どうやって有機ガラス管から音を鳴らすのか?

有機ガラス管から音が鳴る仕組みは、ソニーが独自に開発した「バーティカルドライブ」という音響技術によるものです。ガラス管の付け根にあたるベースユニットとの接続部分には、「加振器」と呼ばれる微細な振動を生成する小さなパーツが複数、埋め込まれています。この加振器が伸び縮みすることによって、振動板の役割を果たすガラス製のシリンダー全体が震えて、周囲360度へ均等にサウンドを放射します。

  • グラスサウンドスピーカー(LSPX-S2)

    ミドルレンジの音はベースユニットの中にある35mm口径のユニットが鳴らして、スリットから抜けて360度へ均等に広がります

2016年発売のLSPX-S1にも、同じバーティカルドライブテクノロジーが採用されています。LSPX-S2は小型・計量化を図り、最新の加振器と音響サスペンションを搭載しました。歪みのないクリアな高域再生が特長です。スピーカー本体の小型化にも寄与しています。

そしてオーディオ回路技術の進歩によって、LSPX-S1ではアンプと加振器の間に配置していた保護抵抗が、LSPX-S2では不要になりました。つまり、アンプから加振器へ信号を伝えるときのノイズ源がなくなったため、音の伸びやかさが増したというわけです。

保護抵抗そのものが消費していた電力を省けることから、本体の消費電力も下がっています。LSPX-S2は内蔵バッテリーでも動く「電源ケーブルもワイヤレス」なスピーカーなので、その恩恵は見逃せません。内蔵バッテリーによる最長音楽再生時間は約8時間です。

  • グラスサウンドスピーカー(LSPX-S2)

    S2に採用された極小サイズの加振器。こちらが3つ内蔵されています

中低域もグンとスケールアップしています

音質アップの成果は、有機ガラス管が受け持つ高域に止まりません。中域を担当するウーファーユニットは、LSPX-S1の50mm口径から小型化されて35mm口径になっていますが、音の透明感やパワーはまったく引けを取りません。

ユニットから放射された音は、亜鉛ダイキャスト製のベースユニット内部に配置されている、笠を逆さにしたような「ディフューザー(拡散器)」にぶつかって、音の出口となるベースユニットのスリットを抜けて360度に広がる仕組み。

有機ガラス管のシリンダーから放射される高域の音と、スリットから抜け出る中域の音を「同一方向」「同一タイミング」で位相をそろえながら放射する技術に、ソニー独自の研究成果が生きています。音のつながりがとてもよく、自然で滑らかな音の秘密がここにあります。

  • グラスサウンドスピーカー(LSPX-S2)
  • グラスサウンドスピーカー(LSPX-S2)
  • S2のスピーカーユニットと音響サスペンション。S1のパーツ(P12)から小型化を図り、高音質再生のために改良も加えました

LSPX-S1と比べて、低音の明瞭度もいっそう豊かになっています。ベースユニットの内部に、下向きに配置された低域専用のユニット(パッシブラジエーター)を改良した成果によるものです。

LSPX-S2に搭載された最新のパッシブラジエーターは、振動板の側面フレームとの間にあるエッジの形状を変えています。ポイントは細かなスリットを入れたこと。振幅動作の安定感としなやかさが増し、入力された音楽信号に対して鋭く正確なレスポンスを実現します。中高域との一体感も強く意識しているようです。

また、LSPX-S2の本体内部にある何千カ所にもおよぶ部品の接続に、ソニーの独自開発による音質を意識した無鉛はんだを使っています。全帯域にわたってきめ細やかな音を引き出す“味の決め手”です。

温かみあふれる音と光に包まれて…

グラスサウンドスピーカーは設置した場所を中心に、360度へ均等に温かみのあふれる音を広げてくれるスピーカーです。筆者は現行機種のLSPX-S1を自宅で試したこともありますが、部屋を少し暗くして、柔らかい光に包まれながら聴く音楽はまさに夢心地。あまりにリラックスし過ぎて、やがて寝落ちするという気持ち良い音楽リスニングを体験した記憶が鮮明によみがえってきました。

  • グラスサウンドスピーカー(LSPX-S2)
  • グラスサウンドスピーカー(LSPX-S2)
  • ガラスシリンダーの中、ボトムの位置にLEDランプが搭載されています。すり鉢形状のディフューザーで光をあわく拡散。温かみのある効果を演出します

LSPX-S1も十分にコンパクトなスピーカーでしたが、新しいLSPX-S2はさらに本体の高さとボリューム感を抑えているので、ダイニングやリビングのテーブルの真ん中に置いてもハマりそう。内蔵バッテリーがあるので、置き場所を自由に決めてゆったりと音楽再生に浸れます。

ベースユニットの素材はLSPX-S1がアルミ押し出し材を使っていましたが、LSPX-S2のボディはより密度の高い亜鉛ダイキャスト製になりました。手に取ると思ったよりもずっしりとした手応えがありますが、もちろん片手で持ち運べる範囲内の重さ。むしろテーブルやラックの上に置いたときの安定感がアップするので、そそっかしい筆者にとっては大歓迎です。

有機ガラス管の根元に搭載するLEDランプは、明るさを「Music Center」アプリから32段階に調光できます。そしてLSPX-S2から新たにランプがゆらゆらと瞬くように光る「キャンドルモード」というエフェクトが追加されました。本体の電源ボタンを長押しすると強・弱の2パターンで明滅を変更できます。ふわふわっと瞬く様子は動画でご覧ください。わが家のありふれたダイニングテーブルがちょっとヨーロピアンな雰囲気になりますよ。

LEDライトの周囲には、すり鉢形状のレンズリフレクターを配置しています。光を柔らかく拡散させて、まぶしさを低減する効果があります。

【動画】ランプがゆらゆらと瞬くように光る「キャンドルモード」