今回のCP+2019を通して注目されているのが、やはり「フルサイズミラーレス」でしょう。先行するソニーに対して、一眼レフの王者であるキヤノンやニコンが満を持してフルサイズミラーレスカメラを投入。パナソニックも、ライカやシグマと連合を組んで、Lマウントのフルサイズミラーレスを出展しています。

ミラーレスでトップシェアを獲得したソニーは、追撃を狙う各社に対してどのような戦略を描いているのでしょうか。今回のCP+でのソニーブースの動向と、同社のデジタルイメージング本部 シニアゼネラルマネージャーの長田康行氏によるインタビューから探ってみました。

  • フルサイズミラーレスが好調のCP+2019ソニーブース

  • ソニー デジタルイメージング本部 シニアゼネラルマネージャーの長田康行氏

ふだん触れない高性能レンズをじっくり試してほしい

CP+2019の会場で最大のブースを構えるソニー。ブースを訪れると、他社ブース以上に広く感じました。これは「ブースの見通しをよくした」(長田氏)ことが奏功しているようです。コーナーごとにブースを区切るのではなく、中央のシューティングコーナーから広く確保したセミナーエリアまで、広さを感じられるような作りにしたそう。

こうして作ったエリアの中央には、「G Master」を中心とするミラーレス用の交換レンズを豊富に展示し、さまざまなカメラで試用できます。長田氏は「CP+は、ふだんじっくり試すことのできない高性能レンズに触れて楽しめることを重視した」と語ります。

  • 遮るものがなく、広々とした構成のソニーブース

  • ミラーレス用のEマウントレンズは、ラインアップがかなり充実してきた

フルサイズミラーレスが絶好調のソニーですが、長田氏からは「フルサイズ市場はもっと盛り上がってほしい」と意外な言葉が出ました。一眼レフからミラーレスへのシフトは想定通りに進んでいるものの、一般層に対しては「フルサイズミラーレスで新しい時代が来たことがあまり伝わっておらず、カメラが欲しいと思わせるまでは至っていない」といいます。

ソニーとしては、まだミラーレスを持っていない人や、日ごろスマートフォンのカメラで撮影を楽しんでいる人に、カメラを持つことで得られる楽しさを体験できるようにしたい、という思いがあるそう。それが「α6400」の発表につながったといいます。

  • 最新技術をふんだんに盛り込んだAPS-Cミラーレス「α6400」

「単純に画や色がきれいで、画像の加工技術が備わっていればよいなら、スマートフォンのカメラでいい。それに対し、AFのスピードやレンズの描写性能の高さが実感でき、ボケの表現を最大限に生かせることが、カメラを楽しんでもらうための源泉」だと長田氏は考えます。実際、α6400は「(最上位モデルの)α9のAF性能の技術を全部入れてしまいました」(長田氏)と、大盤振る舞いであることを明かします。

APS-Cセンサーを搭載しているα6400は、製品の位置づけ的にはフルサイズミラーレスよりも下。しかし、「ソニーは機能でカメラを階層化するのが下手」と長田氏は笑います。それもあり、後発で登場したα6400に上位モデルに匹敵する最新技術を詰め込んだと話します。

「α6400の登場で、α6500が売れなくなるのでは……と心配する声もあった」と長田氏。しかし、現時点で持てる最新技術を最新モデルにすべてつぎ込むことで、他社に対しての優位性にもつながるとしてGOを出したそうです。

最新技術を詰め込んだ「135mm F1.8」

同様に「最新技術を惜しみなくつぎ込んだ」と語るのが、発表されたばかりの大口径望遠レンズ「FE 135mm F1.8 GM」です。「ボケの美しさと解像感の高さは、G Masterレンズのなかでも1、2を争うレベル」と長田氏は自信を見せます。剛性感の高いマグネシウム製ボディーは、コンマ以下でサイズを削減するために何度も作り直すなど、大きさやデザインも突き詰めました。

  • 4月中旬に販売を開始する「FE 135mm F1.8 GM」

何より、世界中のプロを驚かせたのがAFスピード。フォーカス用の内部レンズは大きく重いのですが、4つものAF駆動用モーターを搭載したことで、20コマの連写でも瞳にフォーカスを合わせ続けられるといいます。海外のプロの評価では「バスケットボールなど屋内スポーツの撮影でも使える」という声が多かったそうです。「最新技術をこれでもかと詰め込んだ最新レンズの底力を体感してほしい」と長田氏は語ります。

  • FE 135mm F1.8 GMの内部構造。右から2番目がアクチュエーターです

  • αシリーズの特徴でもある瞳AFは、今後は動物の瞳にも対応する予定。ブースでは、動物瞳AFの体験コーナーも設置されていました

シェアの追求だけでなく、業界全体を盛り上げたい

こうした最新技術の投入による高性能をアピールするソニーですが、もう一つ重要な点として長田氏が挙げたのが「カメラ市場の拡大」です。

ソニーはミラーレスで首位、フルサイズセンサー搭載カメラでも「二十数カ国においてトップシェア」(長田氏)と優位な状況に立っていますが、「この先はマーケットを広げることに貢献しないと、業界が小さくなってしまう」と長田氏は危機感を示します。

スマートフォンによってコンパクトデジカメ市場は縮小しましたが、「スマートフォンユーザーの1%でもカメラを使ってみたいと思えば、市場規模は倍になる」と長田氏。これらのユーザーに対し、いかにカメラへのステップアップを促すか、そうしたマーケット拡大の方策を「最近はずっと考えている」と語ります。そこで、ソニーのスマートフォンであるXperiaチームとも連携して取り組んでいく考えを示しました。

また、ソニーは他社との競争によって自社のシェアを高めるだけでなく、カメラの楽しさやメリットをアピールし、カメラ業界全体の発展や市場の拡大を目指したい、という考えを持っているそうです。

今後の新製品については、「αの新モデルは新次元を実感できるカメラにする。交換レンズは、一般的に使われるものはだいたいそろったので、これまでとは違うとがった路線にも挑戦したい。どちらも楽しみにしてほしい」と語ります。