宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月5日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者説明会を開催し、先日行われた第1回目タッチダウン運用の結果と、今後の運用スケジュールについて報告した。公開された画像には、着陸後、大量の物質が舞い上がった様子が写っており、予定通りの量のサンプルが採取できた可能性はかなり高くなった。
タッチダウンの動画が公開!
今回公開されたものの中で、特に驚きだったのは小型カメラ「CAM-H」で撮影したタッチダウン前後の映像である。CAM-Hは探査機底面に搭載され、サンプラーホーンの先端を見ることができるカメラ。最終降下の59秒前から約5分40秒、233枚の画像を撮影しており、それを動画として再現した。
JAXAが公開したはやぶさ2タッチダウン動画
はやぶさ2が上昇し、大量の表面物質が巻き上がると、取材している記者席からもどよめきが起きた。記者という職種の人間が会見中にこれほど大きな声で驚くのは珍しいのだが、津田雄一プロジェクトマネージャが事前に「素晴らしい映像が撮れた。ご覚悟ください」と紹介していた通り、それほどこれは、衝撃的な映像だった。
津田プロマネは、「タッチダウンというものは、もっと静かに下がって上がっていくものだと思っていた」という。はやぶさ初号機には、このアングルで撮影できるカメラは搭載されていなかったし、弾丸を発射することもできなかった。まさに初めてサンプル採取の瞬間を捉えた、歴史的な映像と言って良いだろう。
タッチダウン当日に、すでに弾丸の発射まで確認されており、サンプル採取は確実とみられていたが、この映像では、かなり大量の物質が飛散している様子が見える。このことから、サンプラーホーンを通って探査機内部に入った物質も多いと考えられ、サンプル採取装置担当の澤田弘崇氏は「当初の想定通りの量は取れたのでは」と期待する。
はやぶさ2の着陸精度は誤差1m!
また、CAM-Hなどのカメラの画像から、探査機が着陸した場所も正確に特定できた。今回狙った「L08-E1」は半径3mしかなく、非常に高い精度の運用が求められたが、結果はなんと誤差1m。L08-E1の中心には、メンバーから「三途の石」とか「諸田ボルダー」とか呼ばれるやや大きな石があったのだが、それにギリギリ当たらないくらいの正確さだった。
タッチダウンの成功を記念し、急遽この地点に愛称を付けることになり、メンバーから名前を募集したところ、最も多かった「たまてばこ」(玉手箱)に決まった。この名前には、舞い上がった砂礫が玉手箱からの煙に似ている、サンプル(=リュウグウのお宝)を採取した地点である、という意味も込められているそうだ。
7:29にタッチダウンした後、探査機はスラスタを噴射して離脱。一緒に上昇してきたサンプルを探査機内部の格納容器(キャッチャー)に送り込むため、10:40、進行方向に噴射して減速、40分ほど待ってから、A室の蓋を閉めた。格納容器には、A~Cの3つの部屋があり、最大3回のタッチダウンで個別にサンプルを保管することができる。
回収したサンプルの分析は、カプセルが地球に帰還してからになるものの、今回の映像からも、科学的に様々なことが分かる可能性があるという。プロジェクトサイエンティストの渡邊誠一郎氏(名古屋大学大学院 環境学研究科 教授)は、「これまでは観測しているだけだったが、初めて手を出して、反応を見ることができた」と、その意義を強調する。
CAM-Hの画像では、着陸後に表面物質が舞い上がった様子が確認できた。これについて、「まるで成功を祝う紙吹雪のように見えるが、実際に薄い形をしていることが分かる」と指摘。まだ解析中と前置きしつつ、「表面に層構造を持つ可能性もある。このように、単に眺めているだけでは分からない、貴重な内部情報を得ることができた」と述べた。