んでも負担は感じません。
次の2枚は、RF35mm F1.8 MACRO IS STMで撮影したもの。旅先の風景は、つい全体を写そうとして“引き”のカットばかりになりがちですが、マクロレンズを使ってこうした“寄り”のカットを撮っておくと、より印象深く旅の思い出を刻むことができます。
RF35mm F1.8 MACRO IS STMは、マクロレンズにしては開放値がF1.8と明るいことも見逃せないポイントです。次の2枚は開放絞りで撮影することで、ピントを合わせた部分の前後をぼかし、画面に奥行きと立体感を与えています。
EOS RPのうれしい魅力と残念なところ
EOS RPの使い勝手に関しては、特に戸惑うことなく、終始スムーズに扱うことができました。筆者がキヤノンユーザーなのでUIに慣れているという理由だけでなく、昨年発売の上位機「EOS R」とは違ってマルチファンクションバーのような独自の操作系を採用していないことが大きいといえます。
特に便利に感じたのは、タッチパネルの反応が軽快で、AF測距点の選択やクイックメニューの設定などが素早くセットできること。カメラの横位置/縦位置を問わずハイ/ローアングル撮影が行えるバリアングル液晶も快適です。
EOS Rに比べると、AF測距点の数や測距輝度範囲、連写スピード、連写可能枚数、最高シャッター速度、シンクロ速度などのスペック面ではいくぶん見劣りしますが、レスポンスに関してスナップ撮影では特に不都合に感じることはありません。
ただし、バッテリー持久力の乏しさは残念に感じました。1回の充電で撮影できたのは約300枚。旅先では、予備バッテリーまたはUSB-PD規格のモバイルバッテリーが欠かせません。また、EVF表示の小ささ、液晶モニターの精細感に関しては、価格相応の割り切りが必要です。
撮像素子には、35mmフルサイズの有効2620万画素CMOSセンサーを搭載。EOS Rのセンサーよりは画素数が少なく、一眼レフ「EOS 6D Mark II」のセンサーと同等の画素数です。A4プリントに十分な情報量を備えつつ、サイズが大きくなりすぎず扱いやすい画素数といえます。
感度はISO100~40000に対応し、拡張として最大ISO102400も利用できます。下のカットはISO12800で撮影。暗部のノイズや発色の低下は気になりません。
トータルとしては、フルサイズミラーレスの入門用に最適な高画質と高機能、高機動力を実感できました。個人的には、サイレント撮影がシーンモードのひとつとして提供され、サイレント撮影時は感度や絞り値が自身で設定できない点が不満です。とはいえ、ちょっとした旅行やスナップをフルサイズならではの高画質で手軽に楽しむためのカメラとしては、バランスよく仕上がっていると感じます。