日本マイクロソフトは2019年4月6日に大阪、14日に東京でWIP(Windows Insider Program)参加者であるインサイダー向けに、15日は法人企業向けとして、4回目となる「Windows Insider Meetup in Japan 2019」を開催した。4月14日に東京・品川の日本マイクロソフト本社で行われたイベント内容をレポートする。

  • Windows Insider Meetup in Japan 2019

    イベント参加者による集合写真

MSDの手で新たな進化を始めたMS-IME

Windows 10に実装される機能の一部は、日本の開発部隊であるマイクロソフト ディベロップメント(以下、MSD)が担っている。現在は200を超える言語のタッチキーボード開発や、クリップボード機能拡張「Win+Vキー」、絵文字パネル「Win+.(ピリオド)キー」、入力言語の切り替え「Win+スペースキー」、音声入力「Win+Hキー」(現在は英語のみ)などに携わるMSDは、「日本にいながら世界中で使われる機能を担当している」(MSD コミュニティマネージャー 森嶋佳代氏)と誇らしげに語った。

  • マイクロソフト ディベロップメント 森嶋佳代氏

    MSD コミュニティマネージャー 森嶋佳代氏

WIPのフィードバックハブに関する新機能として、日本語と英語が選択できる言語フィルターや、英語による投稿済みフィードバックの検索、新規フィードバック時に日本からも英語で投稿できる点を強調。その上で、「これまで賛成票を優先していたが、重要な問題へ迅速に対応するため『この優先順位を高い重要度として設定する』を新たに用意した」(森嶋氏)と説明する。

  • Windows Insider Meetup in Japan 2019

    MSDはフィードバック投稿時、データ消失など大きな問題がある場合は、「この優先順位を高い重要度として設定する」をチェックしてほしいと説明する

2019年5月下旬リリース予定のWindows 10 バージョン1903(May Update 2019)では反映されないものの、現在Skip A Head選択ユーザーに提供する20H1では、MS-IMEの刷新が図られる予定だ。

従来のMS-IMEはアプリケーション(以下、アプリ)のプロセスに張り付いているため、アプリを巻き込んでクラッシュする可能性があり、安定性への課題があった。他にも、新たなセキュリティモデルやコンテナモデルへの追従、各プラットフォームにおける一貫性・拡張性の低下といった点もあるため、「新たなMS-IMEの開発に取り組んでいる」(MSD プログラムマネージャー 大附克年氏)という。

  • マイクロソフト ディベロップメント 大月克年氏

    MSD プログラムマネージャー 大附克年氏

MSDは「新MS-IMEは別プロセスで動作するため、書きかけのメールや編集中のスライドがクラッシュすることはない」(大附氏)と述べていた。この点をMS-IME担当エンジニアに尋ねたところ、従来はアプリからMS-IMEのプロセスを生成していたが、新MS-IMEはサーバープロセスを別途用意し、アプリからアクセスすることで、アプリを巻き込んだハングアップを回避。さらに、MS-IMEのサーバープロセスは再起動させることで、操作継続が可能になるという。

外観や機能面にも若干の変更が加わり、候補ウィンドウはWindows 10のテーマカラーに合わせ変更。また、多数のフィードバックを受けて、変換候補番号を追加した。コンテキストメニューもWindows 10のデザインを踏襲しつつ、項目を減らしてシンプルになっている。設定もWin32型ダイアログからUWPベースの「設定」へ移管されている。「辞書や変換エンジンは既存のままだが、将来的には改良したい」(大附氏)と可能性を匂わせた。

  • Windows Insider Meetup in Japan 2019

    新MS-IMEではコンテキストメニューの項目もシンプルにまとめられている

このように「設定」ベースに移行するMS-IMEだが、Windows 10バージョン1903では、設定項目の大幅な見直しが図られている。MSDは「既存のダイアログはボタン名称が同じなため、ユーザーの混乱を生じていた。また、一部の項目名は二重否定だった」(MSD プログラムマネージャー 古川翔一氏)と現状を踏まえ、「開発チームは使いやすく、分かりやすいMS-IMEの開発に注力している」(古川氏)と述べる。

  • マイクロソフト ディベロップメント 古川翔一氏

    MSD プログラムマネージャー 古川翔一氏

その上で重視したのがUIの最適化だ。新しい設定は5つのセクションからなるシンプルな構成だが、MSDは「バランスを踏まえた」(古川氏)と、ユーザー需要に応じて設定項目の最適化を目指すという。各機能の実装や変更は段階的に行われてきたが、MSDは「機能をなくすとネガティブな声も聞こえてくる。ポジティブもネガティブなフィードバックも開発の方向性を決定する上で大きく役立つ。忌憚のないフィードバックをお願いしたい」(古川氏)とその理由を説明した。

  • Windows Insider Meetup in Japan 2019

    新MS-IMEの提供スケジュール

さらに今後は、すべてのインサイダーに新機能を提供せず、「2つのグループに分けて、新機能で利便性が向上するか検証しつつ、提供する予定」(古川氏)と、WIPの方針変更を明らかにした。なお、MS-IMEに関する設定項目は「時刻と言語/言語」から「日本語」の「オプション」ボタンとたどり、「Microsoft IME」の「オプション」ボタンというように、深い階層に位置する。MSDは参照性を高めるため、検索ボックスから「日本語」「IME」「Japanese」といったキーワードでMS-IMEの設定ページを参照可能にした。

新MS-IMEは、絵文字パネルに顔文字とシンボルを追加することで、ユーザー満足度が9%、使用頻度が10%向上したと語るのは、MSD ソフトウェアエンジニアのGigi Wu氏。また、タッチキーボードは精度を向上させるため、「各キーがタッチに反応する領域を動的に変化させている」(Wu氏)という。その結果、誤入力は15%も減ったそうだ。いずれの改善も「フィードバックと使用状況データに支えられている」(Wu氏)しつつ、機能提案も含めてWindows 10 Insider Previewの利用とWIPへの参加を呼びかけた。

  • マイクロソフト ディベロップメント Gigi Wu氏

    MSD ソフトウェアエンジニア Gigi Wu氏