確かに、iOSアプリで「終了」ボタンを見かけることはありません。パソコン用アプリには、メニューバーに「終了」が用意されていることが常識ですし、OSによってはウインドウを閉じるとアプリが終了することがあります。しかし、Apple純正かサードパーティー製かを問わず、自身を終了させるボタン/メニューを配したアプリを見かけることはあまりありません。

その理由は、iOSアプリ開発の指針とされる文書「iOS Human Interface Guidelines」にあります。アプリを終了する標準的な方法はホームボタンを押すこととされ、終了処理を組み込むことは禁止されています(「Don’t Quit Programmatically」項)。アプリが異常終了したとユーザに誤解されないための対策であり、アプリはガイドラインに沿っているか公開前に必ずチェックされることもあり、「終了」ボタンを備えたアプリは登場しなかったと考えられます。

しかし、2019年5月現在、最新のiOS Human Interface Guidelinesに「Don’t Quit Programmatically」項は存在しません。Instagramアプリのように、使用する言語を切り替えるとアプリが自動的に終了し、(アプリ自身の)再起動をうながすものも登場しています。適切な理由がある場合はアプリの再起動を許すようガイドライン運用方針が変わった、と考えてよさそうです。

もっとも、アプリをいちいち終了させる必要はない、メモリなどリソースが不足した場合はシステムの判断でアプリを終了処理する、といったiOSの基本的な考えかたに変更はありません。今後も、「終了」ボタンを備えるアプリは現れないのではないでしょうか。

  • どうしてiOSアプリに「終了」ボタンがないの?

    iOSアプリに「終了」ボタンがない理由は?